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言葉とともに迷う日記 2025.02.03
早朝の仕事: もくもく原稿を書く
5時、アラームが鳴る前に目覚める。お布団にくるまったまま、Duolingo (英語版)のスペイン語をやる。起き出して、ストレッチ、植物にお水をあげて、着替えて、ミルクとけだすティーバッグ(キャラメル紅茶)を淹れる。仕事を始めてもいないのに気が散ってしまい、うさぎ雑貨店Rebekkaの森山標子さんコーナーで絵葉書を大人買いする。気がすんだので、多言語エッセイ『ふつうのマルチリンガル』にとりかかる。新しい章(第8章「深南部 The Deep South」)にとりくむ。
初日なので、アラバマ州の歴史などを検索しながら、アウトラインのスケッチをする。なぜかノースカロライナ州に父親の友人夫妻(台湾出身)を訪ねにいったことを思い出す。えーと、わたしが思い出したいのはアラバマの話なんだけど……とりあえず、浮かんでくるものをなんでもスケッチ。7時になり、朝食。カットレタスに木綿豆腐とサラダチキンをちぎってのせ、電子レンジで加熱、金ごま、ミニトマト、ゆで卵、刻み生姜、韓国海苔を加え、塩、こしょう、オリーブオイル、バルサミコ酢をかける。軽くメイクして研究室へ。
午前の仕事:もくもく文献を読む
南向きでふだんはポカポカな研究室だが、寒波が来ているらしく寒い。暖房をつけ、PCを立ち上げる。まずは、選考委員をしている、ある財団の本年度の受賞作品について選評(1300字)に取り組む。2週間前にドラフトして寝かせてあったものだ。何を書いたか完璧に忘れているくらいになった頃合いに改稿する。見直し、リズムを整え、みなおし、眺める。これ以上、いじってもよくはならないだろうとキリあげて、翌日の午前中に送信予約して終了。
気分転換に、ミランフ洋書店で購入した絵本、Una pez bajo la lluviaを眺めながらニコニコする。短いフレーズをノートに書き写して、5回くらい音読する。楽しい。そのあとは、学内のいくつかの図書館から借用してきたアメリカ合衆国の南部の歴史に関連する文献をもくもくと読む。フィリピン地域研究者なのでアメリカ合衆国史、とりわけ「米帝国史」を学ぶというのは大事なのだが、米国南部の歴史となると注意してこなかった。でも、よーく近現代史を紐解いていくと、東南アジアもつながっていたりして奥深い。
お昼の休憩:もぐもぐ卵サンド
11時半になったので切り上げてランチに外出しようと思ったら、米国で学んだ若手歴史研究者から連絡。「東京滞在中でさびしくなってしまっているフィリピン人研究者を食事に誘ってもらえないか」と。えーと、わたしは、メンタルにイシューがあって(精神疾患治療中)、かつ発達特性(ASD濃いめ+ADHD)もあって、ネットワーキングにはまったく興味がなく、できるだけ知らない人とは会いたくないのだけど、こうした事情はいくらまわりに説明しても、わたしが「ふつう」に見えるために忘れられがちなのだった……。
「さびしい人」を放置するのは倫理的になんだかなと思うし、このひとはセブアノ語母語者らしいし、ここは「歓待」するしかない。ということで、ランチのインビテーションを送る。自分に無理させないように日時と場所はこちらで指定。キャンパスを出てすぐのカフェで、卵サンド、という名前だが、実態としては卵サンド、メンチカツサンド、イチゴサンド、ポテトサラダサンドの4切れにイチゴが添えられている1皿とドリップコーヒー(モカ)をとる。ネコいないかな、さいきんキャンパスネコみないなー、寒いからかなー。
午後の仕事: 英語、英語、英語OK
お昼寝をしてから、編集者さんと文章のやりとりをし、文献の続きを読む。15時になり、会議へ。わたしは、International Journal of Asian Studies (IJAS)のAssociate Editorと、The University of Tokyo Studies on Asia (UTSA)のEditorをしていて、今日は前者の編集会議。編集長がアメリカ人Cさんからフランス人Sさん(社会科学高等研究院、通称EHESSの教授)に変わって初のミーティング。環境の変化に弱く、臆病で小心なわたしは借りてきたネコさんのように固まりながら参加。Hola que tal? そうじゃない、フランス人だよー、アロ?
