今年もお盆がやってきた
今年もお盆がやってきた。
「お盆」。良く考えれば妙な名前ではないだろうか。こんな生活用品の名前がついている期間が他にあるだろうか。「お皿」「お椀」「お箸」「お風呂」「お布団」。やっぱりそんな名前のついた期間はなさそうだ。
先祖の魂が帰ってくる期間というのは知っているが、なぜ「お盆」という名前がついたのだろうか。
子供の頃は漠然と、
(お供え物をお盆に載せて置いておくからかな?)
などと鼻を垂らしながら考えていたような気もするが、良く考えると「うら盆」などと言う言葉も聞いたことがある。
(これは「裏本」と聞き違えちゃったので良く記憶に残っている。実に不敬と言えよう)
では「裏盆」があるならば「表盆」もあるのだろうか。しかし「表盆」という言葉はあまり聞いた記憶がない。
ある年のお盆にふとそんな事を感じて調べてみた事があった。
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物の本を見てみるとそこには、いわゆる「お盆」自体の正式名称が「うらぼん」であり、漢字では「盂蘭盆」と書くのだと書かれていた。仏教用語から来ていると言う。
(そうか、裏表ある訳じゃなかったのか…… )(※1)
そこで、その「盂蘭盆」の意味を調べるとこうあった。
これは穏やかではない。
我々の先祖は皆さかさまに吊るされていると言うことか???
確かに「盂蘭盆」という言葉は、サンスクリット語の「ウランバナ(逆さ吊り)」から来ているとも書かれている。すなわち「お盆」というのは「逆さ吊り」と言う意味なのか? 先祖供養の儀式の名前としては激しすぎるのではないか?
しかし、先を読み進むとこうも書かれていた。
そこでこの『盂蘭盆経』というエピソードの概要を調べて見た。これは色々と考えさせられる話だった。素人の私が端折って書くとこんな感じの話である。
利他を心がけると、自分にも利(喜び・幸せ)が返ってくるという教えのある話である。これが今のお盆の発祥となっているとのことだった。
また、お盆の時期が地方により異なっているのにはこんな背景があるとのことだ。
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私の生まれた地域のお盆は8月だったのだが、そんなお盆の仏事的な意味を知らない子供の頃の私にとっても「お盆」は別の意味で重要な行事だった。
1年に一度しか会えない従兄弟(いとこ)、いわゆる親戚の兄ちゃんや姉ちゃんと遊べる貴重な機会だったのだ。毎年お盆の時期には田舎の祖父の家に集まり一緒に過ごすことができたのだ。
1年会わないと子供は結構変わる。同じガキ・カテゴリーで遊んでいたはずの親戚の姉ちゃんが、ある年に急に激変して妙に女らしくなっていて話しかけにくくなったのだが、話をしてみると変わっていないのでホッとしたりすることもあった。
私の両親は兄弟が多く、それが子供を連れて集まるので多い時には祖父の家の同じ屋根の下に30人くらい集まったこともあったのではないだろうか。
昼は山で遊び、夜は親戚のオジちゃん達がガラガラと手詰みで麻雀などしているうるさい音を襖の向こうに聞きながら皆で雑魚寝したが、それも懐かしい思い出である。
少子化が叫ばれているが、いつかまた日本が活気を取り戻して我々の次の世代もまた人情あふれる社会で生活してくれると良いなと思う。
いわゆる Z世代の若者は基本的に優しい。とても優しい。私はきっと彼らなら、彼らなりの違った形で温かい社会を作ってくれるだろうと思っている。
(了)
※1 一部の地方によっては8月上旬のある時期を裏盆、いわゆるお盆を表盆と二つの時期に分けて設けているところもあるようです。
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