「顧客目線を持て!」→ただその製品やサービスを利用するだけでは不十分
1.真の顧客体験・ユーザ体験を社員がしていますか?本当に?
「顧客目線を持とう」
「ユーザ体験(利用者体験)を増やそう」
より良い製品やサービスを提供できるようになるために!
多くの企業や組織の経営者や事業責任者がそう言います。
ここで皆さんに質問です。皆さんは、皆さんの組織のメンバーは、真の顧客体験、ユーザ体験(利用者体験)をしていますか?
僕が言う真の顧客体験やユーザ体験(利用者体験)とは、その製品やサービスをただ単に利用した体験ではありません。
「その製品やサービス(競合含む)を利用して何かをする、トータルな体験をしていますか?」
これを問いたいです。
なお、真の顧客体験・ユーザ体験(利用者体験)を欠いていると思われる、残念なサービスの体験談は以前、以下のブログでも綴りました。
特に行政の観光課や産業振興課、および民間の観光事業者や飲食施設などを運営する皆さんは是非読んで振り返ってください。
2.空港事業者の例で考えてみる
具体的に考えてみましょう。
たとえば空港事業者(含:空港で展開する売店、飲食店、レンタカー事業者など)であれば、ただ他の空港を見学及び利用しただけでは顧客体験・ユーザ体験(利用者体験)としては不十分。
トータルの旅の体験をしなければ利用者の真のニーズやチャンスに気づくことはできないでしょう。
空港を利用する行為は、多くの利用者にとって手段であって目的ではない。空港は利用者が目的を果たすための、通過点でしかありません。
・空港を利用して、その地域を旅する
・空港を利用して、その地域で仕事をする
そのようなトータルな行動を通じて、はじめて私たちは空港利用者のペインポイント(不便さ)やキャッシュポイント(お金を落としてもらう機会)に「自分ごと」として気づくことができる。
(たとえば出張で最終便で現地に到着。どのレンタカー会社のカウンターも既に閉店、バスもなくタクシーもいなく、売店も閉まっていて軽食を買う場所すらない。。。そのような途方に暮れた体験をしたことが、空港事業者の皆さんはありますか?)
皆さんの会社は、会社のメンバーは、このようなトータルな利用体験が日々できているでしょうか?
あなたの会社が提供する製品やサービスを利用する人を、「わかっていらっしゃる!」と唸らせることが出来ているでしょうか? 「また利用したい」「またその地域に来たい」ファンを創出できているでしょうか?
3.さまざまな業界・業種にあてはめ「自分たちごと化」してみよう
空港事業者に限りません。さまざまな業界や業種にあてはめ、自分たち(あなたたち)が真の顧客体験・ユーザ体験(利用者体験)できているか振り返ってみましょう。
(なお、(2)自動車業界については手厳しいです。自分の出身業界だけに……)
(1)道の駅の飲食店
→道の駅を「経由地」として他の都市に旅や出張する体験をしていますか?
隣やその先の市町を訪問する人たちが、行き/帰りに大量に通過する時間帯にお店が開いておらず/閉めていて、みすみす食事難民やお土産難民にしていませんか(すごくもったいない)?
個人の顔、法人の顔(出張者など)それぞれで道の駅に立ち寄って移動した体験をどれだけしているでしょうか? たとえば法人の顔で利用する人にとっては、待ち時間が少ない(または待ち時間を読める)、領収書が発行される、クレジットカードで決済できるなどは地味に重要なポイントです。
(2)自動車業界・自動車会社
→クルマに乗ったまま道の駅やサービスエリアなどで仕事(PC作業やオンラインMTGなど)したり、ワーケーションに出かけたりなど、クルマで移動しつつ仕事や観光をする体験を社員自らしていますか?VUCAの時代、MaaSの時代、新しい働き方や生き方を率先してしないことには、説得力のあるサービスを生むことは出来ません。
「製造現場と不公平だから」「労務管理しにくいから」なる理由で、社員を事業所に閉じ込めていませんか?
「自社のクルマを利用しない社員や取引先は、人にあらず」みたいな度量の狭い(セコい)同調圧力的、かつダイバーシティの欠片もないカルチャーを良しとしていませんか?
新しいライフスタイルやワークスタイルを体験したことのない人たちに、他社製品や他業界のサービスを体験したことのない人たちに、新しい顧客を感動させるサービスを生み出すことは出来ません。それは顧客にとってナンセンスかつ不利益です。社内の不公平感なんて、顧客にとっては知ったことではありませんし、なんの顧客価値もありません。いい加減、目を覚ましてください。
(3)鉄道事業者
他線やバスなどに乗り換えや乗り継ぎをしての移動体験をしていますか?
重い荷物を持って、通勤時間帯に旅行や出張をした体験がありますか?
