あの時怒られた理由がいまだに分かりません。
その昔、ライター新人時代のこと。
初めての著名人取材で京都の某有名ホテルにいました。
私といえば取材に慣れておらず、しかも相手が有名人ということですごく緊張していました。
当日までにその方の著書を読み、取材の段取りを考え、カメラマンと打ち合わせをし、万全を期してその日に臨んだのですが、何をどう間違ったのか私の初取材は大コケをしてしまいます。
でもね、いまだになんでそうなったのか理由が分からないのです。
ことの顛末を記しますので、みなさんもその場に参加して考えを巡らせてみてください。
取材させていただいたのは京都の文化人、Hさん。
長年京都文化に貢献する活動をされていて、テレビ出演や講演、本を書くなど幅広く活躍されている方です。
取材場所もHさんが懇意にされているという理由からごそのホテルに決定。歴史のある老舗ホテルだったと記憶しています。
当日私は、同行してくれた会社の先輩とともに約束の時間の1時間ほど前に部屋に入り、どこに座っていただくか、マイクはどの位置がいいのかなどセッティングをしていました。
カメラマンはまだ到着しておらず、先輩が私の緊張をほぐすためにあれやこれやとジョークを言って場を和ませようとしてくれたのを覚えています。
そんなに大きな声で話していた覚えはないのですが、その準備中、誰かが部屋を訪れたらしいのですが、私たちはそれに氣づきませんでした。
それからしばらくしてカメラマンが来て、いよいよ約束の時間。
…………。
待てど暮らせどHさんは現れません。
あれ?取材時間、間違えてる?
確認するも時間はあってます。
何か不具合があったのか?
私は慌ててホテルの取材担当者に電話を入れました。
「Hさんおみえにならないのですが、何か聞いておられますか?」
すると先方がご本人に連絡をとってくれて、返ってきた答えが
「氣分を害したので今日の取材はなかったことにしてほしい」
と言うのです。
へ? まだお会いもしてないのに? どういうこと?
全く意味が分かりません。
詳しく聞くとこんな説明が。
なんでも取材に使う荷物を事前に置いておきたかったらしく、部屋を何度かノックしたのに誰も出てこなかった。
Hさんにしてみれば部屋から声は聞こえるのに無視された!と思われたようで、それにご立腹のようでした。
サーッと血の気が引き、手に汗がにじみました。
ああどうしよう。
怒らせてしまった。
取材ができないなんて…どうしたらええんやろ…。
頭が真っ白になりました。
現場経験の浅い私にはその場をどうおさめればいいかなんて皆目見当がつかずオロオロしていると、カメラマンが
「僕、迎えに行ってきますわ」
とサッと部屋を出て行ってしまいました。
私はといえば、走り去る彼の背中をただ茫然と見つめるだけで固まったまま。
このままどうなってしまうんやろ…。
そんな思いがぐるぐると駆け巡り、何をどうしてよいやら分かりません。
しばらく経って。
カメラマンはHさんを連れて戻ってきてくれました。
当然ながらHさんの表情は硬く、お話をして下さる雰囲気ではありません。
ひとまず丁寧に謝罪をし、できれば取材をさせてほしい旨をお伝えするとしぶしぶOK。
なんとか予定通り質問にお答えいただくことができました。
が、取材中Hさんは私と一切目を合わせて下さることはなく、笑顔も見ることはありませんでした。
さて、ここまでがあの日の一部始終です。
事実としては、Hさんの呼び出しに氣づかなかった。
ただそれだけのことだと思うのですが。
私にしてみたら
わざと無視するワケないやーん。
って感じなのですが…。
Hさんからすると
自分の庭のような場所でコケにされた。
とでも思われたのでしょうか?
なんでそこまで怒るのか?
未だにわからないんですよねぇ。