「IANIKA」―無駄のない生地を楽しむ。飽きないメーカーを、京都から。
<編集・記事執筆>
京都外国語大学 国際貢献学部
グローバル観光学科1回生
吉田 愛
イージーオーダーのアパレルメーカーIANIKA誕生
ファッションデザイナー・園山千恵子さんが手がけるアパレルメーカーIANIKA。通常の小売店とは異なり、お客さんが気に入ったサンプル商品をベースに、そのお客様に合わせて作る「イージーオーダー」のシステムを採用しています。たとえば半年に一回のペースで出店している百貨店のポップアップストアに来店したお客様からオーダーをもらい、ポップアップ期間終了後、ひとつひとつ製作してお渡しするという流れになっているのだそうです。また、ふだん園山さんが製作をしているアトリエに足を運ぶと、その場でオーダーすることも可能だということです。現在はネット販売もおこなっていますが、やはり一度お会いしたほうが体型にしっかりフィットした服がつくりやすいと園山さんは話します。
園山さんによると、もともとブランド名はMO2QURO(モモクロ)だったとか。MOREのMO、MODERNのMO、QUALITYのQU、ROBEのRO。しかしその後、某アイドルが出てきたため名前を変えることになり、悩んだ末IANIKAになったそうです。IANIKAの由来は、園山さんがいわゆるビジネスとしてではなく、昔ながらの商売のスタイルでやってみたいという思いからくる「商い」と、何年経っても「飽きない」を掛けてローマ字でAKINAIと表記し、それを反対読みにしたのがIANIKAなのだそうです。とっても素敵な名前ですよね。
始まりは、アパレルメーカーのパタンナー
園山さんは、もともとパタンナーとして大阪府のアパレルメーカーで働いていました。しかしあるとき、園山さんが配属されていた企画に関する部署が東京へ移転することに。園山さんにも東京へ転勤するよう辞令が出ました。しかし園山さんには家の問題もあり、またその当時はまだ女性の単身赴任というのが非常に珍しい時代だったため、園山さんはやむを得ず会社を辞めることになってしまったのだそうです。
しかし、捨てる神あれば拾う神ありではありませんが、辞職後に町屋でクリエイター募集の話をもらい、町屋でアパレルを始めたそうです。時代は空前の町屋ブーム。とはいえ当時は町屋でアパレルを営むケースは少なく、注目を浴びた園山さんのところには各方面からの取材が殺到。一気にメディアでの露出が多くなり、認知度がグングン上がりました。そこから独立したブランド「IANIKA/ MO2QURO」を立ち上げることになったのでした。それでも当時の園山さんはまだ、あくまで失業をきっかけに始めたことであり、そこまで意欲的ではなかったのだそうです。しかしある時から「乗せられて始めたにしても、自分で選択したこと。好きなファッションに関わる仕事をずっと続けられているのだから良かった」とポジティブに捉え直し、ものづくりに興味を持ってもらえるひとつの取っかかりになれば、と気持ちを切り替えたのだと話していました。
素材もデザインの一部であるという発想
園山さんにとって、洋服でもっとも大切だと考えているのがやはり素材。服飾の学校などでは、まずデザインを考える、そしてパターンを作って、素材が最後になるといいます。しかし園山さんは、商品ができるためにも、あるいはデザインをつくるためにも、まずは素材の特性を踏まえたものでなければ、それはただの形に過ぎないといいます。だから、その素材は必ずしも洋服のための素材である必要はなく、生活の一部にあるものを多く使っていても構わないと園山さんは考えています。そして、たとえばそうした発想は「撥水」「速乾」といった昨今注目されるようになった「機能素材」を使った服飾を先取りしていたとも考えられるのではないでしょうか。
そんな園山さんが実際にいちばん初めに良いなと思った素材は、やはり洋服の素材ではなく、昔から日本の生活に根付いて使われていた素材で、「蒸し布」。いわゆるあの蒸した饅頭の下に敷く布のことで、通気性が良く、天然素材で環境にも良く、しかも少し和紙っぽいのがいいのだと園山さんは語ります。そのほかにもテニスボールのフェルトっぽい生地や、お酒を濾過する濾過布なども、もらってきては何かできないか試したりもするのだそうです。このような生活の一部の素材の多くは天然素材で身体にも害がないのだとか。
服は肌に直接ふれるもの。だからこそ園山さんは、着ても身体に害がない素材をいつも探しながら作っているということです。また、気になる素材があればいろんな会社に出向いて、廃棄する廃材や端切れなどをもらってくるのだといいます。会社の人に「これを洋服に使うの!?」と驚かれることもしばしば。ご本人はそこまで強くは意識してはいないけれど、SDGsな洋服作り、究極のユニバーサルデザインになっていると感じているそうです。
デザインはあくまでシンプルですが、素材がとてもユニーク。だからこそIANIKAの生み出すファッションは「飽きない」のかもしれません。なによりお客さんに「こんな生地や、こんな素材もあるのか」と知ってもらうことができるのも嬉しいと園山さんは話してくれました。また、お客さんの層も本当に幅広く、学生などの若い世代から団塊世代の方まで、さまざまな年代の人々がそれぞれのスタイルで楽しんでもらえるブランドなのだと話す園山さん。またメインのお客さんである女性はもちろんですが男性からもかっこいいと言ってもらえるのがIANIKAの特徴だといい、商品をつくるうえで特定のターゲットは定めていないそうです。
いくつもの肩書を持つマルチクリエイター
園山さんは、IANIKAの販売以外にもさまざまな活動をされています。非常勤講師として働く服飾系専門学校ではパターンなどを指導しているそうです。またアトリエでも教室を開講。立体で作る技術を少しでも伝えていけたらという思いから始めたのだとか。いまではポップアップに来ていただいたお客さんの約半数が教室に通いたいと言ってくれるそうです。また業務委託として大学の教授からの依頼で民族衣装の再現をしたり、マイノリティーの展示会などで、LGBTQの方に向けてのジェンダーレス、エイジレスな衣装の提供を行ったりしているそうです。デザイナーとして、経営者として、そして講師として。多様な人との関わりのなかから、IANIKAのフィロソフィーやファッションにかける思い、そしてものづくりの楽しさを伝えていくことにも力を注いでいます。
わたしたちがコーデに採用したタックギャザースカート
今回わたしたちがお借りしたのは呂彩シリーズのアイテム。呂彩は、「ろいろ」と読み、呂は光沢という意味を持つそうです。ペットボトルの再生素材、ポリエステル素材を使用。ムダを出したくないという思いから、素材の幅をいっぱいに使った直線裁ちのデザインにしたそうです。軽くて着やすいのに、レザーっぽくかっこいい見た目をしているところがポイントです。
園山さんおすすめの着こなしは、ウエストに細巾ゴムが三本入っているのがアクセントになっているので、ウエストにトップスをインし、ウエストが見えるようにするコーデ。ぜひみなさんも、IANIKAのタックギャザースカートを使ったわたしたちの提案するコーデで京都の街歩きを楽しんでみてください!
店舗情報
IANIKA
住所:京都府京都市中京区姉小路東洞院東入ル笹屋町446番地 井上ビル3F
営業時間:11:00~19:00 不定休
●公式サイト:https://ianika.jp
●Instagram:https://www.instagram.com/mo2quro.ianika?igsh=MTQzejRsYzM2MGg4eQ%3D%3D&utm_source=qr
●X(旧twitter):https://x.com/mo2quro?s=11