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聞き取りの中で考える「翻訳」②植物探検家・長谷圭祐さん(1/2)

本企画では、参加作家5名の翻訳のための対話のかたわらで、企画者の佃が気になる方とお話をしながら「翻訳」について考える聞き取りも行っています。

今回、参加作家にご協力いただく方を探すため、植物、特に熱帯の植物と日々接しておられる方を探していたところ、熱帯植物の普及や流通に関わっておられる長谷圭祐さんとお話することができました。

今回、長谷さんには突然、「アートと翻訳の企画です」とメールをお送りしたにもかかわらず、お話する機会をくださり、企画への情報のご提供や、佃の雑多な質問に丁寧にお答えいただき、大変感謝いたします。

長谷さんとのお話しの中で、いくつか今回の企画で扱う「翻訳」と関わると感じた部分を、長谷さんの了解を得て、企画の記録のひとつとして残したいと思います。​

0. 長谷圭祐さんについて。

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長谷圭祐(はせ・けいすけ)さん
東南アジアを中心に世界中の熱帯雨林をめぐる植物探検家。学生の頃から活動しており、これまでに新種や未記載種を数多く発見している。大阪で開催される植物の即売イベント『BORDERBREAK!!』『天下一植物界』の主催者でもあり、熱心なファンが全国から詰めかける。




本企画の方針として「美術や翻訳を専門とする方に限らずご協力いただける方を探したい」と考えていたため、「関西、熱帯、植物」というものすごくざっくりとしたウェブ検索をしていたところ、長谷さんの主催するイベント「天下一植物界」のウェブサイトにたどり着きました。関西に長くいるにも関わらず、こんな大きなイベントの情報を見逃していたのか!と衝撃を受け、主催者はどんな方なんだろう、と調べたことが、長谷さんの活動を知るきっかけとなりました。

天下一植物界https://no1plantae.com/

全体2-2

「天下一植物界」では、熱帯植物に限らずいろいろな植物が販売され、販売とは異なるかたちで植物に関わる方々なども多数参加されています。

花宇宙2

本年は、第二回が2020年6月に開催予定でしたが、この感染症の影響下で残念ながら中止となってしまいました。昨年の会場の様子などを見て、次の開催を楽しみにすることにします。

長谷さんは、日本にて植物の流通に携わるだけでなく、熱帯、特にインドネシアなど東南アジアの熱帯に、自ら植物を探しに行かれる植物探検家の活動をされています。

(長谷さんの活動の詳細は、私の文章よりBRUTUS 2015年 9/15号2018 7/1号2019年7/15号 の「珍奇植物」特集の方がとてもよいです。)

以下、長谷さんの植物の探検の様子などをお聞きする中で、「翻訳」と関連して特に気になったことを抜き出していきます。

1. 「粘土ヘラ」が「植物の実」に見えること

ヘラ

長谷さんとお話しする際に、せっかくなので「私の持っている何か熱帯植物由来のものを!」と思い、ペルーのアマゾン地域の村で使っている粘土ヘラをお見せしました。長谷さんの専門範囲の植物ではないとのことでしたが、「あの系統の植物かなー」と思い浮かべておられるご様子でした。

焼き物の制作を学んだ私には、ヘラの元になる植物の実の状態を現地で見ていても、どちらかというと「ヘラ状の道具」ということだったり、「乾かすとヘラにできるくらい硬いが加工しやすいもの」という道具や素材の観点で関心を持っていたように思います。あらためて久しぶりにこの粘土ヘラを見ても、ペルーの地べたで焼き物を作っていたおばちゃんに、自分の焼き物を「形が悪い」と無理やり作り直されたことなどを思い出していました。

一方ヘラを眺める長谷さんを見ていると、「ヘラ」を見ているというより、ヘラになった実が「まだ実だったとき」のことを想像されているように見えます。長谷さんの見たり聞いたりしたことのある、何らかの熱帯の植物の実や、その植物が育つような環境の空気感だったりが見えておられるのかもしれません。

ちなみにその後長谷さんに調べていただいたところ、このヘラの元の植物は、ヒョウタンノキ(Crescentia cujete)ノウゼンカズラ科という、民芸品を作ることなどにも使われる植物だということがわかりました。

2. Google Earth の緑色の見え方

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別のインタビューにも書かれていて気になっていた「熱帯地域に探検に行くときによくGoogle Earthを使う」ということについてお聞きました。

長谷さんは、まだ人の手のあまり入っていない地域に探検に行かれるので、事前に得られる現地情報が少ない場合には、Google Earthが役立つということでした。森は、時間が立つと開拓されてなくなっていることもあるので、地図より情報の更新頻度の高いGoogle Earthは、植物探検をされる方々にとって、現地の「今の状況」を知るツールだそうです。

事前に目的地までの道の様子を確認したり、道がなくなる緑色の部分などを見て、この辺りはまだ人が入っていないな、この緑の感じは何かありそうだな、という判断をされているとのことでした。

私は制作の関心上、人の少ない地域や森の近くなどを狙って滞在しに行くことはありますが、森自体ではなく、自然環境と接しながら生活している「人」の様子を見たいと思って場所を探しています。なので、事前にGoogle EarthよりGoogle Mapで、町や村の中のストリートビューから、村の境界と思われる端っこの方までを見たりはします。

ただ、緑色の部分については「山の中の森かな、バナナの畑かな?平らな草地かな、農地かな?」くらいの判断をする程度で、ほとんど見ていない。主に「人」の活動の延長の部分を見ている気がします。

ここまでお話をして、長谷さんが見る「植物の実」を私は「機能を持った道具」として見たり、長谷さんが「緑のあるところ」として見ている衛星写真を、私は「人のいない部分」と見ていたり、ある種の「読み(とれる)物」を、まったく違う目線で見ているようだ、と考えていました。そもそも見る目的や関心が違うと、読み取る「語彙」が違うのだなと思います。

(2/2につづく)


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