SARS-CoV-2ワクチンと安全性
及びModerna社 mRNA-1273 の被験者100%が中和抗体を獲得したP1の話
というかその論文要旨をまとめて読んだよ、って話。
注意(前提?)
*医学の教育を受けていないのでこれは一般人のただのメモ
*以下の論文は要旨を翻訳したものであり、転載ではない
*www.DeepL.com/Translator(無料版)の翻訳を元に一部加工
*治験は第一相〜第三相まであり、ここではP1,P2(P2a-P2b),P3と表記する
*ここで取り上げるワクチンとアビガン/レムデシビルのような治療薬は別物
*感染症名:Covid-19、ウイルス名:SARS-CoV-2
*一部、国立病院機構総合研究センターの臨床評価ガイドラインを参照
*有害事象:AE、重篤有害事象:SAE
*そもそも論文を読むのはエンタメである、という話かもしれない
先行している5つのワクチン
ワクチンは多い(臨床試験に入っているものが23種類、前臨床が140種類!)のだが、中でも下記5つのワクチン研究が先行していると言われている。
#.ワクチン名(国名-開発した会社/大学)
1. AZD1222(英-AstraZeneca & 英-Oxford)組換えアデノウイルスベクター
2. CoronaVac(中-Sinovac)不活化ワクチン
3. mRNA-1273(米-moderna & 米-NIAID)mRNAワクチン
4. Ad5-nCoV(中-CanSino & 中-BIB)組換えアデノウイルスベクター
5. BNT162b1(米-Pfizer & 独-BioNTech)mRNAワクチン
この中でも英-AstraZenecaのAZD1222が特に先行し、6/20にはブラジルにて5000人が参加するP3試験を開始、今年度中の出荷を目指している。
一方本稿で取り上げるmRNA-1273はNIAIDとmodernaのゴタゴタで一部計画に遅れが出ていた。(P3試験、7月9日開始予定→27日に;株価が6%急落)
しかし今朝方(7/15)の情報によると、このmRNA-1273のP1被験者100%が中和抗体を獲得し、その結果をNEJM(The New England Journal of Medicineという医学雑誌)に投稿した、ということだった。
(これを受けて株価が14%上昇、一時レジャー・航空系も回復した)
(なお、中国Sinovacのワクチンも600人が参加したP2の試験で90%の抗体確認を報告している)
しかしぶっちゃけ俺はトーシロなので中和抗体獲得と幾何平均抗体力価とか言われてもなにも分からん。オンアビラウンケンソワカ…。そこでこの際それは脇に置いておき、そもそもこのmRNA-1273のP1試験ってどんなのだったんだろう、というのを主に安全性の観点から読んでいく。ただ読むだけ。
mRNA-1273について
1.概要
mRNA-1273は、SARS-CoV2のスパイクタンパク質(サムネの赤い突起、S Proteinと表示されている部分)と呼ばれる部分とヒトの受容体が融合する前の構造をエンコードするmRNAワクチン。ヒト細胞で無害なスパイクタンパク質として発現し、抗原として免疫を活性化させる。
2. 開発
モデルナ社とNIAIDの研究者
3.タイムライン
5/16)P1のワクチン接種開始
7/8)P2が終了
7/27)3万人が対象のP3開始予定
詳細はこちら(モデルナ社Webサイト)
ワクチンの安全性について(P1試験について)
NEJM(The New England Journal of Medicne)に投稿された論文を見る。
(doi:10.1056/NEJMoa2022483)
[An mRNA Vaccine against SARS-CoV-2 — Preliminary Report]
→[SARS-CoV-2に対するmRNAワクチン-速報]
[方法](アブスト)
この試験では、健康な成人(18~55 歳) 45 名を対象に、mRNA-1273 のワクチン接種を 28 日間隔で 2 回、25 μg、100 μg、250 μg の投与を行う。各投与群には15人の参加者がいる。
[結果](アブスト)
1回目のワクチン接種後は、投与量が多いほど抗体反応が高くなった。2回目のワクチン接種後、力価は上昇した。2回目のワクチン接種後、血清中和活性は2つの方法で評価されたすべての参加者で検出され、その値はコントロールの回復期血清検体のパネルの分布の上半分の値と一般的に類似していた。半数以上の参加者で発生した有害事象(Solicited AE)には、疲労、悪寒、頭痛、筋肉痛、注射部位の痛みが含まれていた。全身性の有害事象は2回目のワクチン接種後、特に最高用量の接種でより一般的であり、250μg投与群の3人の参加者(21%)が1つまたはそれ以上の重篤な有害事象を報告した。
[ワクチンの安全性](本文)
特に重篤な有害事象は認められず、事前に定められた治験の中止規則を満たす案件もなかった。
25μg群の参加者のうち1人が、初回のワクチン接種に関連していると判断された一過性じんま疹という有害事象(Unsolicited AE=自発的な報告)を理由に参加を取りやめた。
初回接種後、25μg群で5名(33%)、100μg群で10名(67%)、250μg群で8名(53%)の参加者から全身性有害事象が報告された(Solicited AE=実験下の報告)が、いずれも重症度は軽度または中等度であった。全身性有害事象は2回目の接種後に多く、25μg群13人中7人(54%)、100μg群15人中15人(100%)、250μg群14人中14人(100%)(ここでは14人になっている)から報告があり、更に250μg群14人中3人(21%)が1回以上の重篤な事象を報告していた。
1回目の接種後に発熱した参加者はいなかった。2回目以降、25μg群では発熱は認められず、100μg群では6名(40%)、250μg群では8名(57%)が発熱し、250μg群では1名(最高体温39.6℃)が重症化した。250μg群の有害事象のうち1件(最高体温39.6℃)は重度(SAE)に分類された(その参加者の有害事象に関する詳細は補足資料( Supplementary Appendix)に記載)。
局所的な有害事象が発生した場合、ほとんどすべてが軽度または中等度であり、注射部位の痛みは一般的であった。両方の予防接種において、半数以上の参加者に発生した全身性および局所性の有害事象には、疲労、悪寒、頭痛、筋肉痛、注射部位の疼痛が含まれていた。グレード2以上の安全性臨床検査値およびUnsolicitedな有害事象の報告では、懸念すべきパターンは認められなかった。
雑感
まぁ当たり前だが、投与量が多いほど重篤な有害事象が報告されている。ただP3は100μgで行うそうなので比較的安心である(もし貴方がアメリカに住んでいてP3に参加するとしても)。ただSAE(重篤な有害事象)の中には発言するのが稀、というものもあるので参加者が3万人のP3で確認できるものもあるかもしれない。こればっかりは7/27以降の報告を読むしかないが。
P2は50μgと100μgでプラセボ対象実験だったらしい。こちらも結果が待たれる。個人的にはmRNAワクチンなのにここまで副作用がないのか&ここまで早く開発できるのか、という驚きがある。きっとフランスの疫学者さんも驚いてる。
人間の免疫を活性化させるので、有害事象が起こるのは起こるのだ。
死なない塩梅というのが何処にあるのか、という話なのだろう。
当然っちゃ当然だな。みんな手洗いうがいはしとこう。
また次回、抗体力価についての知恵をつけて再読したい所。
参考
/NEJMに投稿された論文
「An mRNA Vaccine against SARS-CoV-2 — Preliminary Report」DOIリンク
/国立病院機構 総合研究センター
「ワクチンの臨床評価ガイドライン」
/WHO の最新ワクチン動向のまとめ-7/14
「DRAFT landscape of COVID-19 candidate vaccines – 14 July 2020」