あの日を超える伝説の夜を君と【a flood of circle】
3年前の6月14日。
正直、きっかけはあんまり覚えていない。
3年前関西に引っ越してきたこともあり、遠方だから…と学生時代に断念したライブの数々を思い起こし、手軽にライブに行ける環境に移り変わった、という状況に浮かれていたのも多分ある。それに当時は接客業をしていたため気兼ねなく平日に休みを取れるというのも大きかった。
気になるバンドはライブを見にいった方がいい!という概念が私の中にはあったし、ライブを断念したバンドの解散や脱退が相次いであったため、「ライブは行ける時に行っとけ!」という気持ちが1番大きかった気がする。
ともあれ、3年前の6月14日。
数曲しか聞き込んでいない状態で、umedaTRADで[a flood of circle]というロックンロールバンドを、初めて体験したのだ。
そして、あの日体験した衝撃は、今でも色濃く記憶に残っている。
トラッドでフラッドを見る
3年前に体験したあの衝撃以降、
"umedaTRADで[a flood of circle]を見る"というのは、私にとってなんとも特別なことになっていた。
(ちなみに今回の【伝説の夜を君と】ツアーでは大阪が二箇所あった。序盤にBIGCAT、そして後半にumedaTRAD。もちろん私は迷わず「umedaTRAD」を選んだ。)
気になるアーティストといえ、ライブに初めて赴く、というのはいつだって緊張するもので。ましてやバンドのことをあまり知らない状態で行くのは、正直期待よりも不安が大きかった。
いくつかの初めてのライブを経験したことで、私の中で、初めて赴くバンドのライブに参加するにあたってのルールができた。それは、フロア全体を見回せる後方からライブを見る、ということだ。曲ごとのノリ方がわからない・お客さんの反応も込みでライブを見たい、ということで決めた、なんとも簡単なルールだった。
そしてあの日、私のこの選択が吉(大吉と呼ぶべきかもしれない)となった。
その時のことはこちらにも書いているが、
umedaTRADで見たa flood of circleのライブは、
今まで見てきた数々のライブの中でも最高潮と言えるくらい、
フロアの盛り上がりが、とにかく最高だった。
目の前の音楽で突き動かされる人たちが、そこにはいた。
たくさんの人の心を突き動かす音楽が、そこにあったのだ。
3年前のその衝撃以降、
a flood of circleのライブで生音を体感したい!という気持ち以上に、
a flood of circleの音楽が、フロアの人々を突き動かす光景を楽しみにしている自分がいた。
3年前と同じ場所で、またあの光景を見れるのか…!
と思うと、本当にワクワクが止まらなかった。
Tour 伝説の夜を君と(本編)
【Tour 伝説の夜を君と】は、ツアー始まりの曲にふさわしい、今回のアルバム曲『A』から幕をあける。
ゆったりと、しかし確実に、フロアの熱気が沸々と底から湧き上がってくる様が肌を通して感じられた。
会場が徐々にフラッドの音楽に染まっていくような、じんわりと足元から湯に浸かるような感覚でいたのだが、
次の瞬間、湯の熱さに慣れて一気に湯船に飛び込むような感覚になる。
『Dancing Zombiez』
ドラムとギターのビートが規律良く刻まれるそのメロディに、会場の熱気は一気に沸点まで到達する。
「待ってました!!」といわんばかりのフロアの熱気。手拍子。天高く突き上げられる拳の数々。
今回も3年前と同じくフロア後方から見ていたが、三者三様に楽しむ観客の様は、見ていて圧巻だった。
楽しみ方は違えど、目の前にいる人たちは皆まぎれもなく、音楽で突き動かされる人たちだった。
そしてかくいう私も、この音楽を、この光景を、ずっと待ち焦がれていた。
そう確信するほど、もう目の前の彼らが奏でるメロディに首ったけだった。
早々にフロアを支配した彼らはもう向かうところ敵なしの無敵状態なのだ。
