謎の荷物がうちに寄り道してくれたのはメッセージでした。
出先から帰ると玄関前に置かれた謎の荷物。
銀色の保冷シートにくるまれたそれは高さ約50㎝ほど。
シートをめくると発砲スチロールが2段になっていた。
様子から察するに生鮮食品であることに違いない。
はて? なんぞや?
自分で頼んだ覚えはないので、明らかに配達ミスなことは確か。
どーしようか…。
荷物のどこかに宛先が書いてあればそこへ持っていくこともできたのだけれど何もない。
が、シートをめくったところに「斎藤〇〇様」というシールが貼ってあった。でも名前だけ。住所はない。
うーん、困った…。
なすすべがなくちょっとの間放置してみることにした。
そのうち配送会社が間違いに氣づき取り戻しに来るだろう、そんな希望とともに。
次の日の朝。
玄関を開けると荷物はまだそこに。
もぉー。
斎藤さーん、お宅の荷物うちにありますよ!!
しばし荷物を前に考えを巡らしたものの何も解決策は思い浮かばないのでひとまず管理人さんに相談することにした。
でも管理人さんも困るやろうなぁ。
「こちらに言われても…」みたいになったらどーしよっか?
その時は斎藤さんの部屋番号を聞いて私がそこまで持っていくか。
でも部屋番号分からんかったら?
その時は交番?
交番って近所にあったっけ?
お巡りさんそんなことで来てくれるんやろか……。
などと考えながら管理人さんのいる1階へ行くのにエレベーター前に行くと点検中の札!
マジかーーー。
ここは15階。
点検終了までは2時間もある。
はーー行くしかない。
最近右膝に謎の痛みがあるんやけどなぁ…。
そんな思いとともにめったに見ない各階の景色を見ながら降りていくと、なんと!
例の荷物と同じ姿かたちをしたものが2階と3階の玄関前に置かれているではないの!
しかもどちらも私と同じ端っこの部屋、205号室と305号室。
配達員の方、角部屋という共通点だけで間違ったんかな?
にしても1505号室と間違うか?
でもまぁこれでうちのマンションの斎藤さんのものであることは確定してホッとした。
そうこうしているうちにようやく管理室に到着。
管理人さんにその旨を話すと「見に行きますわ」と言ってくれてその足で一緒に部屋まで行くことに。
だかしかし、今度は登り。
15階まで登るんかぁ…いよいよ右膝大丈夫やろか?
と心配していると管理人さん、点検中の作業員の方に
「○○さん、ごめん。ちょっと15階まで行きたいんよ。僕足悪くてな。上がってすぐ戻るからちょっと動かしてくれへん?」
と点検中の作業員の方に声をかけた。
えっ⁉ そんなんあり? そんなんで動かしてくれるん?
と思っていると
「はいはーい」
とあっさり許可。
管理人さんの特権か。
それとも言うたもん勝ち的な?
って言うかそんなん言うてもええんや。
で、部屋前に来た管理人さん、荷物を確認すると
「僕これ持っていきますわ」
と言ってさっさと荷物を持って去って行った。
簡単やった。
すべてのことが。
あれこれ悩んでいたことが目の前ですんなり解決していく様を見て私は思った。
物事ってホントはもっと単純なのかもしれない。
難しく考えているのは私だけで、困ったら周りの人に聞けばいいし、頼ればいい。そしたら誰かが助けてくれる。
私、何でも一人でやろうとしてたわ。
助けてもらうことなんて、助けてもらえるなんて思ってなかったわ。
どんだけ頑なやねん。
一人暮らしをしていて淋しいとか不安に思うことが時折あって。
でも周囲との壁を作っていたのは私の方で、世間は自分が思っているよりやさしかった。
もっと心をオープンに。
そんなことを教えてくれるためにあの荷物は私の所にやって来てくれたのかもしれない。
ハッポースチロールの中身、何やったんやろ?