映画『凍える鏡』には監督の作品への愛情と、若き日の田中圭さんのサービス精神が詰まっていた
映画『凍える鏡』は心に傷を負う青年が、複雑な葛藤を抱える母娘に出逢い再生する人間ドラマ。
2007年の上映で、田中圭さんは自己愛性パーソナリティ障害を抱える青年という難しい役どころ。
映画初主演作でもある。
田中圭さん演じる岡野瞬は自分の絵を売る青年だ。
ここで2021年の作品を振り返ろう。
哀愁しんでれら
もしも命が描けたら
総理の夫
どの作品も絵が上手な役どころだった。
とうの本人はというと…
俺うまくね?との事です笑
2021年絵心のある全く異なる人物を演じた田中圭さん。
この映画でも絵を描くシーンがたくさんみられる。
予告編
監督の語る田中圭
ありのままの自分を愛せず、常に人より優れた存在であろうとして苦悶する画家志望の青年・瞬を演じるのは、若手俳優の中でも注目度上昇中の田中圭くん。圭くん自身の透明な存在感と瞬の持つ狂おしさは、最初は対照的なもののように感じていたのですが、撮影が始まってみるとそれが自然とマッチして、とても魅力的なキャラクターになりました。
まだまだあどけない表情の田中圭さん。
激しい感情の起伏の中に見せる優しさや、人懐っこさ。
ふとした瞬間に消えてしまいそうな儚さに引き込まれる。
この作品には製作日記というものがあり監督がこの映画が出来るまでの事細かな出来事や気持ちを綴っている。
私はメイキングが好きだ。
監督がどんな思いでどんな風に作品と向き合ってこられたか。
そんな気持ちを聞いた後ではまた見方がかわったりもする。
過去何度もこの製作日記を見に行っているのだがあまりに多くて好きな記事が探せないというジレンマから、ここに田中圭さんに触れた記事をまとめておくことにした。
監督の言葉を一部抜粋しているので、是非このnoteと製作日記を行ったり来たりしてご覧いただきたい。
2006年2月19日
田中圭と初対面した監督
2006年9月27日
監督と圭さんのマネージャーとのやりとり
「20代の男の子を探してるんですけど、圭くんはお忙しいみたいだから無理でしょうね」と聞くと、「いえいえ、そんなことはありません、その映画のあとならあいています」とのお返事。以前からこの人は何故か私の映画を気にいってくれていて、機会があれば是非圭くんを、と言われていたのだが、最近はずいぶん売れっ子になっているし、条件的に難しいのではないか、と、こちらから話をするのは消極的だったのだ。しかし彼女は、作品の内容や、渡辺さんとの共演ということに関心を示してくれる。
記事のなかをみると映画やドラマと当時からスケジュールがビッシリだったことがうかがえる。
そしてこのマネージャーさんのおかげでこの作品に圭さんが出演することになったのだと思うと「マネージャーさんありがとう」と感謝したくなるのです。
スケジュール調整に苦労する監督
昨日企画書を送った田中圭くんの事務所から連絡が来て、「とても興味深い内容でした。是非やらせていただきたいです」とのこと。しかし現在のスケジュールでは、圭くんは2月10日あたりまで別の映画の撮影だという。一方、渡辺美佐子さんは2月の中旬(15、16日あたり)から芝居の稽古に入ることになっている。そうなると、この2人が同時に現場にいられる日は5日ほどしかない。これでは1本の映画を撮るのは不可能だ。せめて10日あればどうにかなるとは思うのだが、現時点では圭くんに瞬役をお願いすることは難しい。ただ、その映画のクランクアップが早まる可能性もあるらしいので、当面は様子を見ることにする。
圭くんのマネージャーさんから連絡が来て、前の映画の撮影日は、「基本は1月31日まで、ただし予備日として2月7日まで」という折衷案が浮上しているとのこと。
渡辺さんの事務所に電話して、撮影スケジュール、2月の20、21日あたりまでもらえないかと相談。「調整してみます」とのこと。もしこれが可能なら、渡辺さんと圭くんは10日以上共演できることになり、現場が成立する。
2006年11月15日
監督と田中圭の語った午後
15:00、三軒茶屋の喫茶店にて田中圭くんと顔合わせ。試写会などで以前2度ほどあいさつを交わしたことはあるが、きちんと話すのはこれが初めて。
あのドラマの収録中だったのね。
まだみれてないんだけど…
舞台挨拶でも出てきた三軒茶屋の喫茶店で役について語ったエピソード。
この日だったのか…
2006年12月25日
圭くんは1月10日からまるまるひと月、別の映画の現場に入ってしまうので、年内に一度顔合わせと本読みが出来ないかと考え、メインキャスト3人の事務所と連絡を取った結果、30日(大みそかの前日!)に、それを行なうことが決定。
