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「暮らしやすい地域なのに、なぜ若手が出ていってしまうかなぁ」→水曜日のヨル喫茶(浜松)に参加してみての振り返り

僕は昨夜、浜松の企業間交流イベント『水曜日のヨル喫茶』(通称:水ヨル)に参加してきました。その場で盛り上がった議論について、思うところを振り返りがてら発信したいと思います。
(このテーマ、地域の皆さんとも解像度を上げて議論していきたいと思い)


1.『水曜日のヨル喫茶』とは

地元の老舗企業である鳥善の社長 伊達善隆さんが発起人となり、地域企業の若手(20代がメイン)が中心となって(ほぼ)毎週水曜日開催されているイベント。軽く飲み食いしながら、毎回の登壇者(地域の企業の経営者やビジネスパーソンがメイン)のトークやピッチを聞き交流する場。

参加者は会員企業がメインですが、ゲストもふらり参加することができます。

こういう取り組みが浜松で始まったのは大変すばらしく、そして嬉しいです。僕も昨夜も地域の経営者仲間、浜松に進出した企業の社員、他都市から浜松に転勤で来られ方などをお連れして、人と人、知識と知識のお引き合わせをしました。

僕も他都市から浜松に移り、創業した一人ですが(当社あまねキャリアは浜松市の法人です)、僕のような他都市から来た人や、出張で来られた方などをアテンドできる企業間交流(越境)の場があるのもありがたいです。
(僕が浜松で事業をするようになった4年前は、このような場はなかったですから。ここ数年で地域のカルチャーもだいぶ変わってきたと感動しています)

『水曜日のヨル喫茶(水ヨル)』の光景。写真は6月に開催されたときの様子

発起人の伊達さん、運営なさっている若手の皆さんには感謝とリスペクトしかないです。いつもありがとうございます。

ちなみに食事もマジで美味しいです。以下は僕が前回(6月に)参加したときの写真ですが、この時は美味しい牛丼をいただきました。

『街食堂』でおこなわれているだけあって、食事もとても美味しいです

昨日はスペシャルゲストスピーカー(地域の方です)をお呼びしての、カジュアルトークの回でした。
そのトークで地域(浜松)の人口流出についての話が盛り上がり、そのやりとりが大変興味深く、かつ解像度を上げて向き合っていかなければならないテーマだと改めて思ったため、今回はその所感を共有します。

2.「暮らしやすい地域なのに、若手が出ていってしまう」

スピーカーの方はこうおっしゃっていました。

「(浜松は)とても暮らしやすく良い地域なのに、なぜ若手が出ていってしまうのだろうか。皆東京に行ってしまうのだろうか」

実際、浜松市は街もあり山もあり海も湖もあり里もあり、晴天率も高く気候も温暖。なおかつ、他の地方都市に較べても閉鎖性が低く(個人の感想です)、暮らしやすく良い都市だと僕も実感しています。

一方で、暮らしやすさとそこで暮らしたいか、ひいては仕事をしたいかは別問題です。

今回の司会、伊達さんとなるちゃん

司会の1人である伊達さんもさりげなく「暮らしやすさを、20代や30代の人たちがそこまで重視しているかどうか」のようなコメントを挟んでいらっしゃいました。次に、スピーカーはこうおっしゃいました。

「(若手は)地域に仕事がないから出ていってしまうというけれども、地域の企業の人たちと話をしていると「人手が足りない」と皆さんおっしゃる。地域に仕事はたくさんあるのになぁ……」

これに対して、

「地域企業のPRが足りないのではないか」

のような話にもなりました。

確かに、広報やブランディングに力を入れている企業はまだまだ少なく、仕事のPRが出来ていない。仕事と人のマッチングが出来ていない部分もあるでしょう。そこを強化するのもものすごく大事。

一方で、僕はこのやりとりを聞いていて「本当にそこか?」「そこじゃないでしょう……」とちょっとモヤモヤ思ったのです。

「そもそも、その仕事(地域の従来の仕事)を若手、ひいてはクリエティブな仕事をしたい人たちがやりたいと思うかどうか?」

ここに向き合って解決していかないことには、「そりゃ、意欲ある人は東京に行ってしまうでしょう/戻ってこないでしょう」と僕は強く思うのです。

ちなみに、僕は地域を出ることはまったく問題だと思っていません。むしろ、出来ることなら一度他地域に出て仕事や生活をしてみたほうがいい。

出ていくことが問題ではなく、戻ってこないこと(あるいは他都市の人に「関わりたい」「移住したい」と思ってもらえないこと)が問題なのです。

『水曜ヨル喫茶』(水ヨル)はDexiさんが展開する「SOU」の「街食堂」で行われています

……と、スピーカーと司会者のトークを聞いて、ぼそぼそ呟いていたら「沢渡さん、なにか言いたいことがありそうなのでどうぞ!」と突然振られたため、僕はとっさにこう答えました。

「(若手は)地域のカルチャーに魅力を感じず、東京に出ていってしまうのではないでしょうか」

ここで言うカルチャーとは、見えないもの(IT、デザイン、人材育成)にお金や時間を投資する文化とか、職場風土とか、意欲と能力がある人が権限を持って行動できる仕事の仕方やコミュニケーションの仕方などを意図したのですが、会場の一部の人にはいわゆるアート・文学的なカルチャーととらえられてしまったようで、僕の意図した論点とはズレた話になってしまいました。

