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ネガティブ・ケイパビリティ~大企業もスタートアップも持ち合わせて欲しい「じっくり答えを出す呼吸」

今日は僕が「ネガティブ・ケイパビリティ」騒いでいる背景や思いを綴ります。


1.「大企業/JTCはスピード感がない!」 気持ちはわかるけれども……


「大企業/JTC(※)はスピード感がない」
このような嘆きや批判の声を良く聞きます。
(僕も大企業勤務時代、自社や自部署のスピード感のなさにイラっとしたことも幾度となくあります)

「スタートアップ企業は拙速すぎる」
一方で、このような批判や悲痛の叫びもまた良く聞きます。

そうはいってもそれぞれの事情がある訳で、自分たちの主義主張やリズムだけを押し付けようとしてもうまくいかない。

僕はどちらの言い分も正しく、どちらもあり方を正しく見直す必要があると強く思います。

そして、このようなギクシャクや、自浄不全ネガティブ・ケイパビリティ欠如により加速しているとも。

※JTCとは
Japanese Traditional Companiesの略。日本の大企業や伝統企業(および官公庁組織)

JTCとは

2.ネガティブ・ケイパビリティとは

ネガティブ・ケイパビリティとは、一言で言えば「答えを急ぎ過ぎない行動習慣」や「なんでもすぐ解決しようとしない能力」です。

・相手の事情も考慮し、対話によりより良い方法を模索する
・いったん立ち止まり、自分たちのあり方を見直す
・無理強いしない
・地道な行動を積み重ね、じっくり考えながら答えを出す
・余白を創り、じっくり関係構築をしたり未来の芽を育てる

いずれもネガティブ・ケイパビリティが求められる所作であり、これらを欠くと相手をいたずらに傷つけ共創不全体質になってしまうのはもちろん、熟考する習慣が身につかず浅はかな組織文化が醸成されじわりじわりと共感者や協力者を遠ざけます。

ネガティブ・ケイパビリティなんて言うと、「また、英語やカタカナ用語使いやがって、日本語で言え!」など、それこそポジティブ・ケイパビリティお化けのようなせっかちな人たちから面倒くさいこと言われることも想定されます。僕は、以下のような言い換えもしています。

「急がば回れ」
「急いては事を仕損じる」

ネガティブ・ケイパビリティを言い換えると(例その1)

あ、そういえば江戸時代を築いたあの将軍はこんな一言を残したとされていますね。

「鳴かぬなら、鳴くまで待とうホトトギス」

ネガティブ・ケイパビリティを言い換えると(例その2)

ここからは、大企業/JTC、スタートアップ/メガベンチャー企業、それぞれにもの申してまいります。

3.大企業/JTCにもの申す!

僕が大企業/JTCに強く言いたいこと2つ!

(1)そうはいっても、意思決定を早くする改善と努力を!
大組織であればこそ、意思決定に時間がかかるのはやむを得ない面も多々あります(僕も大企業出身者なのでよーくわかります)。
とはいえその状態に甘んじない、開き直らない!

自組織のあり方、慣習やプロセスを俯瞰し、改めるべきところは改める。
権限移譲の仕方やワークフローなどはもちろん、形式的な会議や資料作成、紙ハンコ文化およびその名残の慣習、など改善できるものやなくせるものはたくさんあります。
以下、大企業/JTCに目立つ行動特性を振り返るための童話もよろしければ参考にしてみてください。


(2)余白を削らない!
大企業/JTCの強みであり良さの一つに、余白があります。
目先の売り上げを必死で確保しなければならない、スタートアップとの大きな差別化要素の一つはそこです。

なのに、最近大企業/JTCもその余白をゴリゴリと削り、チャレンジやトライを妨げている。「それ儲かるの?」「何の意味があるの?」など、無粋な質問攻めにする。じっくりと変化を育て、じっくりと答えを出す余裕を削ってしまっている。なんとも、もったいない。
目先の目に見える成果や効率だけを重視する。
やがてなんの深みも面白みもない組織になり、やがてコモディティ化(陳腐化)し競争力も失うでしょう。

目先の利益だけを求める株主・投資家に振り回される事情もわかりますが、ビジョン・ミッション・バリュー・パーパスを今一度振り返り、余白を死守し、未来に向けた時間の確保と投資を。

4.スタートアップ/メガベンチャー企業にもの申す!

