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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(89)

前話

 それぞれお風呂を堪能して集合する。クルトやヴィルヘルムがワイワイ言いながら近づいてきた。私はどきどきして怖くなってくる。カロリーネお姉様もフリーデも気づいていない。私の中で恐怖が膨れ上がってくる。
「エミーリエ?」
 優しいクルトの声がした。びくっとする。顔が見れない。体を両手で抱きしめる。
「食事は分かれてとろう。それから今夜からしばらく姉上かフリーデがエミーリエと一緒に眠ってあげてくれないか? 今の俺には解決できないから」
 寂しそうな声だった。離れるクルトの手をとっさにつかんでいた。
「待って……」
 声はかすれて小さかった。
「エミーリエ?」
「クルトでないとだめなの。クルトと一緒にいたいの」
「だけど。君は今、男性が怖いはず。俺は大丈夫かと思ったけれど、ダメ、なんだろ? どうするつもり?」
 少し、クルトが怒っていた。すぐに助けられなかった自分への怒りも持っているようだった。
「わかってる。怖いの。でもクルトと離れることの方がもっと怖い。こんな怖いこと嫌よ。もう嫌。帰りたい!!」
 急にしゃがみ込んで私の中から信じられないほどの涙と泣き声があふれた。
「ヴィーに戻してもらうかい?」
 静かな声だった。
「ク…ルト?」
「ヴィーならあの時代に返せる。帰ってもいいんだよ。帰りたいってそういうことだろ?」
「兄上! 言葉が過ぎます! 姉上は今、心に傷を持っているのですよ!!」
「じゃぁ! どうしろっていうんだ!! 俺は怖い。だけど離れたくないって! わかった。エミーリエ、来るんだ」
 しゃがんで泣いていた私をクルトは抱きかかえるとさっさと歩き出す。
「クルト?」
 私の顔は涙でぐしゃぐしゃだ。
「大丈夫。怖いことはしないから。キアラがいるみたいに抱きしめてあげる。エミーリエは俺を抱きしめてほしいな。ごめん。さっきは怒鳴って。どうしたらいいかわからない。一般的な対処は知っていてもエミーリエには当てはまらないから。勇気を出してここに来てくれたのにね。愛してるよ。エミーリエ」
 宿泊先の部屋に入るとそっとベッドに横たえる。私はまだ服を着ている。どうしたら、と思っているとドアがノックされた。
「フリーデ?」
「はい。エミーリエ様。お召しものを……」
 私はベッドから立ち上がると入り口に向かう。
「ありがとう。持っていてくれたのね」
「他の荷物はこちらの部屋にすべてあります。この夜着はこの宿泊先のものです。お気に召すかどうかわかりませんが」
「ありがとう。大丈夫。あなたはヴィーと時間を過ごして」
「エミーリエ様……。なんでもありません」
 つらそうな瞳をしてフリーデは去る。私、みんなを怒らせたり悲しませたりしてるのかしら。悲しくて肩が震える。
「エミーリエ……。つらいね。でも、みんな君を思って思ったことだ。君に責任はない。さぁ、着替えて。俺はもう着替えたから。あとでシュテファンに夕食を持ってこさせるるよ」
 着替えに行くと鏡があった。風呂上がりに着た衣を脱ぐと痛々しい傷が目に入ってきた。あの差し迫った瞬間を思い出す。思わず目をつむる。
「エミーリエ? 大丈夫?」
 そうだった。クルトに流れっぱなしだった。慌てて着替えると飛び出すようにして出て行ってクルトの胸に飛び込む。
「怖い。クルト。ギューッと抱きしめて!」
「エミーリエ……。大丈夫だよ。さぁ、ゆっくり休もう」
 そっとベッドに下ろすとクルトも横に入る。そして私に手を回して抱きしめる。耳がクルトの心臓のあたりにあたって鼓動が聞こえてくる。とくん、とくん。聞いていると安心してくる。
「クルトの心臓の音を聞いているとほっとして眠くなってくるわ」
「そのまま眠ってしまったらいい。また起きた時には夕食があるから。少し、気が立ってるからね。落ち着かせた方がいい」
「クルト。愛してるわ」
「俺もエミーリエを未来永劫愛している」
 クルトの心音を子守歌に私のささくれだった心は休まっていき、眠りがやってきたのだった。


あとがき

心臓の音って不思議ですよね。ほっとします。昔、幼いころ夜勤明けの父の胸の音を聞いていました。懐かしいです。心の傷はすぐには治らないけれど、休められるところはある。私もここでいつも通りにしていたら治るのかな? あんなひどい投稿見た後の気持ち。いくらやけくそでも本音を人を傷つけるぐらいに書くってルール違反。その本音で人が傷つくのに。ほざくという感じの本音。そんなものを投稿するためにnoteはあるんじゃないのに。そういいたかったのに、あの方は自分の正義でしょ、って。他人軸は信じない、と言っていた。自分軸って自分勝手とは違うのに。それが伝わらなかった。もう忘れよう。今日はこの更新で終わらせてください。星降りは明日、朝投稿します。イラストと見出し画像つくったので。少し、今までと感じがちがうかもしれませんが。剣というのがキーなのでやはりそこは西洋に近いかと。まじりあったにしたらとでもなく日本になったので。背景も日本の剣道場になってしまってあえなくローマ風指定。なので背景が少しルネサンスです。お楽しみに。

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