見出し画像

【古美術品の補作作品】 須田悦弘展 松濤美術館

古美術名品の欠損部分を補う

現代美術作家の杉本博司に誘われ始めた補作作品

初めての補作作品は神鹿像

2013年から『婦人画報』の連載「"謎の割烹” 味占郷」に掲載され、
2015年千葉市美術館開催「杉本博司  趣味と芸術ー味占郷」で展示された神鹿像が初めての補作作品です。
この時は角と鞍、榊が補作されました。
瑞雲部分は2022年に追加されました。

《春日若宮神鹿像》鎌倉時代と《五髷文殊菩薩掛仏》鎌倉時代
補作された角、鞍、榊(2015年)瑞雲はまだ無い
瑞雲(2022年)が追加されました

ここで私は欠けている部分を補作することとし、友人の現代美術家、須田悦弘さんにお願いすることとした。補作部分は、鹿角、鞍、榊だ。全ての補作が完成してみると、これが私の想像上の再現であるとは見えないほどの迫真性を備えているように見えた。しかし一点だけ気になることがあった。掛軸にも描かれているように鹿は雲に乗っていなければならないのだ。私はさらに雲を須田さんに頼んだ。しかしこの作業は難航を極め、二度のやり直しの後にようやく許せる範囲に達し、一応完成したこととした。

杉本博司 本歌取りー日本文化の伝承と飛翔(2022年)図録より

美術作家の合格ラインは相当に高いようです。

「補作と模作の模索」展

次の写真は2023年倫敦ギャラリーで開催された、須田悦弘「補作と模作の模索」展のものです。
(スマホ撮りですがガラスが無い分、多少キレイなので)
今回の展覧会にも出展されています。

《随身坐像》平安時代
手と弓が補作 平成時代
手の部分をアップ、木に彩色した補作作品・・・見事です
《狛犬》平安時代
左頬が補作 木に彩色したもの 平成時代
《優填王像》(うでんのうぞう)は銅製鋳造 金峯山伝来
補作は台座部分 平成時代

ここまで最新の補作作品を中心にまとめました。

学生時代の《スルメ》と通じるものを感じさせてくれたり、一方で雑草作品との関連も思わせるパッケージデザインの仕事も興味深いものでした。

《スルメ》1988年 多摩美術大学時代の作品

須田悦弘の学生時代の作品から、デザイナーの仕事、最近の補作作品まで展示された見どころ、探しどころの多い展示です。

アサヒ飲料「アサヒ十六茶」原画 2010〜2019年
《雑草》2024年 木に彩色

松濤美術館で2025年2月2日までの開催されている「須田悦弘展」は、白井晟一が設計した美術館の空間とともに楽しめるおすすめの展覧会です。


いいなと思ったら応援しよう!