本当に圭さんお忙しいよね…
おそらくこの映画って包帯クラブだよね。
包帯クラブは2007年の1月11日から撮影が始まった。
当時、大嶋監督と堤監督が田中圭を取り合っていたなんて(勝手な解釈)胸熱。
包帯クラブ
2006年12月30日
14:00~18:00、新宿某所にて「凍える鏡」の
メインキャスト顔合わせと本読み。
2007年1月8日
衣装合わせや絵の描き方指導
まだスケジュールに翻弄される監督
圭くんのマネージャーさんからは、明後日クランクインする映画の総合スケジュールがついに出たとのメールが来る。一応2月6日がアップになっているが、余談を許さない状況とのこと(あちらは予備日を含め2月10日まで欲しいと言って来てるらしい)。
それでも圭さんを諦めないでいてくれてありがとう。
2007年2月5日
衣装合わせと本読み
衣裳合わせと本読み。しかし圭くんは参加できず。予定では昨日で前の映画がクランクアップのはずだったのだが、昨日は強風のせいで撮影ができず、今日にずれ込んでしまったため。大変残念だが仕方がない。
2007年2月10日
クランクイン
圭さんのクランクインはあのシーンだったのね。
撮影2日目
撮影3日目
早めの夕食を取って、本隊は加瀬さん宅に移動。
20:00くらいから瞬の部屋のシーンを2つ撮る。
あのシーンの裏側、貴重なお話。
撮影4日目
午後からブティックホテルの室内シーンを撮影。一部スタッフが先乗りし、隣り合わせの部屋を2つリザーブする。ここからは森田このみさんが参加。「凍える鏡」は出演者の年齢が高いので、圭くんが同じ年くらいの女の子と共演するのはこのシーンくらいかも知れない。また、ここでは、何でも器用にこなす圭くんが、意外にもたつくあるアクションがあった
圭さんの苦手なもの…あれかな???
監督とのやりとり微笑ましい。
撮影6日目
歩いていた瞬が、突然積もった雪の上に寝そべるというアクションがあるのだが、一度それをやると雪に跡がついてしまうので、リハーサルもできないし、撮り直しもきかない。まさに一発勝負である。
このシーンよかったよね。
少し尖った瞬くんがまるで子どものように嬉しそうで何だかホッとした。
撮影8日目
午後からは遊戯室で、渡辺さんと圭くんが、園児たちを前にそれぞれ童話を読み聞かせるシーンを撮影。
圭さんの読み聞かせの裏側。
子ども好きなんだね。
撮影9日目
食後は、渡辺さんが圭くんに教えたことから急に広まった「数独」に若いスタッフたちが挑むが、酔っ払って頭が麻痺しているためか、元々得意でないからか、ほとんどクリアできない。けっこう脳内年齢高い??
数独で知恵熱だしたって舞台挨拶で言っていた圭さん。
みんなでやっていたんだね。
撮影11日目
撮影も後半に入り、疲れが出てきたためか、咳込んでいる人の姿が目立つ。
撮影の時、圭さんも体調を崩したとクランクアップで語っていた。
あの病院で本当に点滴してたとか…
2007年2月25日
撮影15日目クランクアップ
由里子の背信行為に激昂した瞬が、部屋を飛び出していくシーンを撮り終え、圭くんの出番はすべて終了。お疲れ様でした、の花束贈呈。
▼クランクアップ挨拶書き起こし
特典映像メイキングより
えーっと、まず皆さまお疲れ様でした。
撮影は本当、撮影期間的にもなんか感覚的にもあっという間でしたけど、えー…色々な点でご迷惑をおかけしたり…ちょっと花粉症にやられてしまったりと、本当に申し訳ありませんでした。
でも…はい。
すごく楽しかったです。
あのーあとは僕は完成を楽しみに、えー持っておりますので皆さんもこの後、あとほんの半日ほど、頑張ってください。(子どものような照れたような笑顔)
お疲れ様でした!
少し鼻を啜りながら声も枯れているのか…あまり元気ではない様子のクランクアップ。
2007年2月28日
打ち上げ
19:00~、飯田橋の由菜島にて「凍える鏡」の打ち上げ。2次会は、余力のある人たちで居酒屋のカラオケつき個室へ。
盛り上げ上手で歌の上手い圭さんのこのエピソード大好き。
2007年7月3日
初号試写
終映後は、圭くんやメインスタッフと品川駅近くの居酒屋で軽く打ち上げ。ちなみに圭くんの出ている「牛に願いを」は今日が放送開始。数日後からはまたロケで北海道に向かうとのことであった。
この後かっちゃんだったのね…
かっちゃん大好き。
牛に願いを
長野から北海道…どっちも寒かっただろうなぁ。
チラシデザインのラフ
どれも全く雰囲気違うよね。
黒いのだとなんだかミステリー作品のよう。
貴重なお写真見れてよかった。
監督とマネージャーさんのやりとり
芝居の稽古のあいだのお休みをすぐに埋められちゃう圭さん(笑)
ファイト!!
