メンテ上手な人を見たはなし
ここ数年の自分は趣味として編み物のコミュニティにいる時間が長くそこでみた気づきについてのシェアです。
編みものコミュニティについて
Ravelry(ラベリー)という米国発の編みものサイトを中心としたカルチャーがあり、そこではデザインの公開やダウンロード、オンライン上での交流などが日々行われ私も利用しています。近年はデザインの公開・販売はラベリーで、その宣伝や各アナウンスにSNSが活用され、ニッターたちはお気に入りのデザイナーや糸メーカーのアカウントをフォローし動向をチェックするのが一般的となっています。
フォローしている1人のデザイナーさんの投稿が目に留まりました。繊細でフェミニンな作風が人気の彼女の投稿はしばらくぶりでしたがキャプションに目をおとすと、'数ヶ月前に脳に腫瘍がみつかり、当時は大きなショックを受けたが今は受け止めている。ここ3ヶ月のあいだ編む事もやめSNSも見ないしテレビも見ず、ただ家でじっと座って本を十数冊読みその他は家族との時間を過ごした'とあり、今は活力を取り戻して今後の対応もきまり活動を再開すると結ばれていた。その時期に助けになった本のひとつが日本人作家の作品「あん」の翻訳本だったことが表紙と共に紹介されていたのが印象に残った。
彼女の発信は自分の考えと重なる所があり、病や大事な存在との別れなど何かを大きく失うような出来事が起こった際の反応として賢明なやり方ではないかと日ごろから感じまた似たような事を実践してきたことだった。
へこみのメンテナンス法
何かネガティブな事が起こったり喪失を感じる事を「へこむ」と表現するが、何故か人はそれを埋めよう何かを得ようと行動してしまう事がある。代表的なのは浪費や飲酒など人によっては遊び歩いたり逆にワーカホリックになるといった事。以前は自分もそうしてきた気がする。しかし歳を重ねるとそういうやり方は疲れるし却って傷口を広げる行為にも思える。
それらは短期的にはワークしても効果が続かず本来回復のために充てられる健やかさや時間やお金といったリソースがさらに失われまた落ち込むと言った事になりかねない。
動きすぎない
へこみを感じたらひとまずじっとしてなにもしない。風邪を引いたらまず「具合が悪い」という事実を受け止め、大人しく療養に集中すると治りもよく速やかに元の生活に戻れるが、上記したような穴埋めの為になにかを無闇に'とりにいく'様な言動は風邪で熱があるのに出社してウィルスや不機嫌をまき散らしながら働き、周囲によからぬ影響を与える人にも似て回復を遅らせ自分やまわりをもすり減らす。
"本当に"ダメージを受けづらいとか回復が早くすぐに活力を取り戻せる場合を除き、実はダメージがあるのに平気なふりをして動きまわるのは自分の心をいつわる事にもなりこれも後々まで影響してくる。
へこみをへこみのままに
へこみをそのままにする、と言っても悲しさを感じたら放置したり無視したりする訳では無く、今自分は悲しいとただ感じる時間を1日数十分でも持つ。翌日も悲しみがある、じっと感じるを日々くり返すと、へこみは徐々にでも確実にもとに戻る。その際原因を探したり解決策を練るような事はせず、ただ感じて回復を待つ。何か具体的な行動を探るのは悲しみ終わってからで充分なのでは。
上述したデザイナーはカナダの方だし彼女と同じ様にするのは難しいかもしれない。けれど1日のうち僅かな時間を毎日ならどうだろう。ちゃんと悲しむ・ちゃんと落ち込むの過程を経ると引きずる事なく回復にむかうことができるように思います。自分ではここまで徹底することはなかったためメンテ上手な人をみて彼女の素晴らしいデザインの源をみたような思いでした。
これらは日常的な小さなへこみに対しても有効なように感じますし、むしろ傷が小さいうちにメンテナンスを始めればより健やかな状況を保ちやすくもなる。
へこみのメンテナンス、皆さんはどのようにされていますか。小説'あん'は未読なので一度読んでみたいと思っています。