その高温の熱気を引き連れて、『クレイジー・ギャンブラーズ』、『Blood Red shoes』、『狂乱天国』、『Rex Girl』『Welcome To Wonderland』と続くもんだから、沸点なんてとうに超えており、なんなら会場の温度はまだまだ上昇しているようにすら感じた。
この熱を体感してしまうと、流石無敵状態のフラッド!と言いたくなってしまうものだ。
何しろ、簡単に会場を音楽で掌握した彼らは止まるところを知らないのだから。
今回もフロア後方で見ていたこともあり、早々にドリンク交換をし、アルコール片手に見よう〜!なんて呑気なことを思っていたのだが、
雨は降っていなかったもののこの日はとにかくジメッとした暑さで、暑さにてんで弱い私はそれに負けてしまい、ライブ前に手にしていたアルコールは1曲目が始まる頃にはほとんど飲み干してしまっていた。
そして、ライブ開始早々、後悔した。
きっとみんな私と同じ気持ちだったのか、
2曲目か3曲目の曲転換時(ライトが落ちてステージが暗くなった時)、
バーカウンターでの注文の声と氷を入れる音が、静かになったライブハウス内に響き渡ることとなった。
この状況だけでもうこのライブが最高なものであることを表しているようなものだ。
こんな素晴らしい空間を生み出してくれるから、a flood of circleのライブは最高なんだよなぁ、とホクホクした気持ちで私も残りのアルコールを体に流し込んだ。
a flood of circle の魅力を挙げるとするならば、
まっすぐに前を向いて生きるロックンロール、であることだろう。
拳をあげ、身体を跳ねたくなるような楽曲はもちろんのこと、佐々木亮介の持つ魅力的な歌声で紡がれる物語のような楽曲も、まっすぐな芯を持って力強く生きようとする意思を感じるのだ。
『月に吠える』や『春の嵐』という旧譜からの曲を交えながら、アルバム【伝説の夜を君と】の楽曲が演奏されることで、楽曲によって色は違えど全て一本まっすぐ芯の通った曲であることは確かであることを再認識した。そして新しい曲たちがより色濃く彼らの歴史に刻まれる様を見ているような、そんな感覚になった。
今回の大阪公演は、アルバムツアーも終盤ということもあり、アルバムの曲たちはもう完全に彼らに馴染んでいた。(そもそも彼らの曲であるから、馴染むという表現は少しおかしいかもしれないが…)
アルバムの曲たちが起こす化学反応を完全に掌握している、といった感じがした。
それほどまでに、目の前の彼らは、フロアを音楽で支配していたのだ。
どこをとっても本当に抜群にかっこいいバンドなのだが、その筆頭を担うのはやはりvo.の佐々木亮介だろう。
MCでは「漢字の書き順に正解はないらしい」という話に始まり、
「俺たちどこまでも止まらないよ、ロックンロールだし。どこまでも転がっていこう」というかっこいい話をしたかと思えば、
「ハリボー(グミ)の赤いくまちゃんが昔から嫌いで、でもこのツアー期間で俺は成長したから、今は赤いくまちゃんが好きになった」といったお茶目でかわいいエピソードを缶ビール片手に話す人なのだ、a flood of circleのvo.佐々木亮介は。
本当にどこまで魅力的な人なんだ…!!と度肝を抜かれるのももはや恒例と化してきた。笑
(ちなみに、ほんとにあの佐々木亮介が「赤いくまちゃん」と確かに言ってた。私の記憶違いとかではない。笑)
今回のライブで特に印象的だった曲を挙げるとするならば、『白状』だろう。
アルバムで聴いた時にもメッセージ性のある曲だとは思ったけど、ライブでは音源の何倍もそのメッセージがまっすぐに突き刺さった。
簡単な言葉を使うならば、"歌の力"を感じた。
ギターの美しい音色がステージを作り上げ、弦を奏でるその行為は声帯に通じているのかと思うほど、ギターのメロディと歌声が融合し、一つの楽器として存在していた。
そして佐々木亮介の語りかけるような、それでいて魂をすり減らして歌うような力強さが、ライブでは音源以上に強く感じる。
マイクを通さず、生声で、その優しく力強い歌声が、フロアに響き渡った。