やだー、英語こわーい(←おいおい!!!!!)。でも、うそみたいに、すーっと緊張がとけて、シャキーン。というのは、新編集長がすごくニコニコさんで物腰がやわらかく丁寧に一人ひとりの話に耳を傾けてくれるタイプだったからだ。「みんなでヨンセ(延世大学、ソウル)にワークショップしにいかない?」と言われて、いやー、わたしはちょっとmental issueがあってー、初めての場所で聴衆を前にプレゼンは無理ですー、と告白したら、なんとしゃべらなくていいと!? とりあえず場慣れと思って来れば、と。了解です。
皆でお夕飯: 飛び交う中国語?!
研究室にもどり、ほわ〜っとゆるんでいたら、ノックノック。開けると、満面の笑みでタイ出身の同僚がこんにちはー。「みんな(さっきの会議のメンバー)で中華食べにいきませんかー」(日本語で)。わたしは、ふだん、18時以降の「職場ごはん」は断っている。のだがー、めっちゃ微笑まれて、くるよねー、くるよねー、という同僚の期待感の前に、「お、おう、誘ってくれてありがとう、いくー」(英語で)。フランス人、イギリス人、タイ人、わたしの4人なので、まあ、英語かな、と思いきや、四川家庭料理の店に入ったとたんみんなが当たり前のようにチャイニーズしゃべってる。そうだったー、3人とも中国語&日本語話者なんだったー。
”Happy New Year!!"とビールで乾杯し(わたしはプーアール茶)、水餃子を食べまくる。Chinese New Year、おめでとう! わたし、むかーし、瀋陽出身のチャイニーズ・アメリカンとつきあってたから家族で水餃子作るのやったことあるよー。このディナーは、ショップトーク(仕事の話)ゼロで、誰もスマホをテーブルの上にだしてなくて、「社交」だったので、すごくほっとした。「ピーマンって英語で何?」、えーと、青椒(チンジャオ)じゃない? ととぼけるイギリス人。「Cat tongue って何? 台湾人からきいたんだけど」、はー、あー、それは「猫舌(ねこじた)」のことかな???、hotなものが食べられないってこと、この場合のhotって、spicyっていう意味じゃなくて温度のほうの熱いなんだけど。
お家で眠る: 日本語に包まれる
残さず食べて解散。何食べたんだっけ? みんな中華料理詳しすぎて、かつ中国語で注文してたからよくわかんないや、でも美味しかった。水餃子のほかには、餃子のスープ(ワンタンじゃない)、four season beans? 四季豆? エビとタマゴとキクラゲの炒め物、あと辛い(とイギリス人同僚とわたしは思ったのだが、ほかのふたりにとってはぜんぜん辛くなかったらしい)野菜と牛肉の炒め物。わたしは対人刺激に弱いので、なんか頭がぐるぐるする、コーフンが醒めなくてしんどい。頭のなかで無限再生される英語での会話をおさえたい。
ということで、精神科の頓服薬を飲むのではなく、カウンターで、Netflixでまず、La Casa de las Floresを音声スペイン語、字幕なしで流す。親しみのある音なんだけど、よくわからないというのがほどよくリラックスにつながる。それから、お風呂に入り、お洗濯をし、就寝前の常薬を飲む(漢方薬、抗うつ薬、抗精神病薬、睡眠薬)。そうだ、日本語はどうかなー、と思って、『正体』を流しているうちに、うとうとしてきたので、ベッドへ。短いお祈りをして、おやすみなさい。ネコになる夢を見られますように。Sweet dreams, maayong gabii, miao miao.
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。