ALLNIGHT HAPS2020 翻訳するディスタンシング

京都HAPSの企画として行われるアートの展覧会ALLNIGHT HAPS。今年度の企画「翻訳するディスタンシング」では、アートと翻訳、日本語と他言語、アーティストと言葉、鑑賞することと読むことなど、いろいろな視点で企画のプロセスを公開していきます。企画者:佃 七緒

ALLNIGHT HAPS2020 翻訳するディスタンシング

京都HAPSの企画として行われるアートの展覧会ALLNIGHT HAPS。今年度の企画「翻訳するディスタンシング」では、アートと翻訳、日本語と他言語、アーティストと言葉、鑑賞することと読むことなど、いろいろな視点で企画のプロセスを公開していきます。企画者:佃 七緒

最近の記事

聞き取りの中で考える「翻訳」②植物探検家・長谷圭祐さん(2/2)

この前の記事はこちら。 3. 植物の名前について 植物の学名には、ラテン語(またはラテン語を元とした名称)が使われるそうです。ラテン語は、現在では日常的に使われる言語では(ほぼ)ないため、誰にとっても自分のものではない言語ということで使われている、とのことでした。 (佃が調べたこと: 植物の学名・命名に関しては、「国際藻類・菌類・植物命名規約」という国際基準があり、植物に関する研究論文では、6年ごとに改訂されるこの規約に従って、学名が取り扱われます。かつてはこの規約の決

    • 聞き取りの中で考える「翻訳」②植物探検家・長谷圭祐さん(1/2)

      本企画では、参加作家5名の翻訳のための対話のかたわらで、企画者の佃が気になる方とお話をしながら「翻訳」について考える聞き取りも行っています。 今回、参加作家にご協力いただく方を探すため、植物、特に熱帯の植物と日々接しておられる方を探していたところ、熱帯植物の普及や流通に関わっておられる長谷圭祐さんとお話することができました。 今回、長谷さんには突然、「アートと翻訳の企画です」とメールをお送りしたにもかかわらず、お話する機会をくださり、企画への情報のご提供や、佃の雑多な質問

      • 聞き取りの中で考える「翻訳」①建築家印牧洋介さん(3/3)

        (以下はこの前の2記事) 6. 忘れていたこと佃: ここまで印牧さんに、建築の分野で「翻訳」と関わりうるテーマをいくつかお話いただきました。普段とは異なる引き出し方、まとめ方でお話しいただいたと思うのですが、いかがでしたか? 印牧: 建築は施工時に自分は手を動かさない点、また建設後には動かないため媒体で表現するのが前提である点で、他の分野に比較して翻訳と呼べそうな工程が必然的に多くなることを話しながら改めて思いました。 佃: そうですね、印牧さんのお話を聞いていて、言わ

        • 聞き取りの中で考える「翻訳」①建築家印牧洋介さん(2/3)

          3. スケール感によるゆらぎ ー アルヴァロ・シザのサンタマリア教会の扉身体に染み付いた感覚の違いによる空間認識の「揺らぎ」について考えてみると、この建築を訪れた時のことも思い出しました。 ポルトガルのマルコ・デ・カナヴェゼス(ポルトの東)にある、アルヴァロ・シザ Álvaro Siza Vieira(1933-)という建築家が建てたサンタマリア教会 IGREJA DE SANTA MARIA(1996)です。 この外観からは用途が不明な建物は、正面に約10メートルの

          聞き取りの中で考える「翻訳」①建築家印牧洋介さん(1/3)

          このたび本企画の主となる参加作家たちの対話を追う一方で、企画者の佃も、「翻訳」という言葉をお話のきっかけとして、様々にお話をする機会をいただくことにしました。 もともと本企画は、企画者としてなぜこの企画を立てたのか、「翻訳」ということを通して何を知って何につなげていきたいのか、実ははっきりとはわからないまま、一人ではわからない気がしてやり始めた企画です。日々のCOVID-19や政治状況の変化など、流れゆく情報量も多く、言葉にしようと息を吸ったら溺れそう。によくなる。 「

          聞き取りの中で考える「翻訳」①建築家印牧洋介さん(1/3)

          作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録⑦「好きな花と言いつつも他人」ー

          (編集・絵:佃 七緒) 勝手にはできない、けどやっぱり他の人の作品紹介をしてみる、というこのシリーズの始まり(説明)はこちらご覧ください。 小林 太陽(参加作家)①最近気になること時間の速度。早い。やばい。最近生活が変わったことで、時間が過ぎるのが早く、ある日突然変化に気づいたりするようになっている。この時間をちゃんと経験したことを何か残したい。ノスタルジーではなく。過去にも未来にも同じように時間がある。 ②小林太陽が「勝手に紹介」する作品はこちら長谷川由貴《他人の肖像

          作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録⑦「好きな花と言いつつも他人」ー

          作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録⑥「人間関係が上滑りする」ー

          (編集・絵:佃 七緒) 勝手にはできない、けどやっぱり他の人の作品紹介をしてみる、というこのシリーズの始まり(説明)はこちらご覧ください。 長谷川 由貴(参加作家)①最近気になること植物園の歴史。園芸の歴史。なぜ植物をわざわざ育てるのか。そこから発展して、植民地支配、日本の戦後史、差別問題、などにも広がっていく。 ②長谷川由貴が「勝手に紹介」する作品はこちら​西尾 佳織《ヨブ呼んでるよ》(鳥公園舞台作品) ・鳥公園(西尾さんの主催する劇団)のページを見て、 とりあえず演

