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(映画)ムーンライズキングダム / それぞれの問題を抱えたまま、物語は続いていく
Moonrise Kingdom(2012)は私の好きなウェス・アンダーソン監督の作品。2013年の日本公開当時、劇場で観てこの作品が大好きになりました。※この文章はネタバレなしです。
ウェス・アンダーソン監督作品を観たことがあるかたは分かると思うのですが、この監督の作品はどのシーンもすごく凝っていて、写真集やポスターにしたものが欲しいくらい。
セット・家具・小物から衣装にいたるまで、すべてが計算されています。ちょっとここまで作り込まれてる映画って他にはすぐに思い浮かばないけど、その徹底した作り込みがこの監督の映画独特の空気感をだしていて、ひきこまれてしまいます。
作り込みはすごいのにやりすぎでないのもまたすごい。私が初めて観たウェス・アンダーソン監督作品の『ロイヤルテネンバウムズ』も、ミュージックビデオを観ているみたいで、いつまでも飽きずに観ていられるくらい素晴らしい世界観です。
鑑賞したきっかけ&ざっくりあらすじ
この『ムーンライズキングダム』は、たまたま映画館を通りがかって、いま観られる映画を観よう、という流れになり「あ!ウェス・アンダーソン監督のだ」と気づいて観たので、出演者などの前知識はいっさいなし・あらすじ未知の状態で観たのですが、それもこの監督の作品だったから。安心して観ることができて、期待以上に楽しめました。
舞台は1960年代のアメリカのある島。
嵐が近づくなか、1人のボーイスカウトの男の子はボーイスカウトを抜け出し、1人の女の子は家から逃げ出します。そのふたりの失踪を巡り、島の警察官、ボーイスカウトのリーダー、女の子の両親や大人たちが大さわぎするお話です。
私がこの映画を観て思ったこと
『ムーンライズキングダム』を観たのは映画館を含めて3回です。ウェス・アンダーソン監督の作品でほかに何回も観ているのが『ロイヤルテネンバウムズ』なんですが、両者には通じるところがあります。登場人物の全員がなにかしらの問題を抱えています(不倫、夫婦間の関係、親子の確執、自分の存在意義や目的があいまい…など)。そんな人物たちがある共通の問題(今回でいう男の子と女の子の失踪)にぶち当たり、力を合わせたり揉めたり苦悩しながらもなんとか解決しようと奮闘します。
やがて、その共通の問題は物語の進行とともに解決していきます。でも、映画の小気味のいい演出に紛らわされて忘れがちだけど、登場人物たちがもともと抱えていた悩みや問題がほとんどは解決されていないままなのです。
ちょっとこの人が前向きになったかな?とか、ちょっとした変化くらいはありますが、もともとの問題がきれいさっぱり解決しましたよ!と明確にされているシーンはありません。いつも観終わったあとに「おもしろかった!でもなんかモヤッとする」と思っていたのですが、なんとなく、こういうことなのかー、と腑に落ちたときがありました。
映画はおとぎ話のようなタッチやトーンで進んでいき、途中から訪れる嵐とともに過ぎ去っていきます。なんだか現実感がまるでないようでいて、現実のことしか描かれていないのです。
実際の人生でも、ひとつの問題が解決したからといって、それで自分や他人が持つ悩みや問題がいちどに解消されることなんてない。人はそれでも、それぞれの悩みや問題を抱えながら、自分の物語(=人生)を生きていく、ということなのだろう、と。
ウェス・アンダーソン監督、おそろしい。この、問題が解決されました!めでたしめでたし!ではない感じは『ロイヤルテネンバウムズ』でもそうだった。それでも2作とも決して後味はわるくなく、観賞後は前向きな気分にさえなります。それも、押し付けがましくない程度に。それがウェス・アンダーソン監督の作る映画の持ち味で、私が魅力を感じるところなのだと思います。
すべてはあくまで私の感想ですが、観る人によって感想がちがうのが、映画の楽しさでもあります。
ちなみに、この映画の中で「大きなウインナーをお皿にごろっとのせるシーン」があるのですが(数秒です)映画館で鑑賞したあとに同行者と「あのウインナーおいしそうだったよね」と盛り上がり、それっぽいウインナーがメニューにあるお店を探して食べに行きました。もし観る機会があったら、おいしそうなウインナーのシーンも探してみてください。
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