『幻祭』

「あなた、ひとりでお祭り来てるの?」

横を見ると、ふわりとした微笑みの女性。

「たまたま、通りかかって、、何となく」

「じゃ、一緒にまわろう。こっち、来て!」

勝手に僕の手を引いていく。でも嫌じゃない。

甘い綿飴。競い合う射的。分け合う焼きそば。

網を何度も破り、やっとすくえた金魚。

はしゃぐ僕に、君はキスをして去って行った。

残された金魚と僕。そんな夏の終わりの夜。

思い出すのは、浴衣にも赤が泳いでいたこと。


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