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7月 その1

7月1日

ねえ思えば幼少期って短いよね。私の考える限り、子供って14歳ぐらいまでだけどそれってずるくない?大人でいる期間はあんなに長いのに。大人の期間も年代別に分けられるけどさ。木を登ったり外で騒いだりできるのは子供だけでしょ。私でももうそういうことをしたら注意されるよ。あえて言えば、人生の6分の1ぐらいしか子供でいられないでしょ。なんで?なんで自然ってそんなにずるいの?大人になんかなりたくない。三分の一くらいの速さでならいいかもしれないけど。だって、大人ってなにをするかも分からないもの。どんな楽しみがあるの?私の見る限り、子育てとキスとかしかないみたい。

と言っても、少しは大人でいてみたいとも思う。本をまだ書いていないし、スカイダイブもしていない。でもまだいい。背も高くなりたくないしカラダが変わってほしくない。ぜったい変わるつもりはないからね。

<念の力が強すぎたのか、いつまでも私は胸は殆ど大きくならなかった。遺伝ではまずないので今でも真剣に思春期の思考のせいだと思っている。>

あーあ、本当にロシアかオーストラリアに行きたいな。壁を埋め尽くしている写真を眺めては風景を思い出すけれど感情までは正確に再現できない。ロシアの田舎に戻って家の庭でうっとりするような花や薪の煙の香りを胸いっぱいに吸いながら走りたい。それから家の中に駆けて行ってテレビを大音量でつけたい。またこういうことができるだろうか。きっとできるけどその時はもう私は大きくなっていて周りの物は小さく見えるだろう。それだから背が高くなりたくないのよ。でも確実にね、信じているの。時間を遡ることはできるって。
ちょっと話はそれるけど、最近幽霊を信じるようになったの。だって、人って死んだらどこに行くの?完全に消え失せるのはありえないよ。考えも感情も記憶も全部。きっと、死んだ人ってみんな別の銀河系かどこかで新しい人生を始めるのよ。それか幽霊になるか。第一、本当に死ぬのかな?だって、死って想像できないもん、大人になることも想像できなければ。

7月4日

お母さん、また私にブラをつけてほしいと言ってきた。それもお父さんの前で。私は気持ちを抑えて、考えるだけで気持ち悪くなると固く断った。お母さんはなぜ分からないわけ?お父さん、別に他の誰の前ででも、こういうことは言ってはいけないの!お母さんは恥ずかしいとはなにかを知らないらしく、平気で下着だけで家中を歩き回る。私がカーテンを閉めないことを怒りながら。私も大人になったらこうなるの?ならないといいな。どっちにしろ、結婚はしないけど。

7月5日

少し前、もうちょっと馬鹿になってもいいから歌がうまくなりたいと念じていたの。本気にそれを願っていたのかはわからないけどそれが叶っちゃったみたい。今は悔やんでいる。今回のテストの合計点数が432。前は434点でも平均点が低かったからどうにか学年で4番目だったけど今回は最悪だろうな。みんなはどうやって勉強しているの?ああずるい。2位とりたいな。ケアレスミスはどうやって避けるの?

<この時、学年に180人くらいいたので普通に考えて私は優等生。それも一人だけの外国人。でも家では私がお父さんに似て頭がいいのが当たり前とされていたので褒められることは特になく、常になぜもっとよくできないのかだけを言われ続けられた。>

7月9日

今日、弥生さんの家に家族で行った。ちょっとしたバーベキューがあっておいしかったけど何かのきっかけで温泉の話になった。私は温泉は嫌いと言うと、みんなはそれを笑って話題にした。嫌な気分だった。

夕方には、近所の子供たちに仲間外れにされて悲しくて家でちょっとしたかんしゃくを起こした。でもそれはお母さんだけが許されることで私は怒られるだけ。今はもう落ち着いたけど。なんで誰も私を友達として大事にしてくれないの?

7月12日

今日は朝4時45分に起きて学校の遠足に出かけた。富士山での宿泊学習だ。道のりは綺麗だった。富士山の半ばまでバスに乗って行ってそれからハイキングした。自然の匂いがすごくよかった。私は女子の中で一番速く目的地点についた。帰りのバスでは眠くなって、少し暑かった。夕食の後では38度の熱が出ていることがわかった。みんなに心配されて、「だいじょうぶ、ありがとう」と言うのに疲れた。みんな本当はやさしいんだね。別に私を嫌っているわけじゃないのかも。きっと、どういう風に私に接したらいいか分からないのかも。

夜9時になって病院に連れてかれた。行きたくなかったけどドライブはよかった。山のシルエットや空の星を眺めた。

夜はなかなか眠れなかった。部屋の女の子たちが恋話を楽しんでいた。怖い話じゃなかったのでつまらなかった。私もなんとか加わりたかったけど眠すぎた。

7月15日

昨晩、親はなぜか11時になって私に背を伸ばして歩くようにしろと説教をしてきた。別に猫背で歩いてるわけじゃないけどたまには背中を丸めているのは事実だ。親は、今それを直さないとこれからどんどん悪くなっていくと言い、なぜ背を伸ばす努力をしないのかと問い責めてきた。私は何も答えることができなかった。だって、背を伸ばしたら胸が見えるでしょ。何も言えるわけがないよ。

放課後、夏祭りに行った。ユキは部活に行っていたのでカレンと出かけてから後で合流した。かき氷をおいしく食べた。とても楽しい時間が過ごせた。お化け屋敷に行った。ペーターとその友達は怖がって行かなかった。最後には、ただ誰かのバンドを聴いてずっと座り込んでいた。ずっと小雨が降っていたけど帰る人はいなかった。ユキ、好きになりそうな人がいるって。意外と今回は最悪の人ではない。まだ友達だけだけどすごく彼が気にいってるみたい。でも、顔が好きじゃなくてまだ好きになれないって。

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