ベッカライ探訪と食物繊維の補給
「食物繊維を摂取せよ」という身体からのシグナルを受け取る。
そういえば、ライ麦って食物繊維が豊富だったなと何かの記事で読んだことを思い出した。そうなるとハード系のパンかと思い、脳内では勝手に「硬いパン=ドイツパン」という図式になった。
そこでドイツパンを扱っているベーカリー(そう、ドイツでは"ベッカライ"と呼ばれる)へわざわざ電車に乗って行った。
お店に到着して入店すると、パン屋さんならではの焼きたてパンの香りが漂ってくる。それだけでちょっと満足した感じもあるが、並んであるドイツパンの棚を眺めながら、さてどうしたものかと直立不動になっていた。目の前に広がるのは見慣れない種類の数々。ドイツパンに関する知識を何も持ち合わせていなかったため、何を選べばいいのか悩むことになった。
ドイツパンには多様な種類が存在し、それぞれ味や食感も異なるらしい。
たとえば「プンパーニッケル」というパンは、ライ麦をじっくりと蒸し焼きにしたもので、しっとりとした食感と酸味が特徴らしい。また、「フォルコンブロート」は全粒粉を使用したパンで、食物繊維やビタミンが豊富らしい。一方、「ロッゲンミッシュブロート」はライ麦と小麦を混ぜたもので、食感がやや軽めらしい。
さっきから、らしい、らしい、と言っているのは棚に貼ってあるポップの説明を読んだまま伝えてるから。
ライ麦パンと一口にいっても選びがいがある。種類によってライ麦の含有率が異なるらしく、20%程度のものから100%までさまざま。含有率が商品のポップに表示されているのはドイツパン初心者にとって大変ありがたい。
今回の目的は「食物繊維の摂取」であったため、あまり含有率が低いのは違うと思ったが、100%は未知の領域だったためそれはそれでなんか怖い。
トレーを持ちながら店内を何周か歩き、いろいろと迷いに迷った末、さまざまな種類を試しながらライ麦パンの違いを楽しむことができそうな複数の種類が少しずつ入った「詰め合わせセット」が目に留まったため、それを購入した。
自分のなかでは遠出した方だが、ドイツパン以外に特に目的もなかったので、寄り道もせずそのまま電車に乗って帰宅。
購入したパンは一つ一つが大きく、さてカットしようと思い包丁を手に取ったが、これがなかなか切れない。包丁の刃がパンに食い込むものの、思うように進まない。
そういや、レジで会計を待っている間に奥の厨房をちらっと見たとき、店員さんがパンをカットする専用の機械を使っていたのを思い出した。それくらいドイツパンを切るって大変なんだなと身をもって知った。なぜパン切り包丁がこの世に存在しているかその意義を理解した瞬間だった。
途中まで切れていたパンは最終的に手で無理やり割ってトースターへ。正確には、我が家にトースターはないため、電子レンジのトースト機能で焼くことに。普段使わない角皿を取り出し、軽く洗ってからパンを乗せて温めた。こういうときだけ、なぜか面倒くさがらずやる自分の性格が誇らしい。
温めたドイツパンを口にすると、ライ麦が多く含まれているからか酸味がしっかりと感じられて、おいしかった。「なるほど、これがドイツパンの味か…」と思いつつ、そういやこれってチーズやハム、バターなどの具材と合わせて食べるものだよなと、そのまま食べたことに後悔した。
詰め合わせセットにはレーズンが練り込まれたものもあり、こちらはそのままでも程よい甘さが感じられて唯一の救いだった。
こうしてドイツパンを食べてみると、スーパーで売られている「ライ麦入り」と表記された食パンが、実際にはほとんど小麦でできていることを改めて思い知らされる。あのプチプチ食感は好きだけど。
ドイツパンは硬さだけでなく、味や栄養面でも独自の文化を持っていることを実感できた1日だった。