他社の有料サービス、飛行機や船やクルマなどで旅や出張する体験をしていますか? 道の駅や高速道路のサービスエリア/パーキングエリアなども利用してみて、感じたことを社内で話し合ってみてはいかがでしょうか?
(4)観光・宿泊事業者
最近、自らが他の土地を観光した体験がありますか? また自地域を旅人や出張者の立場で体験したことがありますか?
旅館の経営者やスタッフであればホテルやペンションやゲストハウスを、ホテルの経営者やスタッフであれば旅館などを利用した体験がありますか?
レジャーだけでなく、ワーケーションなど仕事で観光宿泊施設を利用してみたことがありますか?
(5)IT企業
自ら、最新のクラウドサービスなどを利用して社内外の人とコミュニケーションしたり、仕事をした体験がありますか? いつも決まった場所で、決まったメンバーとだけと行動していませんか?
テレワークやワーケーションなど、最新の働き方を体験したことがありますか?その体験や価値や、解決する課題を顧客に語ることが出来ますか?
契約書などのドキュメントを、顧客や取引先に押印させて郵送/スキャンさせたりしていませんか?
(え、管理部門がウンって言わない? 管理部門と正しく闘いなさい!)
セキュリティやコストを言い訳にして、いまだにメールと電話とFAXと対面依存の仕事のやり方しかしていないとしたら……IT利用の素人の言うことに何の説得力もありませんね。業界のメンツ丸つぶれですよ。
(6)研修事業者
研修だけやってハイおしまいになっていませんか? さまざまな学習サービスや体験をしていますか? 研修を受けた後の顧客の行動を自ら体験していますか?
(7)ワーケーションを推進する、行政や関連省庁の担当者
自らワーケーション……以前にテレワークやリモートワークをした体験がありますか?
補助金だけ出して「はいオシマイ」になっていませんか? 自ら他の地域でワーケーションしたり、自地域でワーケーションした体験がありますか?
ワーケーションを取り入れることで、どのような組織課題や社会課題が解決するか(し得るか)、自分の体験やコトバで語ることが出来ますか?
自分たちの業種・職種にあてはめて考えてみてください。そして、正しく「ドキッ」としてください。
4.真の利用体験が顧客との共感を生み、共感がファンを生む
真の顧客体験やユーザ体験(利用者体験)なき人たちは、利用者からしてみれば「考えればわかるでしょう?」なペインポイント(不便さ)や「もどかしさ」に気付くことができません。なぜなら、自分自身がピンと来ないからです。
でもって、二言目には「できない言い訳」をするか、開き直るか、思考停止する。悲しいじゃありませんか。
利用体験のない人たちが提供する製品やサービスを、僕は信用しません。
どうせなら、他社の製品やサービスも含めて、さまざまな利用体験や実験をしている人たちが提供する製品/サービスを利用したい。
そのほうが、提供者と利用者のココロの距離も縮まります。
同じ愛用者同士の共感が生まれますから。
共感はなによりの絆!
共感がしなやかな越境を生み、ファンを生む!
(ここでは提供者と利用者の心の越境、立場の越境)
同業他者の製品やサービスをトータルで体験してみる。そのような、越境体験に時間やお金を使うのも立派な人材育成であり、かつサービス開発だと僕は思います。
その意味で、人事部門は経営や事業部門と伴走し、社員の真の顧客体験・ユーザ体験(利用者体験)の機会創出と、サービス設計力向上のための能力開発を率先していってほしいと切に願います。
それこそが、顧客視点の人材開発・組織開発であり、サービス開発とアンドを取ることが出来る課題越境型の組織のあり方であると僕は確信しています。
より良い製品やサービスを生む、いいえ、より良い顧客体験をうむ人を育み育てていきましょう! 越境!
5.参考書籍/参考プログラム
(1)書籍『業務デザインの発想法』
利用者目線でペインポイントを発見し、仕組みや仕掛けやオペレーションで解決するためのヒントを盛り込みました
(2)書籍『仕事ごっこ』
そうはいっても忙しすぎて、顧客体験・ユーザ体験(利用者体験)するヒマなんてない! まずあたりまえの慣習や仕事をやめるところから始めましょう。
(3)書籍『新時代を生き抜く越境思考』
越境体験により解決できる課題を網羅しました。前述した、ビジネス客の体験を損なう「悪気ない動線」「悪気ない当たり前」も網羅し、解決策も提示しています。行政や官公庁の方にも是非読んでいただきたいです。
(4)書籍『話が進む仕切り方』
良い顧客体験、良い社内体験を生み改革や変革を前に進める、ファシリーダー(ファシリテータ+リーダー)の観点と行動を散りばめました。組織のファシリーダーを育成しましょう。
(5)越境学習プログラム『組織変革Lab』
良き顧客体験、良き社員体験を生むためのポイントを毎月学習する、ファシリーダー育成道場です。