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#45道徳

いつもの生徒指導の話を書いていますが、今日はちょっと違って道徳の話を書きたいと思います。

私は道徳が実は好きです。なぜ好きかというと、適当な話を適当にできるからです。道徳に答えはないというのは大前提なので、そんな答えのない内容を、ある意味無責任に捉えながら授業をしているので好きなんだと思います。

今日そんな道徳がありました。最近の私の道徳の進め方は「枠を作る」ことに意識を置いて取り組んでいます。

枠とは何かというと、文章の書く構成のことを私は指しています。

まず初めに読み物資料を読んで、作者が何を伝えたかったのかを文章から抜き出したり、内容から読み取ったりという取り組みをさせます。国語のような取り組みをさせた後に、その作者の意見に対して、自分はどう思うのかということを想像して書いてもらいます。その結果、本日の議論される主発問についてどう思ったのか。どう感じたのかを考えて書いてもらうよにしています。さらに時間に余裕があれば自分の意見を必須下げて、周りの人と交流会をしてもらう形です。

今日の内容は「夜は人間以外のものの時間」という内容でした。ほんとにざっくり説明すると、「自然や生き物に対する大切にする心や謙虚な気持ち、また人間も自然の一部でしかないという思いなどに気づくことができる教材」という認識で取り組みました。

本文を読んで、作者は何を意図して書いているのか、何を伝えたいのかを抜き出して、それについて賛同できるか、賛同できないか。または新たな疑問・新たな問い・新たな思い・自分が思った内容などを書き、主発問の「畏敬の念」について考えてもらいました。

以前までは、事前の取り組みの時に、ある程度自分の中で答えを見つけて、その答えを基準に生徒へ伝えるというような授業内容だったんですが、そもそも私の意見なんてこれっぽっちもいらないので、読んだ後、自分の話す時間を減らし、とにかく生徒が考える時間だったり、書く時間だったりの作業の時間を最大限渡す取り組みに変えたんです。

そんな授業のやり方をすると、いろんな意見が飛び交うようになりました。

もちろん私の頭の中の正解と同じような答えを導き出してくる生徒もいるんですが、正直これはきれいすぎて、言い方は悪いんですが面白くないんです。その生徒も大体は私の顔色を伺って、その答えを求めて書いてきているので、実際に思考力を働かしたかというと、そんなことはない気がします。でもそんなきれいな文章を書ける子は大体賢いんですけどね。これがまた面白いし難しい。

それよりも極々少数なんですが、突拍子なことを書いてくる生徒がいます。これが私の中では面白いんです。

今日の中で1番面白かったのはAさんです。
Aさんの回答
「そもそも人間は自然のことなんて考えなくていい。作者は自然のことを考えて生活しようと言っていたが、そもそもそれ自体がおかしいと思う。私は自然のことを考えると言われても、スケールが大きすぎて無理だと思う。」

昔の私ならこれについて深く反省していたと思います。こんな内容を書かせてしまった私の授業力不足という認識になっていたと思います。なぜなら、ねらいと真逆の正解を導き出しているからです。

さらに面白かったのが、Aさん交流を経て、Bさんのの感想文です。

「Aさんの内容が面白かった。『モグラは穴を勝手に掘るし、クジラは大量の魚を食べたりする。同じように人間も存在している限り、地球に悪影響を及ぼす何らかの取り組みはすると思う。そんな人間はいなくなればいいと思うしいるならいるで素直に生きればいいと思う。』というような内容だった。これを聞いて、私もそもそも人間が主役という立ち位置にいてること自体を批判しないといけないと感じました。しかし作者は人間が主役にいてることを大前提として書いている文章に感じたので、なんだか変なモヤモヤが残ってしまいました。」

Bさんのもともとの感想は表に書かれていたんですが、裏にはこのようなAさんとの交流を経て思ったことを書いてくれていました。ちなみにAさんの表の内容は私が想像するようなある意味正解に近い文章でした。

この話の流れ...めちゃめちゃ面白くないですか?少なくとも私はそう感じました。道徳には答えがないというのを大前提に自由に会話をさせると、少数の貴重な意見が輝き放ち、そこに出会った人はさらに思考を深めていく。まさに今日の授業はこんな感じだった気がします。

私は道徳の中でとにかく思ったことや頭に浮かんだことを全部文字にして書き起こせと言っています。それがはまったのか、今日の感想文の中には"今までで1番考えた道徳の時間だった"などという言葉がたくさん書かれていました(本日の道徳はローテーションだったので、別のクラスで実施しています。私はそのクラスの教壇に立つのが今年初めて位のクラスです)。

綺麗な授業かと言われたら、そうではないかもしれませんが、道徳はこんなことができるのがとても面白い教科だなと思っています。もちろんガチガチにこちら主導でやる道徳やっていますが、私はどちらかと言うと、今日のような余白のある道徳の方が好きです。

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