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本 『長い読書』
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『長い読書』
島田潤一郎
島田さんの言葉に寄り添っていると、背伸びしないですむ。こんなに読書が好きな人を前にしていても、読書をしてこなかった自分への引け目をそんなに感じないでいられる。そしてむしろ、本が読みたくなる。
島田さんの器用で手慣れた風ではない、けれど島田さんだけの足取りで、その心で歩み見てきたこれまでの出来事を、まるで私も懐かしむような心持ちで読む。自分の鼓動が島田さんの鼓動と同じリズムになるような、そしてそれが本来の私のリズムであったかのような感覚。
そのリズムの中に「本を読む」ことがあり、出会う人や場所、時間それぞれにいつも「本」がある。そんなことを読んでいると、私の中にも「本を読む」ことが違和感なくあり続ける。
「読書の指南書」でも「読書のすすめ」でもないけれど、そんな風にして自然に本を読みたくなった。
一所懸命に本を読む島田さんの姿を想像しては、なんとも言えない親しみを感じながら読んだ。
お子さんのこと、お義父さんのことが書かれたエッセイが特に心に残りました。