ここは僕の大いなる反省点です。カルチャーではなく、別の言葉を使った方が良いですね。以後気を付けようと思います。

3.クリエイティブな人たちが正しく活躍できない

要は、デザイン、IT、マーケティング、HRや広報など、クリエイティブかつ面白い仕事をしたい人たちが活躍できる場(仕事)がない。あっても、買い叩かれてしまう

そこが問題の本質だと僕は感じています。

浜松も製造業が強い都市で、それは価値ある基盤なのですが、それゆえに統制管理型、下請け型の組織カルチャーやビジネスモデル(呪縛)がまだまだ強い。目に見えるものには投資するが、目に見えないものの価値が認められにくい。

目に見えるものであっても、染みついたコスト削減主義が仇となり、顧客から買い叩かれる。よって高収益にならない待遇が良くならない。とはいえ、地域の人が暮らすぶんにはそこまで大きな不自由もないものだから(ある意味とても幸せなことではあるのですが)、低位安定構造でなんとかなってしまう。ところが、意欲ある人、仕事にやりがいや成長を求める人にとっては物足りない。だから東京などの他都市に出ていってしまう/戻ってこない。

この呪縛から脱していかなければ、若手や意欲的な人が出ていってしまう/居つかない状況は打破できないでしょう。

ズバリ言うと、見えないものの価値を認めようとしない、お金を出さない、買い叩く。そのような文化を改めようともしない。
その姿勢に地域や企業に若手や意欲ある人は、この地域「ダサイ」「情けない」「恥ずかしい」と思い、そっと東京などのイケている地域に出ていってしまうのです。

本件は、以下の記事にも綴りました。宜しければ読んでみてください。

4.「逃げちゃダメだ!」3つのシフトに向き合おう

僕はここから解像度を上げて、地域が各企業が(もちろん行政も)、次の3つをシフトをしていかなければならないと考えます。

(1)仕事のやり方
(2)組織カルチャー
(3)待遇

地方都市が向き合わなければならない3つのシフト

(1)仕事のやり方
染みついた下請け型の仕事のやり方からの(部分)脱却。
顧客とお取引先の関係のみならず、社内においても上司と部下(この表現好きではないのですが、便宜上ここでは使います)の下請け関係でしか仕事をしたことがない人たちが多い。この景色と行動習慣をとにかく変える。
(相手を下請けにしてしまうの問題だが、自社や自身が相手の下請けになってしまうマインドと行動も問題)
コミュニケーションの仕方(スキル)やツールもアップデートし、チャットなどのデジタルツール/オンラインツールも活用しながら、立場や組織を超えたフラットな共創型のコミュニケーション、チームワーキングのやり方に慣れていく。意思決定プロセス、権限移譲の仕方、人事制度などの刷新も必須。
過度な内製主義も問題(中(自分たち)にナイものはナイ。ナイったらない。だからナイんだってば!)。共創で解決しよう。

(2)組織カルチャー
IT、デザイン、知識など目に見えないものにもお金を出す(買い叩きなどもってのほか)。他者(お取引先、若手、時短勤務者……など)をリスペクトする。女性や若手が正しく活躍できる(雑務をおしつけない)。人の育成や組織開発に投資をする。テレワークやワーケーションなどが成果を出すための手段として市民権を得ている。工数管理一辺倒、目先の効率一辺倒の「固定的な生産性」の考え方(イノベーションとはまあ相性が悪すぎる)から脱却する。

(3)待遇
待遇も大事です。待遇を良くするためにも、下請けマインド、下請けで固定化されたビジネスモデルを変え、高利益な新規事業を創出していく。

5.おしまいに

今回の「水ヨル」の議論はほんとうに有意義でした。

地方都市(浜松)の人口流出に対して、各々が見ている景色や認識の違いとギャップを知ることができた

ここからさらに課題の解像度を上げ、地域企業の経営者(僕もですが)やビジネスパーソン、行政の皆さんと向き合っていかなければならない、解決していきたい思いましたし、その対話をするための基盤が浜松には既にあるし、仲間もいる(「水ヨル」のその場の一つです)。

加えて僕は、20代を中心とした当事者の声をもっと聞いていきたい(地域に残る選択をした人/去ってしまった人それぞれ)と思いました。
世代や地域を越境して、地域変革のために何ができるかを考え行動し続けます。

なお、僕の書籍『新時代を生き抜く越境思考』の『地方都市の問題地図』でもこの問題を立体的に触れています。

地域を良くしたい皆さん。是非ともお手元に広げて、皆さんの地域や職場の仲間や同志とワイワイと議論してみてください/して欲しいです!

「地域を変えるのは、よそ者と、若者と、ごにょごにょ(自主規制です)」とよく言われます。

ラッキーなことに、僕もよそ者力と、ごにょごにょ力は高いと思います。
(ダム際で仕事をする #ダム際ワーキング など、意味不明なことやっていたりしますし(苦笑))

地域の景色、越境と共創で変えていきましょう!