チラシ完成
これに決定!!
うん。しっくりくるね。
2007年11月30日
完成披露試写
圭くんとともに某web媒体の取材を受ける。彼と作品の話をするなんていうのも実に久しぶりだったが、圭くんは私が忘れてしまっている現場前や現場中のエピソードをいろいろと披露してくれた。三軒茶屋の喫茶店で瞬のキャラクターについて長時間話しをしたのは覚えているのだが、その時に「圭くんて大人だねえ~」と言ったことなど、さっぱり記憶になかった。
DVDの特典映像にも納められている完成披露試写会。
スタッフの名前を全て覚えていた事や、数独で知恵熱を出したことなどが語られていた。
「僕は数独のやりすぎで知恵熱を出してしまったのであまり大きな声で言えない…」って…気まずそうな圭さん。
取材記事
基本的に僕の芝居は、その人の気持ちを理解して、自分に引っ張りこむんで、役に近づくというよりも、その役を自分に近づける感じなんですよね。瞬くんの場合は、母親との関係性などは僕と全然違うんで、僕に引き寄せたところで、分かったふりをしているだけなんじゃないかと思って。それは瞬くんに対しても失礼だなと思ったので、嫌だったんですよ。
もちろんセリフも入ってるし、動きも分かっているんだけど、それだけでは気持ちが追い付かない気がして。とにかく台本を何度も何度も読み続けてましたね。
他の雑誌の取材でも、今までにない程悩んだと書いてあった。
取材記事
監督は田中さんを起用した理由について「その前の作品のときから圭くんで、という話はあったんです。でもそのときは残念ながら実現しなかった。今回の作品は、最初の段階では主人公は30代の役者志望の男だったんです。でも、リアリティを求めていくと、もっと若い男の方がピッタリきた。そこで思い浮かんだのが圭くんだったんです。そこからは常に圭くんの顔を頭の中に浮かべながら脚本を完成させていきました
ここには納めきれなかったが、製作日記にはどんどん物語の内容が変わっていく様子も書かれている。
渡辺美佐子さんも困惑するほどに当初の予定とは変わっていった。
この製作日記、本当に全記事見ていただきたい。
2007年12月19日
初舞台を観劇した監督
今回のお芝居は、圭くんにとって文字通りの初舞台だったが、そういう気負いは少しも感じさせず、彼はどこまでも自然体なのが好ましかった。
2008年1月4日
新年会
30日まで舞台をやっていた田中圭くんも駆けつけにぎやかなひとときとなった。
舞台が終わってすぐでもかけつけて、さらにマジックで盛り上げる。
本当にサービス精神と愛の塊。
そしてこんな貴重な写真が見られる製作日記、ありがたい。
監督の語る田中圭
あと、瞬が感情を爆発させるシーンについては、「彼の怒りの表情の奥に悲しみが見えたんですが、あれは、そういう演出をされたんですか?」なんて聞かれて困ってしまった。ああいう微妙な表情は、そこまで細かく演出したわけではなく、ひとえに圭くんの役作りのたまものなのだ。
台詞はなくても目で語る演技はこの頃からだったのね。
2008年2月1日
初日舞台挨拶
26日(土)は初日舞台挨拶があり、
田中圭くん、冨樫 真さんとにぎやかにスタート。
こちらも特典映像に収録。
「皆さん映画を観た後で疲れてると思うので、ここで僕が一発ギャグを…なんで止めてくれないんですか!」ノリノリな圭さん。
終始リラックスして楽しそう。
風邪をひいてしまい、病院のシーンは点滴を打った後だった事などを語っていた。
監督が圭さんに対して「編集していて、あぁ良い芝居してるって思った」と語り、現場では気づいてなかったの?と圭さんが突っ込んだりと、なんとも和気藹々とした雰囲気。
少しだけれど、メイキングも入った特典映像はレンタル品にもついているので、是非!
