頬に、ひんやりとした硬さが触れている。
平たく、冷たい感触。石の上だろうか。
ここは一体どこだ。
うっすらと目を開けると、辺りが白み始めていた。
夜が明けるのか、それとも曙光の残滓か。
手をつき、体をゆっくり起こす。
視線の先に、見慣れた扉があった。
昨晩、酒を飲みながら、大きな花火を見届けたことは覚えている。
けれど――その後の記憶がない。
嫌な予感がして、慌ててスマホを探した。
ぐちゃぐちゃになったカバンの奥底。指先が、さわり慣れたスマホホルダーの感触を捉える。
画面を点ける。
着信32件。
目を疑う。
そこには、見慣れた妻の名前が並んでいた。