作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録④「ぼくら」ー
(編集・絵:佃 七緒)
勝手にはできない、けどやっぱり他の人の作品紹介をしてみる、というこのシリーズの始まり(説明)はこちらご覧ください。
小出 麻代(参加作家)
①最近気になること
窓。窓から見える風景。現在の、家の中で窓や画面を見ることがとても多い状況から、窓が気になり調べている。翻訳。この企画をきっかけに翻訳について調べ始めた。クレオールが気になっている。
②小出麻代が「勝手に紹介」する作品はこちら
小林太陽《ぼくらは今のなかで》
・ウェブサイトの写真から。
この感染症の影響下で、自分が現在置かれているzoomで話をするような状況と同じことが映像の中で起きている作品だと思った。写真に写る2つの画面で手のグーとパーが出されていて、何らかのコミュニケーションが行われていると考えた。
・テキストを読んで。
小林さんの、「翻訳」の過程で抜け落ちること・抜け落ちているものへ関心が書かれていた。そのテキストを読んで、自分が仕事でzoomを使う際に、相手が見えないときに不安を感じる今の状況をやはり強く思い出す。
・映像の中で、ゆっくりとしたコミュニケーションが進んでいく。
途中で、映像の中の二人にとって、手掛かりとなるのが、間にいる(らしい)通訳者だけだということがわかってくる。だからこそ、通訳者の人の誤訳によって、二人の関係性が破綻もする。結局二人のコミュニケーションが取れているのかわからない。
・タイトル《ぼくらは今のなかで》について。
「ぼくたち」「わたしたち」という言葉は、どこまでを含むのか範囲がわからず、自分では使うのを躊躇してしまう。見ている途中で「ぼくら」が「ぼく」になる瞬間がある。「ぼくらは今のなかで」というタイトルは、「ぼくは今のなかで」も中に含めたタイトルの付け方に思えて、おもしろいと思った。
・2019年作であることへの驚き。
近作だけどつい最近制作したものではなく、でもまさに今みんなに起きている状況だと思ったから驚いた。ん?とわからないまま見ているうちに、不穏な空気を察知しだした。徐々に内容も、自分の置かれた状況も考え始める、じわじわくる作品。