憲法記念日にあたって国籍法全面改正の要望書

法務大臣 上川陽子様

市民団体「AMF2020」は、2020年まで「国際結婚を考える会(AMF)」として活動していた市民団体で、世界中の日本人や日本に関係する人たちと緩やかな繋がりをもって連帯し、持続可能な平和で安定した社会の実現を目指しています。活動の中では国籍法・入管法など法制度に関する分野に大きな比重を置いています。

日本国憲法は、「日本の民主的変革の基本原理」を提供する憲法として1946年(昭和21年)11月3日に公布され、1947年(昭和22年)5月3日に施行されております。然るにその国籍法は、74年経った2021年現在において、その理念を体現化しているでしょうか?
否、です。
現行の国籍法は大日本帝国憲法下よりそのまま引き継がれました。

世界的傾向として、複数国籍保持者は増える一方で、国外諸国もこれを容認しています。避けるべきは無国籍状態です。
また去る3月28日当会で開催した木棚照一氏(早稲田大学名誉教授)の講演「日本の国籍法における複数国籍の発生とその解消制度について」においても、現行の日本と外国の法制により出生時点で二重、三重といった複数の国籍取得者が発生することが明らかにされました。(【注 1】〔注28〕出生による国籍取得から複数国籍が生じる場合 )

ところが現在まで、国は「国籍唯一主義」の態度を崩そうとしません。
そのため、これまで多くの日本人と日本に関係する人たちが、国籍法により苦しみを受けてきました。
もうこれ以上放置しておくことはできません。

私たちは次のことを要望いたします。

1)日本国憲法にふさわしい国籍法を、次の点を導入して制定してください。
    ー国籍取得に生地主義も取り入れる。
  ー出生届け期間は有する国籍数の如何かつ居住地の国内外を問わず一律にし、
   いかなる場合も国籍喪失に繋がらないようにする。
  ー外国籍を取得する行為は即国籍喪失に繋がらないものとする。
  ー国籍離脱は成人に達した個人の意思によりなされるものとし、
   いかなる機関も喪失させる権限を持たないものとする。

2)新しい国籍法を制定する間の救済策として、憲法制定日以降日本国籍を喪失した全ての人を対象とした国籍再取得制度を早急に設けてください。
当会としては、17条を拡大し条件を緩和する提案をします。(【注 2】参照 )

3)国籍法全体の啓蒙に努めてください。そのためには義務教育機関において、国籍の得喪に関して教えてください。

2021年5月3日 

AMF2020 e-mail : amfofficialinfo@gmail.com

【注 1】木棚照一『逐条国籍法』日本加除出版 2021年 p.332 
【注 2】(当会案)「国籍再取得制度」の拡張検討を
「(日本)国籍取得」制度のうち、出生に拠る場合(2条)、認知に拠る場合(3条)、帰化(4条)、法改正での時限的経過措置を除くと残るのは「国籍の再取得」の条文17条である。
対象は
・第十二条の規定により日本の国籍を失つた者で二十歳未満のもの
・第十五条第二項の規定による催告を受けて同条第三項の規定により日本の国籍を失つた者
となっているが、後者の「催告」については、立法以来いまだ適用例が無い。結局、
・12条の国外出生の重国籍者で「国籍留保」をしていなかった
という手続きのミスの救済が、17条の趣旨と言えるだろう。

 しかし、現実問題として同様に「深刻なミス」がある。国籍法11条1項の外国籍志望取得による日本国籍喪失。これは法の不知により意図せず日本国籍を喪失してしまうことが起こり得るものだし、手続き者自身の国籍喪失ならまだしも、親が法律を知らなかったために未成年の子に外国籍を志望取得させ日本国籍を喪失させてしまったような場合についてまで、何ら救済策を設けないのは「酷に過ぎる」といえるだろう。
 私たちは、国籍法17条の拡張による国籍喪失者の救済を要望する。具体的には、居住条件や年齢条件を削除し、生来日本人であったことを証明すれば届出だけで回復する制度である。 以上。
==================================

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?