続いて、スターチアップ/メガベンチャー企業に言いたいこと2つ!

(1)いったん落ち着こう!
なんでもすぐやればよい、すぐ答えを出せばよい、ついてこれない相手は切り捨てればよい。そのような発想で突っ走りすぎていないでしょうか?

自分たちのスピードだけ、都合だけを押し付けようとして相手(顧客やお取引先、自社メンバー)を傷つけていないか?

「急成長」の同調圧力で、自分たちの思い通りにならない相手を無理やりねじ伏せたり、切り捨てたりしてないか?

当初は、創業メンバーだけの学生サークルのノリで「ウェーーーイ」で進めていてなんとかなるかもしれない。ところが組織の規模が大きくなり、さまざま(ダイバーシティ)な人たちを仲間や顧客にして事業を展開するステージにおいてはそのやり方を改める必要があります。

急成長の同調圧力が強すぎ悪気なくモーレツ×内向きが加速し、モラル崩壊やガバナンス崩壊が起こり、不祥事→出血がとまらない状態に。その状況に陥る企業や業界は、最近でも枚挙に暇がありません。

(急成長が急逝長になっていません?)

(2)対話の能力と習慣を身につけよう!
そうならないためにも、対話の能力と習慣を身につける。
自社や自組織の正義や合理性だけを押し付けるのではなく、相手の事情も丁寧に理解し、尊重し、お互いのリズムで仕事を進める

共創とはまさにその所作を言いますが、共創には対話が不可欠です(雑な1on1ミーティングを、マネージャーと担当者だけでひたすら繰り返して対話した気になっていませんか?)。

経営幹部はもちろん、少なくとも管理職やリーダークラスの人たちは対話トレーニングなどを受けるべきでしょう。

えっ、「そんなヒマはない?」「そんなことしていくら儲かるの?」ですって? だから、そういうことを言っているから……

なお、僕がネガティブ・ケイパビリティに関心を持ち始めたきっかけは、ちょうど1年前、2024年2月の和歌山でのこのワーケーション体験にあります。

5.皆さん、僕に力貸してください!

僕はどうも近年のポジティブ・ケイパビリティ一辺倒の風潮といいましょうか、スピードと目先の効率性や急成長ばかりが善しとされる潮流に大きな違和感と危機感を覚えています。それが、余裕や余白を奪い、人々のメンタルコンディションも悪くし、世の中をギスギスさせる。多様なステークホルダーへの思いやりや共創を遠ざける。

このままでいいのか世界。

僕はネガティブ・ケイパビリティの重要性と必要性を、本気で世論形成していきたい
もちろん目先の利益確保は重要です(企業組織、地域社会それぞれにおいて)。しかし、それだけではうまくない。ポジティブ・ケイパビリティとネガティブ・ケイパビリティの両輪を回す。それが、良い組織、良い地域、良い社会を創るのではないでしょうか。

書籍『「すぐに」をやめる~ネガティブ・ケイパビリティの思考習慣』より

僕は本気でネガティブ・ケイパビリティの呼吸を、組織や社会にインストールしていきたいです。このままでは日本も世界もダメになる。
そのためには、僕だけがこうして騒いでいるだけでは非力。皆さんのチカラが必要です。

それぞれの半径5m以内から、ネガティブ・ケイパビリティなる考え方を広め、共感者を増やし、あたり前の呼吸にしていきましょう。

最後にネガティブ・ケイパビリティをあなたやあなたの組織にインストールするための書籍を紹介します。是非ご一読そして回覧を。
社内読書会、部内読書会なども是非やってみてください)

僕たちあまねキャリアのサイトです。越境と共創の呼吸を日本の組織に!