廃工場のなかで思う
針工場というアート作品に触れてきました。
時代の変遷の中で役目を終えた、針工場。
船を作る計画が頓挫して用途がなくなったまま30年が経過した、宇和島の船の木型。
針工場跡地に、その船の木型を据え付けたインスタレーション。
豊島の家浦岡集落にて、平成を迎える手前で閉じられたメリヤス針の製造工場跡。そこに設置されたのは、宇和島の造船所にて一度も本来の役目を果たすことなく約30年間放置されていた、鯛網漁船の船体用の木型です。
別々の記憶を背負った2つの存在が、アーティストを通して重ね合わせられ、新たな磁場となって作品空間を形成しています。
船の木型は17mほど。その大きさを実際に体感することで、想像力が強く働く気がする。
このガラス窓は当時のままなのかな。
外を覗いてみる。
覗くという行為で、過去に働いていた人達も覗いたのだろうかとふと思い浮かべる。
コンセントも追憶風に塗っている。
細部が味わい深い。
この板も船の木型の材木と関係あるのかしら。
人の手による造形と自然の経過が混然となる。
豊島の廃・針工場に、ついぞ使われ無かった宇和島の船の木型がある。
用の美ならぬ、不用がアートに。
見た事もない工場の人達のかつて仕事ぶりを想い、作られることのなかった漁船を思い浮かべる。
ある意味、これも「未知への追憶」の味わいなのかもしれない。
なんてことをぼんやりと思えた良い時間でした。
お読みいただきありがとうございました。