私は円盤を手に入れるまではTSUTAYA DISCASでレンタルして見ていました。
大阪公開初日舞台挨拶
監督のブログより
今日販売するパンフレットに圭くんと私のサインを入れることになる。圭くんは、関西バージョンということで、「おおきに」とか「まいど」といったご当地言葉を書き添えていた。あい変わらずの細かいファンサービスに頭が下がる。
写真もエピソードもいっぱいで貴重なブログ
シナリオについて
月刊「シナリオ」には、その削除部分もすべて掲載され、より詳細な瞬と由里子の対話がお読みいただけます。また、後半の山荘のシーンにも、かなりの相違があることがおわかりいただけると思います。
女神様からお借りしてシナリオも読んだが、大半がシナリオ通りという印象。
ギャラリーで絵を貶された後の瞬くんの行動が、もう少し危なっかしかったり、由里子が瞬くんにかける言葉もちょっと厳しかったりする。
公開初日舞台挨拶の言葉
公式サイトより
僕としては、一番身近な人である、家族とか親子の絆を再確認して、大切にして欲しいなと思います。親子という切っても切れない関係だからこそ「うっせー!」とか母親に言ったりもしますけど、やっぱり、一番身近な人を大切に想えないと、誰のことも大切に想えないんだろうな、と思うんです。そんなことをこの映画に教えてもらいました。
雑誌のインタビューで圭さんは
「瞬は自分しか信じてなくて他人を敬遠していたけど、人の痛みが分かるヤツだったからこそ最後は救われたんだと思う」と語っていた。
この映画を観ると毎回、子どものように純粋な瞬くんが震え涙する姿を見るたびに胸が張り裂けそうになるのだが、映画ラストの瞬くんの柔らかい表情と優しくて温かい絵に心が解けていくような気持ちになる。
時間は戻せない。
今ある幸せをもう一度見つめ直し家族のことを思い、子どもを抱きしめたくなる。
そんな素敵な作品。
大嶋拓 監督。
素敵な作品と膨大なブログや記事をありがとうございます。
瞬くんの絵を描かれた 加瀬世市さん
あのリスの絵は見つけられず…
公式サイト
製作日記の他に貴重なお写真やイベントの様子がたっぷり
予告編も入った監督のブログ
2008年2月17日
握手会に参加する監督
田中圭くんのファースト作品集の発売を記念した握手会が銀座の福家書店で開かれ、プロデューサーの露木さんとともに陣中見舞い。開始直前のあわただしい中、私まで本にサインをちょうだいする(ミーハーですな)。
サインをもらう監督。
記事の中にはサインする圭さんの写真も。
わざわざ来てくれるなんて、圭さん愛されているね。
花の周りを飛ぶ虫はいつも
あれから10年後あの時の写真集は増版された
そして2008年で更新が終わっていたこの製作日記が12年ぶりに更新された。
12年ぶりのブログ
このブログに書き込むのは、実に12年ぶりです。
田中圭くん大ブレイクのおかげで、「凍える鏡」は現在でもCSやネット配信などによって、多くの方にご覧いただいているようです。作り手としてはまさに感無量です。
2018年10月2日
監督の語る田中圭
『凍える鏡』をご覧になった方の感想などを読むと、あの時まだ20代前半だった田中圭さんの演技の巧みさを賞賛する声が多いようですが、たしかにあれだけの難役を、何の迷いもなしに、まるで、最初から岡野瞬というひとつの人格がそこに存在していたかのようにカメラの前で表現して見せてくれる圭さんの技量はただものではありません。10年前、彼を主役に抜擢した自分の選択は間違っていなかったと、密かに誇りに思ってもいます。あれから10年が過ぎ、演技にますます幅と深みが加わった田中圭さんの一層の活躍を、私も影ながら見守っている一人です。
さまざまな役を生きて来た圭さんの活躍で再び沢山の人に観られる事となったこの作品。
少ないスタッフさんの名前を全て覚え、私服を持参して撮影に臨んだ圭さん。
製作日記を読んだ後、監督のこのブログをみると胸が熱くなる。
現場が好きで、人との出会いを大事にしてきた圭さん。
こんな風に影ながら見守ってくれている監督やスタッフさんが沢山いるんだろうな。
かつてインタビューで語っていた言葉
出る作品が1つより2つの方が出会いの数も倍になる。そういう新しい出会いや経験がずっと楽しいんです。あと、単純にお声をかけていただくと、行きたくなっちゃうんですよね(笑)
明日、11月11日は田中圭の日。
2倍3倍と沢山の縁を繋ぎ、同業者でも驚くほどの仕事量で役を縫いながら生きてくれた田中圭さん。
圭さんの出演作を観て泣いたり笑ったり、ときめいたり、わたしはいつだって幸せです。
役者として生きる姿…これからも応援させてください。
この記事を最後まで見て下さった方へ。
圭さんの歴史が詰まったこの動画をみて田中圭さんに大きな拍手を送りましょう。
次なる役はどんな姿なのか…楽しみですね。
雨音