          作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録⑥「人間関係が上滑りする」ー

          作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録⑤「隙間がある」ー

          (編集・絵:佃 七緒) 勝手にはできない、けどやっぱり他の人の作品紹介をしてみる、というこのシリーズの始まり(説明)はこちらご覧ください。 西尾 佳織(参加作家) ①最近気になることお金。断る(NOと言う)こと。どちらも自分の生活の変化から興味が出てきている。子どもが生まれて、どうしても自分のために使えない時間が増えてきたことで、今までだったらOKしていたことも断ったりする。そういう変化はどういうことなのか気になる。 ②西尾佳織が「勝手に紹介」する作品はこちら小出麻代 個

          作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録⑤「隙間がある」ー

          作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録④「ぼくら」ー

          (編集・絵:佃 七緒) 勝手にはできない、けどやっぱり他の人の作品紹介をしてみる、というこのシリーズの始まり(説明)はこちらご覧ください。 小出 麻代(参加作家)①最近気になること窓。窓から見える風景。現在の、家の中で窓や画面を見ることがとても多い状況から、窓が気になり調べている。翻訳。この企画をきっかけに翻訳について調べ始めた。クレオールが気になっている。 ②小出麻代が「勝手に紹介」する作品はこちら小林太陽《ぼくらは今のなかで》 ・ウェブサイトの写真から。 この感染症

          作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録④「ぼくら」ー

          作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録③「時計回りに回す」ー

          (編集・絵:佃 七緒) 勝手にはできない、けどやっぱり他の人の作品紹介をしてみる、というこのシリーズの始まり(説明)はこちらご覧ください。 村上 美樹(参加作家)①最近気になること旅。もともと好きだったが、今気軽にはできないことで余計に気になっている。特に、時間。現在外国を旅させている作品があり、その作品が旅している移動の時間などを、自分では実際に体験できず、別の時間が流れていると感じる。 ②村上美樹が「勝手に紹介」する作品はこちら佃 七緒《てとよふむはゆなたさかあ》

          作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録③「時計回りに回す」ー

          作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録②「制限されていること」ー

          (編集・絵:佃 七緒) 勝手にはできない、けどやっぱり他の人の作品紹介をしてみる、というこのシリーズの始まり(説明)はこちらご覧ください。 佃 七緒(企画者)①最近気になること建築家の乾久美子さん。 デザインを見せないデザイン。光と影を添えるような装飾。 ②佃七緒が「勝手に紹介」する作品はこちら村上美樹《新しい道具(また起こるかもしれない未来を可能な限り起こらないようにするための)》 (※正しくは「新しい道具」を打消し。重要!noteは打消し線が出ないのでしょうか)

          作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録②「制限されていること」ー

          作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録①ー

          企画参加作家が決定してから1か月ほどが経ちました。作家のみなさんをいまだ紹介していません。 この企画の趣旨が「翻訳」をいろんな幅で取り扱ってみる、というところにもあるため、企画者の佃が一方的に作家や作家の作品について書くこと、それ自体がひとつの「翻訳」になります。書くのか?書かないのか? 悩んだまま7月末に、5名の作家、 小出麻代、小林太陽、西尾佳織、 長谷川由貴、村上美樹 との第一回ミーティングを行いました。 自己紹介は大体みんな(特に私が)苦手なので省略。代わ

          作家の紹介を勝手にできない。ー第1回ミーティングの記録①ー

          ALLNIGHT HAPSとは?

          皆さまこんにちは、一般社団法人HAPSの沢田朔(さわだ さく)と申します。 ALLNIGHT HAPSの担当者として、企画者の佃さんと共同で、「翻訳するディスタンシング」を運営してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。 まず僕からは、ALLNIGHT HAPSというものについて説明させてください。 これは京都市東山区、六波羅蜜寺にほど近いHAPSのオフィス1階で、夜間に展示を行う企画です。HAPSのオフィスは典型的な京町家のつくりで、東山区を南北に走る大和大路通に面

          誰と話をするのか?

          公募終了まで10日を切りました。企画者の佃です。 今回は、企画の進め方について少しご質問にお答えします。 アートの展覧会やプロジェクトの公募に作家が応募するとき、企画自体に興味があるという理由以外に、関係者を見て応募する、ということがあると思います。公募段階で、審査員やプロジェクトのメイン作家として、しっかりとした経歴のある作家や評論家、キュレーターなどアート関係の方を提示し、作家側が、「この人に自分の資料を見て欲しい!一緒に展示したい!売り込みたい!一言欲しい!」などの気

          あまりはっきりとした道筋のないプロジェクトであることをお知らせします。

          企画者の佃です。「翻訳するディスタンス」公募を始めて数日経ちました。 いくつかご質問を受けることがあったため、HAPS沢田さんと徐々に企画説明に補足をしていこうと思います。 ちなみに、HAPSウェブサイトの方の企画ページも、ありがたくも日々少しずつHAPS沢田さんにより内容に手が加えられ、この企画がいかにじりじり探りながら進んでいるかがよくわかります。 HAPS沢田さんにした説明とはまた違いますが、この企画を始めた理由は今日の考えでは大まかに四つ。 1.作家が「翻訳する

          あまりはっきりとした道筋のないプロジェクトであることをお知らせします。

          翻訳するディスタンシングって?

          京都市東山区にあるHAPS事務所一階ギャラリーを拠点として行われるALLNIGHT HAPS。2020年度は佃 七緒によるプロジェクト、「翻訳するディスタンシング」を、アートと翻訳をテーマに展開します。 公募で選ばれたアーティスト数名の、制作・作品にまつわるテキストを、協力者と共に母国語から別の言語へと翻訳を試みます。またそのプロセスを経たアーティストによる展覧会シリーズを2021年1月から3月にかけて開催予定。 ALLNIGHT HAPS 2020「翻訳するディスタンシ

          翻訳するディスタンシングって?