『残歌』

「ママ、どうしたの?ぼーっとしてるよ?」

「あぁ、ごめんごめん。ねんねしなきゃね」

「うん。いつもの歌かけてー」

今日、街で彼とすれ違った。この子の父親。

バンドマンの彼とは結婚するはずだった。

でも、メジャーデビューが決まり、別れた。

彼の将来の邪魔は、出来なかったから。

その時、この子の妊娠が判り、一人で産んだ。

あれから3年。毎夜、父親の歌で眠る我が子。

いつか気づく時まで、この歌を好きでいてね。


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