第37回:サスペンス強めないぬじゅんさんも悪くないですね
おはようございます!あみのです。今回の本は、いぬじゅんさんのライト文芸作品『今、きみの瞳に映るのは。』(実業之日本社文庫GROW)です。
大好きな作家さんの新作なのはもちろん、ライト文芸の新レーベルだそうなので読んでみました!公式サイトの執筆予定者を見てみると、スターツ出版文庫系の作家さんが多そうですね。
心温まる作風、切ない物語の印象が強い作家さんですが、今回はこれまではおまけのような扱いだったミステリー要素を全面的に出していた新鮮な作品でした。
いぬじゅんさんの作品が初めてな人も、数冊読んだことがある人も今までとひと味違う雰囲気なので、きっと刺激的な1冊になるかと思います!
あらすじ(カバーからの引用)
瞳(レンズ)から始まる想定外の物語。世界が震撼のラストは圧巻!
一ノ瀬美姫は、その派手な名前に反して地味な高校生。ところが地元テレビ局の番組で突然、美姫は主役に抜擢されてしまう。それは高校を舞台にした超絶リアリティーショーで、関係者全員がコンタクトカメラという小型機械を瞳に入れ、視聴覚の全てを記録するという実験的な企画だった。だが、その裏には信じられないような本当(リアル)が隠れていて……!?
感想
まず、「コンタクトカメラ」という不思議なアイテムをとおして、高校を舞台にしたリアリティーショーの「主人公」となった老若男女の日常を覗くという物語に惹かれました。
はじめはコンタクトカメラを付けていることを意識しているせいか、テレビにふさわしい自分を演じる「主人公」たち。しかし、彼らは時間が経つにつれてコンタクトカメラの存在を忘れ、それぞれの本性を見せていく…。
「主人公」に選ばれた者たちの日常風景に隠されたドロドロとした本性から目が離せなくなり、コンタクトカメラ越しに見える彼らのもやもや、イライラとした感情を体験しているようでした。
今作は「ミステリー」に重点を置いた作品なだけあって、思い切って謎解きが楽しめる物語になっていたところも魅力だと思いました。
シーズンごとの「主人公」を選ぶ基準、テレビ局と舞台になっている高校の関係性、そもそも「コンタクトカメラ」とは何なのかetc…作中にはたくさんの謎が散りばめられていて、番組に隠された秘密を考察しながら読むことができました。ミステリーをあまり読まない人にもおすすめできる1冊です。
また、今作は登場人物の「視点」という要素が大きなカギとなっていました。
番組は「主人公」に選ばれた人物の視点で展開されていましたが、ほかにも「主人公」の友達や家族、恋人といった身近な人物が脇役として登場していました。
コンタクトカメラをとおして、「主人公」が今どういう気持ちなのかを知ることはできます。でも一方で、脇役であるまわりの人が「主人公」のことをどう思っているのかは番組だけでは知ることができません。
だけど、番組制作の裏で描かれる脇役だからこそ知る「主人公」の秘密が判明すると、「主人公」がいい人に見えてきたり、内容によっては悪人に見えてきたりと、ひとりの人物の見方が大きく変わるところが今作の最大の面白さだと思いました。
いろんな人の価値観を知ることで、世界の感じ方って凄く変わるんだということを教えてくれた物語でした。
好きな作家さんの新たな作風を知ると、これからの新刊ではどんな世界を開拓していくのだろうと、より作品を追いかけたくなります。これも読書の楽しみのひとつではないでしょうか。
いつものような心が温まる物語や切ない物語もいいですが、時には今作のようなサスペンス要素強めないぬじゅんさんの物語にも出会いたい!と思わせてくれた1冊でした。
今回も感想を読んで頂きありがとうございます!
いぬじゅんさんの他作品は過去に1冊感想を書いているので、良かったら上記の記事も覗いてみてください!
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