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「吉靴房」ーきっかけは足元から

<編集・記事執筆>
京都外国語大学 国際貢献学部
グローバル観光学科2回生
島岡未侑

今回わたしたちが制作した外国人観光客向け英字フリーペーパーENJOY KYOTOでは、「京都を着よう」をテーマにわたしたち自身が京都のファッションブランドの中からいくつかのアイテムをセレクト。「Cool Modern Style」をテーマにしたコーディネートを提案しています。そのなかで吉靴房さんの「寸五五枚丈」という革靴を使わせていただきました。

そこで、吉靴房の野島孝介さんにブランド設立の経緯や寸五五枚丈について取材してきました。

京都というフィールドで

今出川通りから大宮通りの角を北に進んでいくと吉靴房が見えてきます。店内に入ると照明のカバーが革で作られていたり、棚もご自身で作られていたりと、物作りに対する気持ちがとても強い人なんだなという印象を受けました。

照明カバーも手作りです

野島さんが靴づくりに関わり始めたのは大学を卒業した頃。そこから7年ほど浅草の婦人靴メーカーで働き、製造・企画の仕事に携わっていました。その後、2006年に独立すると、京都の地でブランドを設立。コンセプトは「日本の伝統的な履物をベースとした革靴」というものでした。独立する際には外国で日本独自の革靴のデザインを売り出すことも考えたそうですが、歴史や伝統を色濃く残し、日本らしさの代表的な場所である京都で、日本デザインの革靴を生み出すブランドとしてスタートすることを決めました。歴史好きの野島さんは、文化都市・京都でこのブランドを立ち上げ、この地で成功できれば、その後はきっとうまくいくと考えたのだそうです。

実は野島さんは剣道を大学生の頃までやっていたそうです。剣道も日本の伝統的な武道であり、剣道着や道具、所作や精神性なども含め、若い頃から日本らしさへの深い憧憬を持っている方なのだと感じました。

縁の下の力持ち

ブランドがスタートしてからは、たくさんのご縁にも恵まれました。全国紙にページを持つ著名なライターに出会い、全国紙に掲載されたことで、独立早々4,5ヶ月で予約が1年待ちになるほどの人気ぶりとなりました。またこれからネットショップを始めたいと考えているときにウェブデザイナーとの出会いがあり、当時としてはかなり早い段階でネットショップも開設。その2ヶ月後には名古屋のテレビ番組で紹介され、電話が鳴り止まないほどになったのだそうです。そのほかにもSOU・SOUに関連のある会社でインターンをしている人が野島さんの靴製作の教室に来られていた縁でコラボ商品の開発が始まるなど、まさに縁が紡いだサクセスストーリーでした。

また、野島さんは普段から自分で作った靴を3、4足持ち歩いていたといいます。それによって、たとえば知人が集まる食事会に参加した方々に自分の靴を見てもらうなど、常にブランドやアイテムを知ってもらえるようアプローチすることを心がけていたそうです。そうした野島さんの地道な行動が、たくさんのご縁を呼び寄せたのかもしれません。

日本らしさを盛り合わせた「寸五五枚丈」

引用: https://www.kikkabo.info/products/detail/130

今回使わせていただいた寸五五枚丈についても話を伺いました。足袋をベースとしており、紐の結び方は昔のわらじをイメージしてデザインされています。日本の昔ながらの履物をモチーフにした革靴はオリジナリティもあり、とても引き締まっていてかっこいいデザインだなと思いました。

ちなみに名前の由来は大工さんが使う単位である「寸」から取られており、「寸五」というのは「一、五寸」のこと。つまり一寸=3cmとしてヒールの高さが4.5cmあることを表しているのだそうです。婦人靴メーカーに勤めていた野島さんがヒール靴は痛いという印象を覆す、履き心地の良いヒール靴を作りたいという思いがあったのです。「五枚丈」は足袋に付いている「こはぜ」という金具の数を表しており、こはぜ五枚分の丈があるということです。ネーミングにも日本独自の単位が使われていて、日本らしさが溢れているなと思いました。

十人十色な着こなし

わたしたちが普段着ている服はどうしても洋服が中心になります。でもだからといって、野島さんが生み出す日本らしいデザインのプロダクトが似合わないのかというと、決してそんなことはありません。むしろヨーロッパで生まれた革靴を日本らしいデザインにするという野島さんのコンセプトは、和洋折衷を体現していて、和装にも洋服にも似合う革靴になっています。

実際に吉靴房さんで靴を買われていく方は、皆さんとても個性的でオリジナリティのあるオシャレな着こなしをしている方が多いと野島さんは語ります。それどころか野島さん自身が「面白くて、素敵な使い方をされてるな」と感心されたり、参考にしたりするようなお客さんも多いとのこと。だからこそ、わたしたちはこのプロジェクトを通じて外国人観光客にも自由に、自分なりのファッションを表現してもらい、日本人にはない新しい感覚の「寸五五枚丈」を履きこなす姿を見てみたたいとさえ思いました。

最後に野島さんは「革製品はわたしたちがふだん食べるものから出たものをそのまま捨てると環境に悪く、また命にも申し訳ないので、それを長く使えるよう人間の英知によってより優れたものを作り上げることができた素材のひとつ」という話をされていました。革を使った野島さんの靴は、人が履くことによって、また新たな命が吹き込まれるのだと感じました。


店舗情報

住所:京都府京都市上京区大宮通寺之内下ル花開院町111-2
TEL:075-414-0121
営業時間:月・金 10時 ~ 16時
       土・日 14時 ~ 17時
●公式サイト: https://kikkabo.info
●Instagram:@kikkabo_nojima
●X(旧twitter):@kikkabo_nojima


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