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郷に入っては郷に従え!? AIU生がヨルダンでの国連YVで見た景色とは? #AIU生が見た世界


 2018年9月から5か月間、中東の国、ヨルダンのアンマン (Amman)で国連ユースボランティア(* 詳細下記参照)の活動を経験された安田奈未さん(AIU12期)にお話を伺うことができた。
 これは、国際協力・開発に関心のある学生も多い、AIU生には魅力的なお話が聞けそうな予感がする…。さらに渡航先が、留学先としてよく例に挙がるヨーロッパや北米の国々、アジアの国々とは違い、なかなか訪れる機会が限られるであろう中東の国、ヨルダンというのも魅力的だ。
 今回のインタビューでは、同インターンシップでの活動内容 (WORK) とヨルダンという国での暮らし (LIFE) を振り返っていただいた。
 それでは、未知と魅力にあふれた活動内容・ヨルダンでの生活のリアルに迫っていく!

 * 国連ユースボランティアとは、国際機関である「国連ボランティア計画(UNV: United Nations Volunteers) 」により開発途上国に設置された事務所や現地政府機関で行うインターンシッププログラム。(国際教養大学HP”国連ユースボランティア”より引用)

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基本情報

名前:安田奈未さん
AIU入学時期:12期 (2015年) 春入学
活動内容:#海外インターンシップ  #国連ユースボランティア
活動場所:ヨルダン、アンマン

活動内容(国連ユースボランティア)について


ーーそもそも、国連ユースボランティアに参加するきっかけのようなものは何でしたか?もともと国際協力・開発に強い関心があったんですか?

A. UNICEFマンスリーサポートのアルバイトをしていたことがあり、その経験から国連、国際協力・開発に興味を持つようになりました。


ーー国連ユースボランティアと言っても活動内容を想像しがたいのですが、どのような活動をされていたか、主な活動内容を具体的に教えていただけますか?

A. 広報活動として受益者に対するインタビューとhuman interest storyという広報資料の作成をしていました。human interest storyはいわゆる対外的な広報と違って、支援国や支援団体に向けたthanks letterのようなものです。実際にフィールド(難民キャンプやユニセフ支援の教育センターなどの現場)に行き、ユニセフの支援を受けている家族や子供にインタビューを行い、記事を書いていました。


ーー活動内容に関連して、事前アンケートの「一番辛かった瞬間」の欄に「最初の1ヶ月半仕事がなかった。出したレポートの9割を直された。」と答えられていましたが、これに関して詳しく教えてください。

A. どんな仕事が任せてもらえるんだろうとワクワクして勤務を開始しましたが、上司は「あなたは何ができるの?この5ヶ月間でなにをしたいの?」という感じで、すごく簡単な資料作りを任せられることが多かったです。自分の仕事が用意されている訳ではなく、自分が出来ること・興味のあることを伝え、仕事を自らもらいに行くといった姿勢が求められていました。私は上司にもっとフィールドに行って記事を書きたいとひたすら伝え続け、上記の仕事を任せてもらえることになりました。また、初めの頃は書いたレポートの殆どを訂正されることもよくありましたが、徐々に直しが少なくなり、任される部分が増えました。この経験は、インターンシップ中やりがいを感じたエピソードの一つです。

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難民キャンプ内施設

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難民キャンプでの受益者インタビュー

 日本国内でのインターンシップであっても、自ら仕事をもらいに行く姿勢を貫くことは難しいだろう。さらに、それが異国の地であれば、その困難は計り知れない。加えて、その姿勢が認められ、任せてもらえる仕事も徐々に増えたと語る奈未さんには、感服するばかり…。
 さて、活動内容のイメージがざっくりついたところだが、ヨルダンという地のイメージがなかなかつかないという読者も多いのではないだろうか。記事製作者もインタビューをさせて頂くまでは、雲を掴むというかその雲さえ描けていないような無知の状態だった(笑)。そんな記事製作者も、当インタビューを通して、ヨルダンの魅力に触れることができたように感じる。同じように読者の皆さんも、残りの記事を読み終える頃には異文化体験をしているかも…。
 ガイドブックには載っていないような情報がてんこ盛りの「活動場所(ヨルダン、アンマン)編」。ヨルダンへの渡航を検討している読者も、そうでない読者も、必読です!

