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キョンキョンと小林さんーちょっと年上の、偉大な先輩

キョンキョンのこと

小学生のとき、キョンキョンのラジオが軽トラックから流れていた。母親と家の茶畑で摘み取った茶葉を、山奥の業者に売りに行く途中で、だ。ド田舎なので、電波があまり届かずかすれた声だったが、確かにキョンキョンの声で、リスナーの相談を受けていた。

「学校に行きたく、ないんです」というような相談内容だった。キョンキョンは、ひとこと「行きたくなかったから、行かなきゃいいんだよ」と答える。その言葉にわたしは衝撃を受けた。そんな選択肢、あるんだ!

キョンキョンは、80年代当時、歌番組でフリフリの衣装を身にまとい、明るい曲をキラキラした笑顔で歌っていた。その笑顔とラジオの言葉のギャップに驚く。ラジオでの言い方が、ストレートで正直な人だと思った。そして、軽はずみなひとことではなく、静かな低い声で、言葉の責任と重みも、感じた。

軽トラックでラジオを聞いた日から、わたしはキョンキョンを心の姉さんだと思っている。

小林聡美さんのこと

小林さんは、「やっぱり猫が好き」というドラマで知った。猫と女性3人が出てくるコメディなのだが、当時中学生だったわたしのクラスの友だちが「めちゃおもしろい」と言い出したので、見始めた。

中学生のとき、なんとなく女子の中でダイエットが流行っていて、何キロであるかをみんなすごく気にしていた。が、小林さんはそのドラマ内で体重計に乗って「標準体重だな」ときっぱり報告する。すごい。ガリガリに痩せていることがステイタスだった時代だったが、標準でいいんだ、と。目からウロコだった。

三谷幸喜さんと結婚する際、小林さんは記者会見で「彼は私のコレクションの1つです」というようなことをおっしゃっていた。このセリフにも驚く。当時は結婚相手=旦那様、ご主人様についていきますというような内容ばかりだったから。

小林さんは、何冊かエッセイなどの著書も出版されている。内容は、大胆な記者会見での物言いとは違い、冷静沈着な目線で、細やかかつ丁寧な暮らしぶりを書かれている。庶民感覚もあり、いばっておらず、ユーモアもたっぷり。何年かごとに出版されるが、「どっちに進んだらよいか、たまにぐらつく自分の心」を軌道修正してくれる、船の碇のような読後感が常にある。

日常のささやかな出来事を丁寧に、ユーモアたっぷに書かれている

ドラマ「団地のふたり」から学ぶこと、おおすぎ!

そんなふたりが登場するドラマ「団地のふたり」を、毎週楽しみに見ている。のえちゃん役、キョンキョンのダボっとしたロゴトレーナーとパンツ&サンダル、なっちゃん役、小林さんの色使いが自由なゆるっとしたワンピース。これまた風通しがいい感じ。ふたりの関係もゆるすぎず、きつすぎず、ちょうどいい。演技が自然すぎて、そういう人が現実にいるみたいだ。

「団地のふたり」は、毎週、劇的になにか事件を解決するわけでも、命を救うわけでも、悪者を懲らしめるわけでも、ない。ただ、ゆるっと50代を過ごしながらも、それなりに悩みがあったり、親の介護や住み続けている老朽化したマンションをどうするか的な、現実ともしっかり向き合う。

ゆるそうに見えて、身に降りかかる問題をありのままに受け止め、もがくわけでもなく、しかしゆるやかにしなやかに解決&前進していくのだ。この話もまた、ちょっと先の未来として、役に立つ。生きる姿勢を先輩ふたりから、楽しく学ぶのだ。

ドラマに出てくる衣装もさることながら、料理も素敵だ。質素ながらも野菜をきれいに丁寧に盛り付けてあって、とってもおいしそう。

ドラマ冒頭、「団地のふたり」のイラストが最初女性3人だったのが、そらちゃんの回を過ぎたら、2人になった。そらちゃんは、本当のお空へ、行ったのだろうか。そういう小回りの利いた演出にも、きゅっと感動する。

来週でドラマが終わってしまう。これまたロスになりそうなキョンキョンと小林さんのふたり。これらかも、偉大な先輩として、かげながら見習っていきます!!

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