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第90回:恋愛も友情も壊したくない!
こんにちは、青春小説大好きなあみのです。
今回の本は、汐見夏衛さんのライト文芸作品『だから私は、明日のきみを描く』(スターツ出版文庫)です。noteにて汐見さんの作品の感想文を書くのは3冊目です。
今作は、汐見さんの既刊『夜が明けたら、いちばんに君に会いに行く』(以下、夜君)と同一の世界観で物語が展開します。
夜君とは違う主人公の話なので今作だけでも充分に楽しめますが、夜君で活躍したキャラクターが登場するシーンもいくつかあるので、前作を読んでいると物語への感じ方がまた変わってくると思います!
もちろん夜君でも今作のキャラクターが登場しています。今作の後で前作を読むという手も悪くないかと。
さて今作は、主人公が「親友の好きな人」を好きになってしまうという最悪の状況から物語が始まります。
好きになってはいけないとわかっていながらも、彼の優しさに触れるたびにもっと好きになってしまう。親友への罪悪感を抱える主人公に救いはあるのでしょうか?少女漫画のようなドキドキと胸キュンが詰まった1冊です。
あらすじ(カバーより)
抑える度に溢れていく想い
今日よりもっと明日の君が好き
――なんてきれいに空を跳ぶんだろう。高1の遠子は、陸上部の彼方を見た瞬間、恋に落ちてしまう。けれど彼は、親友・遥の片思いの相手だった…。人付き合いが苦手な遠子にとって、遥は誰よりも大事な友達。誰にも告げぬままひっそりと彼への恋心を封印する。しかし偶然、彼方と席が隣になり仲良くなったのをきっかけに、遥との友情にヒビが入ってしまう。我慢するほど溢れていく彼方への想いは止まらなくて…。
感想
もし親友と同じ人を好きになってしまったらどうするか。想像するだけで心が痛くなります。
過去に友達作りに失敗した経験があることから遠子は、彼方くんを好きになったことによって親友の遥との友情が壊れることを恐れていました。
これまで彼方くんは縁のない人だと思っていた遠子。そのため美術室から部活を頑張る彼を見守ることが彼女にとっての幸せでした。
しかし授業で席が隣になったことを機に、遠子は憧れの彼方くんと話す時間が増えていきます。
すぐに名前を覚えてくれたこと、日々の努力を見ていたこと。彼方くんの優しい性格や、彼のちょっとした「興味」が遠子の恋心に更に火をつけていきます。
遠子と彼方くんが仲良くなり始めたあたりのやりとりは私の経験と重なるところも多くて、とても甘酸っぱい気持ちになりました。
憧れていた人と仲良くなれたのは嬉しいけどその一方で、遥の気持ちに対する罪悪感も遠子の中で大きくなっていきます。遠子には遥との友情も続けてもらいたいし、彼方くんへの気持ちも諦めないでほしい。そのような思いで今作を読んでいました。
しかし彼方くんへの恋心は、遥とその友人たちに気付かれてしまいます…。
遠子の「裏切り」を知った遥たちは早速彼女を仲間はずれにし、遠子の悪口を言うようになります。遥は遠子にとって本当に「親友」なのか?この時の遥の選択には疑問に思うところもありました。
嫌われてしまっても遠子にとって遥は自分を助けてくれた大切な存在。だからこそ遥との友情をやり直したいと決意した遠子は、彼方くんの言葉と経験もヒントにして遥に自分の本当の気持ちを話してみることにします。
「自分も同じく彼方くんが好き」ということを遥に話すことは遠子にとってかなり勇気のいることだったと思います。だけど勇気を出して本音を遥に話したことで、2人の絆は更に深まったのではないのでしょうか。
彼方くんの件ではお互いを傷つけてしまったこともありましたが、むしろここから2人の本当の友情は始まったのではないかと思います。
遥も悔しい思いをしましたが、遠子と向き合ったことによって自分の恋にケリをつけることができたし、今度は親友と好きだった人の恋を応援しようという優しい気持ちが彼女の中に芽生えていきました。
自分の失恋と親友の恋をプラスに捉えることができるって、「親友」として本当に素晴らしいことだなと思いました。
今後も遠子と遥には、どんな困難があってもお互いに優しく支え合えるような友情を続けてもらいたいですね。
部活を頑張る遠子から感じた小さなことでも続けてみることの大切さ。彼方くんや遥との付き合いから感じた心の中にあるもやもやした気持ちを口にしてみることの大切さ。今作でもたくさんの「学び」がありました。
今作は遠子の恋がメインでしたが、個人的には本当は優しい心の持ち主だった遥が幸せを掴む様子も凄く見てみたいと思いました。
そのあたりは『まだ見ぬ春も、君のとなりで笑っていたい』という作品で描かれているそうなので、今度こちらも読んでみます!
おまけ
以前「夜君」を読んだときの簡単な感想が残っていたので、こちらも載せておきます。(文章の雰囲気がいつもと違いますが…)
単行本時から気になっていた作品。正直それほど満足度は高くない内容かと思って読んでいたが、大間違いだった。主人公が都合のために優等生を演じながら学校生活を送る息苦しさにリアリティがある。本当の茜の姿を知っていた青磁は自分を偽っている彼女のことが大嫌いで、茜に対してはきつくあたるところがあった。しかしそれは彼なりの優しさであることが読み進めると感じられる。また作中の「色彩」に関する描写も象徴的。ちょっと変わり者のように思われていた青磁が普段どのような世界を見ているのか、様々な色で表現した描写が魅力的な作品でもあった。
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