活動場所(ヨルダン、アンマン)について

奈未さん目線のヨルダン、アンマン基礎情報
○印象:国際都市/ 中東/ 開発途上(?)
○物価:高め
○国民性:おしゃべり・おせっかい焼き
○天気・気象面
  ・夏は湿度は低くカラッとした暑さ
  ・冬は意外にも寒く、年に数度雪が降ることも
  ・雨が多く、インフラが整っていないこともあり洪水のような状況が起きることも多々ある
○行くなら知っておくべき便利情報:カリーム /Careem(タクシーアプリ)
○訪れるべき場所
  ・ペトラ遺跡(ペトラとは、ギリシャ語で「崖」を意味する。2,000年以上前にこの地に定住したアラブ人の一族により、切り立つ岩壁を削り建てられた大都市の遺跡。)
  ・ジェラシュ遺跡(ローマ帝国の十都市同盟、デカポリスのひとつであった「ゲラサ」と呼ばれた古代都市の遺跡。)
  ・マダバ(19世紀後半のキリスト教とイスラム教の対立後、キリスト教徒が移り住んだという歴史を持つ都市。イスラム教とキリスト教が共存するエキゾチックで魅力的な地。)

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ジェラシュ遺跡で撮影


ーー日本人にとってヨーロッパやアジア諸国は旅行や留学等で訪れる機会が比較的多いのかなと思いますが、中東は日本からどこか遠い存在のようなイメージを持ってしまいます。なので、まず初めにヨルダンという国の印象や雰囲気を教えてください。

A. ヨルダンではイスラム教の影響が大きいので、モスクなど至る所でイスラム文化を感じることができます。なので、所謂、中東と聞いて思い浮かべるであろう「the 中東」というような景色が見られます。その反面、国際都市という一面もあるためキリスト教の教会も見つけることが出来ます。街並みに関しては、インフラ整備が進んでいない部分もあるけど、生活水準は想像していたよりも高いのかなといった印象でした。

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国際都市の一面も見せる同国では、寿司メイキングキットだって買える(?)

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都市部の様子。アンマンで撮影

ーー国際的な一面は予想していなかったですが、イスラムの文化が強いというのはなんとなく想像がつきますね。事前アンケートで「アザーン(イスラムの礼拝)で早朝に起こされる」と回答してましたが、他にイスラム文化を感じたシーンはありましたか?

A. “インシャアッラー“という言葉は日常生活の中で頻繁に聞くフレーズの一つだったと思います。「神が望むなら」という意味の言葉で、いつでも使えます。例えば、「No」と断りにくい時などに使えます。関西弁でいうと「いけたら行くわ」の様な感じです。
逆に何かをお願いした時に相手にインシャアッラーと言われたら要注意です(笑)。


ーーそのフレーズ聞いたことありますよ。便利ですね(笑)。言葉ひとつとっても、宗教が現地の生活にいかに強く根付いているかがわかりますね。

A. そうですね。でも、やはり国際色豊かな一面からか信仰心の厚さも人それぞれ。
道で懸命にお祈りをしている人もいれば、ヒジャブを被っていない女性も街でよく見かけました。関連して言えば、本来イスラム教では飲酒は禁じられていますが、ヨルダンリバーというヨルダン産のお酒も買えます(買うときは黒い袋に入れられますが)。なので、一つの宗教と言っても一括りには出来ないです。

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ヒジャブをまとった女性がキリスト教の教会を訪れている。イスラムとキリストが共存し、宗教への一層の寛容さを見せる同国西部の都市マダバで撮影

ーーインシャアッラーに関連して、現地で知っておくと便利、渡航する際には知っておくべきという表現はありますか?

A. サハティーンアッラーアルビックですかね。サハティーンは自分が料理を振る舞ったときに使う、ボナペティ(bon appetit)のような表現で、アッラーアルビックはそれへの返答となる表現です(レストランではあまり使わないけど、知り合い宅で手料理を振る舞われた際などに使う)。もう一つは、厳密に言えば、相手の性別により、言い方が少し違うのですが、ヤアティー・キルアーフィエという表現です。直訳すると「あなたに健康(エネルギー)が与えられますように」。つまり日本語で言う「お疲れ様」に近い表現となり、便利です。これを言われた時の、返し文句も決まったものがあって、「アラーヤアフィーク(相手が男性の場合)」や「アラーヤアフィーキ(相手が女性の場合)」等もあるので、覚えておくと何かと便利かもしれません。

ーー中東というとイスラム文化の他に、治安の面で不安視する意見があるかと思います。実際、渡航してみて危険を感じたり、持ち物をとられたりしたことはありますか?

A. 正直、あまり治安が悪いと思ったことはそんなにないかもしれません。一度、カリーム(Careem)を使って移動した時に一眼レンズを車内に忘れたことがありましたが、運転手の人はそれを盗むどころか、わざわざ自分のところまで持ってきてくれました。

ーーそれは国外旅行・渡航ではあまり考えられないエピソードですね。

A. でも、それはカリームを使っていたからかもしれないです。アプリを使えば、こちらから運転手の身元確認もできたりします。なので、運転手はカメラを盗んだことが判明したら、仕事を失うということを考えていたのかもしれないです。もう一つ考えられるのは、ヨルダンの国柄的側面からの理由です。ヨルダンは他の中東の国と比べて資源が少ないので、外貨獲得のために観光業が栄えています。その分、外国人観光客への対応が慣れていたり、治安が良かったりするということもあるのかもしれないですね。

