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珍妃の井戸/浅田次郎 感想

あまりにもどハマりした小説蒼穹の昴の続編。まずは続編があることに感謝。本当にこの世界を描き続けてもらえることが嬉しいです。ずっと読み続けたいけど、しっかり完結させてもらいたい気持ちもあり…浅田先生のご健康を願う日々です。
本作は光緒帝の寵妃珍妃の死の謎に迫るミステリ風の作品ですが、中身は各証言者の証言が食い違う藪の中といったところでしょうか。この構造によって、各人物が恨みに思ったり、貶めたいと思っている相手が誰なのか分かるのも面白い。
以下ネタバレ配慮せず語りたいことを語っていきます。

小説の中の真相にしても解釈の余地があるだろうけれど、私は深読みが苦手なので、額面通り受け取って、最後の章に描かれたことがこの作品の中の真実かなと思っています。悲しくも美しい解釈だと思います。珍妃は最後まで気高い人だった。

探偵役の各国要人のキャラ付けや会話も面白いし、前作のその後が気になっていた人物の話も聞けて面白い。列強の要人同士の一触即発のやり取り、各国のイメージのステレオタイプな人物描写がいいですね。

蘭琴の後日談が聞けたこともとても嬉しい。目を失って立場を失っても、その経緯や自身の境遇を悲観していないことが分かって嬉しい。

さらには溥儁というとんでもない爆弾も投下されて本当にもう、エンタメの極致だなと思います。溥儁に関しては、珍妃の井戸で描かれている部分だけでも設定モリモリで(とは言え3日で廃太子になるとか義和団事件の戦犯として追放されるとかは史実なのがすごい)、次作でのアンダーグラウンドな憂国の士としての描写に繋がっていくことを思うと、こんな人物を脚色して小説のキャラにした浅田御大は本当にすごいなとしか言えません。
中原の虹の溥儁が出てくるシーンが大好きなんですが、それはまた読み直して改めて語りたいと思います。

天子の浮世離れした感覚と、それでいて聡明な光緒帝の思考回路の描写が絶妙で、最終章は本当に辛い。

そして次作中原の虹はシリーズでも一番と言っていいくらい好きな作品です。とにもかくにも張作霖が最高です!読み直しているところなので、終わり次第そちらも語りたいと思います。

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