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alexandwrites
2020年2月23日 12:19
衝動に駆られた、巡り逢いだった。まだ肌寒さが残る春。私は、見ず知らずの男と二人で旅をした。岐阜の隠れ宿である。宿の最寄り駅に続く、ローカル線の乗り口で待ち合わせた。それが、二人の初対面だった。彼は、静かな"間(ま)"の持ち主で、話していてもいなくてもすっと身を委ねたくなる、心地良いリズムのある人だった。電車の座席に腰掛け、揺られながら話していると、ふと何かを思い出したか
2020年2月22日 04:23
「愛が深すぎるんだよ。」そう言って、彼は泣きじゃくる私を強く抱きしめた。たった一人の男と真剣に向き合うことが、如何に貴く価値のあるものか。それを教えてくれた、初めての人だった。■■■■■■■■■■■■■■■出逢いは、六本木ヒルズ。一目惚れ、と言えば体のいい、ナンパだった。最初の数ヶ月は、相手の素性など殆ど何も知らない、曖昧な関係。会いたくなれば少し日数に余裕
2020年2月21日 15:14
休みの前夜は、いつも、終電で向かうのがお決まりだった。駒沢大学駅。いつも、少し遅れて来る。いつも、改札の出口で待ちぼうける。携帯が鳴って、いつもの、彼の声。顔を上げると、いつもの、自転車と、彼。駒沢公園のサイクリングロードが、近道だった。深夜の二人乗り。くだらない話をひたすらに、笑い合った。私は細身な彼の、意外にたくましい肩に手を添わせて、いつも通りのその時間が、ただ
2020年2月21日 12:04
薄暗い、雑居ビルの階段を数階上がったところに、彼の部屋はあった。窓からは、上海の夜景が赤黒い錆のような膜を帯びて連なり、行き交う車のライトが、やけに眩しかった。私たちは並んでソファに座り、彼が入れてくれたコーヒーを飲みながら、互いのことをいろいろと話した。私も彼も、どうやら恋を失ったばかりのようだった。飾られた写真立てに、笑顔の彼女。伏し目がちに語る彼の、低い声。暫く話