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3行に一回の山をつくる「関西ライターズリビングルーム」イベントレポート


先日、こちらのオンラインイベントに参加した。

その名も、「関西ライターズリビングルームオンライン!」

主催の吉村智樹さんは、京都在住のライターであり放送作家さんだ。「#路上文芸」でもおなじみ。(吉村さんのnote、おもしろいんです!)

このイベントは、毎月第四水曜日の20時に開催されており、第一線で活躍されているライターさんにインタビューしていく内容だ。わたしは初参加だったので、この日を心待ちにしていた。

約一時間、あっという間だったなぁ。イベント後の「オンライン打ち上げ会」にも参加したのだが、とても楽しかった。なんだろう。落語を聴いているみたいだったからかな。吉村さんが高橋克実さんに似てたからかな。

ゲストは人気コラムニストの石原壮一郎さん

ゲストは「大人養成講座」「大人力検定」などで知られる人気コラムニストの石原壮一郎さん。(伊勢うどん大使でもあります!)

「このご時世、コラムを書く力がますます求められるよね」っていう切り口から、「コラムって、どうやって書くのか?」と、石原さんに根掘り葉掘り聞いていくのがイベントの内容だった。

8時になってZoomをつなげると、吉村さんが映った。

「50人以上の方が集まってくれるのでね、もうちょっと待ちましょうか。この間にZoomの使い方を説明します」とおっしゃった。参加者への心使いがあたたかいなぁ。吉村さんの関西弁の進行はとても小気味良い。

ゲストの石原さんは、ゆるゆる~ほんわかな口調なのだが、言うことすべてがキラッと光っていた。とくに「言い換え力」がすごかった。それはこのあと触れたいと思う。

(録音してなかったので言葉のニュアンスが違うかもしれませんが、どうかご容赦ください~)

柔和でやさしい印象だが、心の中にパンクがある

もともと石原さんは月刊誌『I‐DJAPAN』の創刊にたずさわっていた。しかし、「永遠に若者でいたい気持ち」を推奨するような雑誌の雰囲気に馴染めず、「そのテーマからかけ離れたことをやろう」と思ったそうだ。

普通なら「雑誌のテーマに沿って企画を練ろう」とするはずだが、自分の考えをストレートに進めてしまうところがすごい……。

これがきっかけとなり、石原さんの代名詞となる「大人力検定」を生まれた。その後「大人力検定」は単行本化され大ヒット。様々なメディアに取り上げられ「大人力」と言えば石原さん!というイメージが定着していった。

石原さんのやりたいことを追求した結果、「大人力」という言葉が広まり、世間から知られるようになったということか。「好きなことをしていたら、こうなった」という生き方、マネしたい……!

吉村さんは、石原さんのことを「正解することが偉いの?というアイロニーを感じる」と表現した。確かに、石原さんは「正解をこれとしない」という柔軟な考えをお持ちだった。

伊勢うどん、コシがなくて何が悪い

石原さんは三重県出身。そんな石原さんが「伊勢うどん大使」になる経緯についても話が膨らんだ。これまたゆるゆる~と語る石原さん。なぜ「地元の食」について書くことになったのか?

「うどんは『コシが命』というイメージがあるけど、伊勢うどんはコシがない。伊勢うどんは噛まなくても食べられるほど、麺が柔らかいから大人の離乳食ともいう」と表現していた。

もともと郷土愛があり、以前から伊勢うどんのことをコラムで取り上げていたそうで、

「コシのないうどんだが、『コシがなくて何が悪い』という伊勢うどんの生き方に惹かれた。伊勢うどんはメジャーになると思った」

と、伊勢うどんを擬人化していた。愛に溢れているなぁ。

あるとき、石原さんは知人から「それなら、伊勢うどんの大使になれば?」と言われ、本当に「伊勢うどん大使」になってしまった。

「期待を裏切られると、怒る人とおもしろがる人がでてくる。伊勢うどんも『コシがないぞ!』と怒る人がいるけど、良さを紹介していけば、伊勢うどんを食べて怒る人は減って、おもしろがる人が増えると思って」と石原さん。

これを受けて吉村さんは「石原さんって柔和でやさしそうな印象があるけど、心の中にパンクがあるナァ」と感心の声をあげた。

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(出典:ウィキペディア「伊勢うどん」)

エッセイとコラムの違いってあるの?

