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「待庵」を写した 杉本博司 茶室「雨聴天」

千利休の茶室「待庵」を本歌取りした杉本博司の茶室です。

2013年「HOUSE VISION」で発表されました。
新素材研究所(杉本博司×榊田倫之)設計、住友林業と水澤工務店の施工による「数寄の家」と茶室「雨聴天」です。
「雨聴天」は2017年から江之浦測候所に移築されました。

左「数寄の家」、右  茶室「雨聴天」
2013 年
竹小舞、晒竹、外の土壁を塗る前の状態 
2013 年

杉本博司が暗くなるまで外で遊んでいた幼少の頃、ある日俄かに大粒の雨が降って来て友達と近くのトタン屋根の小屋に逃げ込んだという。
トタン屋根を叩く大粒の雨に音に・・・

心が浮き立つような、自然界の神秘にふれたような、摩訶不思議な感覚に襲われた。私の心は踊り、そして有頂天になった。

HOUSE VISION 2013 TOKYO EXHIBITION
茶室「雨聴天」杉本博司 平凡社2013より

江之浦にあった蜜柑小屋のトタン屋根を使用することで、利休がありあわせの材料でつくった「待庵」を本歌取りしています。とはいえ「雨聴天」の床柱や炉縁には実は天平古材が用いられています。なんと贅沢な…。
そして洒落の効いたネーミング。

2017年「江之浦測候所」へ

雨聴天はいったん解体されたのち、2017年「江之浦測候所」の敷地内に移築されました。
唯一残る千利休の茶室「待庵」の寸法を一分の違いもなく写したといいます。

春分と秋分の朝陽がにじり口から室内に差込むように配置されている手前は鳥居の古い様式である山形県小立の石造鳥居を模したもの


待庵を本歌取り

個人的なご縁があって、ずっと以前に「待庵」の空間を体験させて頂いた事がありますがまさにそのまま。
本当によく写されていると思います。
とはいえ、洞床部分はこれまでに解体修理がされた事がないので内部構造は不明のままだとその当時聞きました。その後の調査で判明したのでしょうか。または推定した部分があるのかもしれません。

雨聴天の洞床と「日々是口実」の掛軸 …口実!
壁を塗らずに窓にした下地窓
雨聴天の天井
化粧軒の天井は掛込天井
雨聴天の室内
奥が勝手、次の間、左側が室内
にじり口前の沓脱ぎ石には光学硝子

「待庵」を本歌取りした茶室「雨聴天」は、小田原文化財団「江之浦測光所(事前予約制)」で見られます。
もし訪問日が雨の日だったら、あなたは幸いです。
トタン屋根を叩く雨の音に有頂天になれるかも知れません。


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