【小説】ひなた書房より①(全4話)
第一章
街全体が見わたせる大きな窓からは見慣れた街並みが広がっている。
空にポッカリと浮かぶ雲がゆっくりと移動して形を変える。
私はその様子をぼんやりと眺めていた。
ノックの音がして、我に帰る。
「わぁ。なんか変な感じ。結花じゃないみたい」
勢いよく入ってくるなり甲高い声で呟く。
「普通さぁ。綺麗とか言って涙ぐむもんじゃないの?」
振り返るとママの目はすでに赤く、涙がにじんでいた。
目を細めて私を見つめるその顔は美しく、真っ赤な口紅と黒い着物のアンバランスさが、より彼女の派