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DXに関わりたくない40代の気持ちが分かる~そして蘇る「あの原体験」
今朝(2022年1月19日)の日経新聞で「DXに関わりたくない40代社員」の記事が特集されました。
私も取材を受け、記事中にコメントが掲載されているのですが(9行程度)、その時に話しきれず/この記事でも触れられていない、私なりの正直な所感を述べます。
DXに関わりたくない40代の気持ち、めちゃくちゃ良く分かります!
ちなみに、私は”D”よりも”X”、すなわちトランスフォーメーション(改革や変革)推進に抵抗感を示す人が少なくないのではと思っています。
だって、理不尽な思いするだけなんだもの。
トップはDXだ!組織変革だ!なんちゃら改革だと声を荒げる。そして、その推進を拝命する。
……と、そこまではいいのです。
ところがいざ改革や変革を進めようとすると……
・現場の社員から抵抗にあう
・なんなら部門長や役員も抵抗したり、非協力的な人もいる
え、えええ? なんでトップがやれと号令掛けているのに、下っ端が抵抗や反抗するの? トップのオーダーがまるで各部門や現場に落ちていない。
無邪気な人、正義感が強い人ほど「何かおかしい」「話が違う」と感じる。
挙句、トップからも
「どうなっているんだ?成果が出ていないじゃないか?」
まるで他人事のような口調で、詰められる。
そもそも、トップがDXで何をしたいかイメージが描けていない。そのイメージを描くところから推進者に雑にマル投げされる。
トップも一緒に考えてくれるならまだしも、「俺にDXのイメージを描かさせるのがお前たちの仕事だ!」みたいな態度でふんぞり返る(控えめに言って、めんどくさい)
皆、改革や変革に他人事。
「改革や変革の推進を命じるなら、せめて推進者が動きやすいようトップダウンで協力体制敷いておいてくれよ、最低限のセットアップはしてくれよ……」
こうも言いたくなるのです。
(私もサラリーマン時代、複数の大企業で改革推進、変革推進役を任され、なんどもこう思ったことがあります。「各部門への最初の説明や根回しから、チェンジエージェント(変革推進役)に丸投げですか!?」ってね。そこは経営陣である程度やっておいて欲しいものだと)
……とまあ、こういうさまざまな面倒くささが容易に想定できるものだから、会社を良く知っている人ほど「DX推進……イヤです。勘弁してください!」と思ってしまうのです。そして、その無駄な面倒くささをトップや経営陣が排除しようともしない。
(PTA役員や、地域の自治会長になりたがらない人が多い構造とも似ている気がします)
DXといいますが、デジタル以前の組織カルチャーや協力体制の問題なのです。
ところで改革推進者や変革推進者が感じるこの違和感。
私は、小学生の時に感じた「あのモヤモヤ」と重なるなと思いました。
そう、ドラクエ!
ドラクエの主人公(プレーヤー)である勇者は、ある日突然国王に呼ばれ「魔王を倒し、平和を取り戻せ!」と大仕事を無茶ぶり、丸投げされます。
国王から手渡されるのは、なけなしの軍資金と布の服とこん棒程度。
おいおい正気かよ。なんたる低予算。
王様、あなたは本当に平和を取り戻したい気があるのですか?
国民の信頼失うから、「魔物と戦っています」感出したいだけちゃう? などと変な勘繰りさえしてしまう訳です。
そうはいっても、国の懐事情もあるのでしょう。魔物にやられまくっている国家であるならなおのこと、財政が豊かなハズもない。
そう自分を納得させつつ旅に出るのですが、旅先での対応がこれまた理解に苦しむ。
・勇者一行に塩対応を浴びせる、町の人や村人たち
・手持ちの所持金がないと宿泊すらさせてもらえない
・「ここから先には通さん!帰れ!」と頑なに行く手を阻む兵士たち
ええっ? 国王、各自治体や関係各国に話通していないの?
こちとら、トップダウンの特命ミッションを受けて命がけで戦っているのですよ? なのに、なにその塩対応。
そもそも普通、国王トップダウンで協力要請しておくものでしょう。
なんか、話おかしくないですか? というか、この国のガバナンスいったいどうなっているのよ……
……とまあ、ドラクエをプレイしていた当時感じた「あの理不尽さ」「不可解さ」が蘇る訳です。変革推進、改革推進などの仕事をしていると。
(とはいえ、私は個人的にはそんな理不尽体験も含めて、変革推進、改革推進の仕事は好きで楽しんでいました。ドラクエのようなRPG好きな人には、DX推進向いているのかもしれません(笑)⇒いま、この記事を書いていて気づきました)
(加えて、私は中途入社直後に変革推進役・改革推進役を仰せつかることが多かったのですが、それも分かる気がしました。組織に染まっていない、フレッシュな人の方が思いきったことをできるのもあるとは思います。それ以前に、組織の内情をまだよく知らないがゆえにトップや現場との対話や調整が億劫にならない、見るもの聞くもの新しく好奇心で向き合うことができる、バイアスがない状態でものごとに向き合うことができる。その「フレッシャーズ・ハイ」みたいな勢いがプラスに働いているのかもしれません)
あ、ちなみに私こんな本も書いています↓
『ドラクエに学ぶチームマネジメント』
本気でDX推進、変革推進をするならば、(日経新聞のインタビューでも私がお答えしたように)人事制度改革、管理職や社員のスキルアップへの投資ももちろん大事ですが……
・トップの本気と覚悟
・トップダウンのメッセージングや各部門への協力体制の整備
・推進組織への権限移譲
これらも必須だと感じています。
推進者が行く先々で塩対応を浴びせられるような、「貧乏くじ」をひかせるような仕事だから、誰もやりたがらないのです。
経営者が自分が傷つきたくない、悪者になりたくないから自らプロパー&ネイティブな抵抗勢力に毅然と接しようとしない ⇒変革推進者にその役回りをマル投げして泥をかぶらせる って構造もありますね。要は経営陣の覚悟がない。それじゃ、組織は変わりませんって。
改革推進、変革推進の現場からは以上です。
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