今まで心を突き動かされ続けてきたけど、この瞬間だけは、心が震えた。
こんなにも美しくてまっすぐな曲だったのかと、
目の前の音楽に、歌の力に、呆気にとられるほど、ただただ魅せられた。
Tour 伝説の夜を君と(アンコール)
ライブ本編は『伝説の夜を君と』で終わりを告げ、
4人は一度ステージを後にした。
そして、続くアンコールでは、3公演前からインスタやTwitterで挙げられていた新曲『花火を見にいこう』が演奏される。
こちらの曲も、待ってました!と言いたくなる曲であった。
というのも今までの公演では、
ギターのみの演奏→ギター・ドラムの演奏→ギター・ドラム・ベースの演奏……
といった風に、ツアー中に曲の完成を追体験しているような演奏演出をしていたのだ。(各Verの演奏は公式インスタから見られるのも嬉しいところ。)
そして、この大阪公演で、ギター・ドラム・ベースに加え、アオキテツのギターが加わり、4人編成での『花火を見にいこう』が初披露となったのだ。
これは是非とも今までの演奏経過(各公演での演奏)も踏まえて見ていただきたいのだが、4人になったことで曲に奥行きが増し、グッと色彩豊かな曲になっていたのだ。
今までSNSで挙げられていた曲の完成形を目の前で体感でき、なんとも貴重な体験となったし、umedaTRADでのa flood of circleの思い出がまた一つ増えたことが個人的にはなんとも嬉しかった。
"umedaTRADで[a flood of circle]を見る"ということが私にとって揺るぎない特別なものになった気がした。
正直、たくさんの熱気と感動とでもうお腹いっぱいの状態だった。
この後、何が来ても動じない!何も怖くない!!という謎の自信があるくらいにはなんだか強気になっていた。
そして、俺最強!状態の強い気持ちを増強させてくれるかの如く、
アンコール2曲目は、ドラムとギターのビート、そして掛け声で一気に会場を高揚させ、熱くてまっすぐなロックンロール曲『Beast Mode』で幕を閉じた。
(ちなみに『Beast Mode』は2020年Spotify My Top Song1位の曲。それくらいこの曲がたまらなく好き。)
これから先も転がり続ける音楽へ
途中のMCで、『Welcome to Wonderland』の歌詞になぞらえて、
佐々木亮介が「No.1 TRAD!」と言ってくれたことがあった。
まさに!!
今、この場所が!この光景が!ここで奏でられる音楽が!NO.1!
ここumedaTRADがNo.1だよ!!!
と、叫びたくなるような高揚感を抑えながら、
その呼びかけに応えるように、私は拳を高く突き上げた。
やっぱり、umedaTRADでみるa flood of circleは特別、いや格別だった。
今回もスーツ姿のサラリーマンがいたし、曲が始まって前へ前へとステージに近づいていった人もいた。
私の隣にいた人(恐らく30か40代くらいの男性)は、私の視界内の範囲で1番自由に我を忘れて音楽に身を任せて踊りまくっていた。(最っっっ高!)
この情勢下のため、3年前のあの日と比べて違うことももちろんたくさんある。
立ち位置を記した印によって制限されたスタンディング位置、息苦しいマスク、上げることのできない歓声。
文字だけ見ると、少し緩和されたとはいえ、やはり様々な制限があるライブハウス。
でも、そんな制限の窮屈さを感じさせないくらいに、3年前私が見た光景と同じように、皆目の前の音楽に突き動かされて、自由で開放的で音楽を全身に浴びていた。
やっぱりこの光景が圧倒的で、とにかく最高だった。
私はこれから先も、ずっと、この素晴らしい光景を忘れない自信がある。
やっぱり音楽は不必要なんかじゃない。
それを証明してくれる場所が、音楽が、ここにある。
ちょっとやそっとのことじゃあ止まれねぇよ、
なんてったって、ずっと転がってるのがロックンロールってもんだろう?
きいろ。
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