コラムの話に戻ろう。ライターを生業としているくせに恥ずかしいのだが、わたしは「コラムってなんぞ?」と思っていた。吉村さんが「コラムとエッセイの違いはなんだろうか?」という問いを石原さんに投げてくださったので、まずはコラムの定義について知ることができた。

「厳密ではないかもしれないけど、『わたしは』がでてくるのがエッセイ。あまり出てこないのがコラムだと思う。コラムは一般論の皮をかぶりながら、自分の意思を伝えるもの」と石原さんは言う。

「でもジャンル分けはどうても良くて、自分が思うものを書けばいいんじゃないかな。パスタも良いけど、ぼくはラーメンが良い、みたいな感覚でさ」とも。

3行ごとに面白いことを書くのがいい

「読者に完読させるためにはどうしたらいいだろうか?」という問いに対して、石原さんはこう説明した。

何かのテーマについて書くとき、なるべく正面から入っていかないようにしてる。どんな変わった入口から入っていくかが勝負で。カレーライスがいかにおいしいかを、普通にカレーから書き始めたらおもしろくないけど、スプーンから入ったらおもしろそうじゃない?」

3行ごとにおもしろいことを書くといいよね。その中にそれぞれ山場を作るようにして、読者になるほど!と思わせたり、クスッとさせたり、レトリックをいれることも」

この説明を聞いて「なるほど~」ってなった。どんなに長文でもすいすい読める記事って、段落ごとに山場がある。

「カレーから始まったと思いきや、宇宙船の話になったほうがおもしろいんじゃないかな。いかに『ためにならない着地点』をみつけるか。それがコラムの良さ。なかなかゴールにたどりつかないのが実は読んでもらえるのかも」と石原さん。

ふ、深い……。

どんなコラムは読者が離脱してしまう?

「待ってました!」というような質問を繰り出す吉村さん。次の質問は「どんなコラムだと読者が離脱しやすいのか?」というものだった。

俺かしこいだろ?というのはあまり先を読む気がなくなる。かしこいい人がばかなことしてても、それはそれでいやなんだけどね。あまりかっこつけない方がいい」と石原さん。これは、気づかないうちにしてしまっているかもしれない。

このあと、「石原さんの書いた、高木ブーさんのインタビュー記事がシビれる!それを介護のメディアで読めるなんて…!」という話になった。イベント終了後、深夜にこの連載を読み続けていたら、良すぎて泣けた。高木ブーさんが近くで喋ってるみたいなインタビュー記事。かっこつけない言葉がかっこいいんだな……と心に染みた。

どうしたらコラムの仕事が手に入る?

「そもそも、どうしたらコラムの仕事をいただけるの?」

この質問を待っていた。「あなたにコラム書いてもらいたい」って言われるにはコラムニストとして認知してもらう必要があると思うのだけど、「その段階にもいないわたしはどうしたらいいの?」って思っていた。吉村さん、よくぞ聞いてくれました!

「この人がどういうものを書けるのか?本人を見ただけではわからない。どういうものが書けるのかを見せていくのが大切。おもしろいが前提にあっての話だけど、人の目に触れさせるために、今まで誰もやっていないオリジナルの方法を発明した人が勝ちかも」

そこで、吉村さんがすかさず「ぼくもね、お尻の手術のことnoteに書いたんですよ。そうしたら『そのこと、もっとくわしく書いてもらえませんか?』って仕事の依頼がきたんですよ。書いてみるもんですねぇ」と言う。

「こんなこというと、編集者さんに怒られちゃうかもしれないけど、基本的に編集者さんは自分からアイデアを積極的に探しに行く人は少ない。だから、鼻先まで持って行って『これおいしいですよ』って言いに行くのも大切で。まぁ、あまりグイグイいくのも良くないけどね」と石原さん。

「それこそ大人力が試されますね!」と吉村さん。

自分を売り込むのも大事。そして自分がどう見えているのかを意識するのも重要なんだな。

・・・・・・

さて、どうしようか。3600字も書いてしまった。参加者の質問コーナーについても書きたかったのだけど、そろそろ筆を置きたいと思う。

イベントの終了時刻の9時をまわったとき、吉村さんがこうおっしゃった。

「少し時間押してますが、石原さん、おしり大丈夫ですか?」

「ぼくのお尻は痔じゃないんで大丈夫です」

これはお腹抱えて笑ったなぁ!吉村さんのお尻の話を、石原さんがサラッとネタにする。事前にネタ合わせしてたのかな。お笑いコンビ和牛の20年後を見ているようだった。

石原さん、吉村さん、すばらしい学びの場をありがとうございました!

(記:池田あゆ里)

こちらは池田あゆ里の「ライターマガジン」に掲載中です。




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