【カリーム(Careem)とは?】
ドバイに拠点を置く会社が開発した配車サービスで、いわばUber中東版配車アプリ。アラブ首長国連邦、エジプト、ヨルダンなどの国々で主に利用される。中東の国々では通常のタクシーは、相乗りが普通だとか。なので、複数人で使うときはタクシーが捕まりにくかったり、目的地へダイレクトに行かないため時間がかかる等の懸念があるそう。でも、カリームならそんな心配は解消されそうだ。


ーーなるほど。中東の国といっても一括りに出来ないですね。段々、ヨルダンに対する勝手に持っていたイメージのようなものが塗り替えられていくようで面白いです。他に、現地で体験した衝撃的なエピソード等ありますか?

A. カルチャーショックのようなもので言うと「道を尋ねると違う方向を教えられる」ことですかね。


ーーどういうことですか(笑)。

A. ヨルダンでは”目の前にいる人をハッピーに”という文化があるらしく…。例えば、道を聞かれた時に分からないと言わず、知らなくても適当な方向を教えることがあるようで…。実際に私もそのような経験がありました(笑)。
 職場でもこの文化が影響してか、トラブルが起きたことがありました。インターンシップが遂に終わりを迎えようとした頃、他のスタッフに、ある資料制作業務の引継ぎをしていた時のことでした。その時は、きちんとその資料制作の締切日も伝え、引き継がれた当人も「No problem 観光楽しんで来てね」と言っていました。ですが、翌日ヨルダンを訪れていた家族とペトラ遺跡を観光中に、上司から一本の電話がかかってきました。内容はというと「資料の制作がまだ終わってないが、大丈夫なのか。」との怒りの電話でした。自分はしっかりと引き継ぎ、締め切りも伝えて、その当人も大丈夫といっていたのに…。結局、ペトラ遺跡からアンマンに夜中の1時に帰ってきて、朝の6時起床、7時に出社して…。ということがありました(笑)。これも問題があっても「No problem」と言ってしまうヨルダンの人たちが持つ「目の前の人をハッピーに」の精神によるものなのだろうか、と思った瞬間でした。

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家族と訪れたペトラ遺跡で撮影。のちに上司から電話が来るとも知らず…。

ーーえええ(笑)。problemだらけなのに no problemて言っちゃうんですね(笑)。他にも事前アンケートでカルチャーショックの欄に"押し付けのホスピタリティ"て記載があったんですけど、どういうことですか?

A. 良い優しさなんだけど、奉仕がすぎるというか…。例えば、難民キャンプに向かう時など外回りをする際はドライバーさんがついていたのですが、ヨルダン特有の、熱々で砂糖たっぷり甘々のお茶をほぼ毎回買ってくれるドライバーさんがいました。お金を払おうとしても絶対に拒まれ、ありがとうと言うといつもはにかんでいました(笑)。あとは、同僚でいつも弁当をおすそ分けしてくれる人がいました…(笑)。でも、それがぬるくなったきゅうりを切ったもの(笑)。それでも、日本で言う遠慮が、ヨルダンでは失礼にあたり、むしろ有り難くもらう方が喜ばれるということを感じていたので、極力断らないようにしていました。

最後に奈未さんから読者の皆さんへ一言

 このような機会を頂きありがとうございます!当時のことを楽しく思い出しながらインタビューに答えさせて頂きました。コロナ禍ですっかり遠い存在となってしまった海外渡航ですが、やはりその国に実際に行ってみないと分からない文化や雰囲気は存在すると思います。もっとスムーズに海外に行ける日が早く来ることを願っています!
 読んで頂きありがとうございました!

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編集後記
 奈未さんのお話を伺うことで、異国の地、ヨルダンでの暮らしが少しは馴染みのあるものになったではないだろうか。異国の地で、”郷に入っては郷に従え -When in Jordan, do as the Jordanias do-”を実践できる奈未さんの環境適応能力には目を見張るものがあるように感じる。また、オンライン授業の継続に伴い、インターンシップに挑戦する学生も多くいるように感じる。奈未さんの自ら仕事をもらいに行く前のめりな姿勢は、そうした学生たちの目にも刺激的なものとして映ったのではないだろうか。
 改めて、今回快く取材を引き受けていただいた、奈未さんに心より感謝の意を表したい。また、最後まで読んでくださった読者の皆さんにも感謝の意を伝えたい。ヤアティー・キルアーフィエ!(お疲れ様でした!)
 なお、#国連ユースボランティア、#ヨルダン、などに関して奈未さんに質問等があれば、私たちALiveRallyに是非ご連絡ください。では、次回の記事でまたお会いしましょう!

Interviewer: Taisei Homma / Suguru Matsuya
Writer: Taisei Homma

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