『失敗事例から学ぶ!中小企業診断士の独立開業のリアル』の感想
日沖健先生の『失敗事例から学ぶ!中小企業診断士の独立開業のリアル』(税務経理協会)を読んで感想をまとめてみました。
【著書の概要】
〇 対象読者は以下のとおりです。
・ 診断士を取得し、プロコンに関心がある、または検討している方
・ 独立開業したが、まだ軌道に乗っていないというプロコン
・ 診断士に関心があるという学生・社会人
〇 2部構成で、第1部は失敗事例の紹介、第2部は成功・失敗の分岐点と成功するためのポイントです。
【感 想】
印象に残った事は、❶カバン持ちをして師匠から学ぶべきこと、❷一貫型があまり成功しない理由、❸独立開業は非合理的な意思決定です。
❶について、著者は「カバン持ちの学習効果には限界がある」(23頁)と説明しています。具体的には、コンサルティングで最も難しい受注のノウハウについて、師匠は弟子に部分的にしか伝授しないということです。カバン持ちをして師匠から学ぶことは、仕事に対する厳しい姿勢や高度な倫理観・プロ意識と主張しています。
私は民間企業に勤めた経験がないので、カバン持ちを経験したい、その経験を通じて師匠から様々なノウハウを学びたい、と考えていました。さすがに、カバン持ちさえすれば独立開業での成功が可能とまでカバン持ちに過大な期待をもっていたわけではありませんが、著者の説明で具体的な限界を認識できました。また、受注については、別の手段で学習することが必要であることを課題として認識できました。
なお、著者は「独立開業した早い時期に、素晴らしい師匠からコンサルタントとしての姿勢を学ぶと、その後も良い活動がすることができ、成功する確率がかなり高まります。」とカバン持ちの有効性を述べています。カバン持ちの限界を理解したうえで、良い師匠を探したいと考えています。師匠探しも大きな課題です。
❷について、「独立開業する以前から特定の分野の専門家として実績を上げ、その専門性を生かしてプロコンとして活動するタイプ」(137頁)を生涯一貫して同じことに取り組むことから「一貫型」と著者は定義し、一貫型はカスタマーインが少なく、プロダクトアウトが多いことから、あまり成功しないと説明しています。カスタマーインとはクライアントが問題解決を頼めるコンサルタントを探し依頼するプロセスである一方、プロダクトアウトはコンサルタントからクライアントへアピールして受注するプロセスであり、コンサルティングはカスタマーインが基本であると著者は述べています。
また、「独立開業し、会社勤務時代と違った分野で活動するタイプ」(138頁)を「チェンジ型」と著者は定義し、「独立開業した当初は経験値を高めるために依頼があったら何でも引き受け、1年ぐらいたったら経験を棚卸しして、やらないことと専門的にやることを決めると良いでしょう。」(143頁)と不利な立場にあるチェンジ型の方々に専門領域を確立するまでのプロセスをアドバイスしています。なお、独立開業後の成功確率について、一貫型とチェンジ型では大きくは変わらないと著者は述べています。
専門性が高ければ高いほど成功に繋がり、そのため一貫型がチェンジ型より圧倒的に有利と私は考えていたので、著者の見解は意外でした。また、私は現職が総合職・管理職で自分の専門性について見いだせておらず、チェンジ型に該当する可能性が高いため、チェンジ型が専門領域を確立するまでのプロセスは大変参考になりました。
❸について、「実際に独立開業するのは、真剣に検討を重ねた末に清水の舞台から飛び降りる一大決心をするか、あまり真剣に事業計画を検討せず、弾み・成り行きなど軽い気持ちでやってみるか、どちらかです。いずれにせよ、診断士の独立開業は非合理的な意思決定と言えます。」(148頁)と著者は述べています。なお、「清水の舞台から飛び降りる一大決心」となる理由として、見えないサービスを売るコンサルタントの場合、受注を予想することが難しく、たいていの賢明な企業内診断士は独立開業を思いとどまることを説明しています。
❶、❷、❸は共通して受注の難しさが関係しています。あるセミナーで、受注し事業を継続するには商品と店舗とお客様が必要であり、「情熱がある事」と「出来る事」と「市場」が重なり合ったものを商品化すべきとセミナー講師から説明がありました。「情熱がある事」と「出来る事」は自分でコントロールできる事である一方で、「市場」はそうではないことからテストマーケティングが重要であると思います。
私の場合は約10年で定年となることから、それまでの間に「出来る事」を増やす事と、それについてテストマーケティングを重ね、顧客ニーズを把握する事が大きな課題です。起業する場合は「清水の舞台から飛び降りる一大決心」となりますが、これらの課題をどの程度解決できるのかが決心の要件となりそうです。
【さいごに】
前回の記事に引き続き、日沖先生の著書について感想をまとめてみました。日沖先生の著作は、中小企業診断士の知り合いがいない私にとって中小企業診断士の現状を知る上で大変参考になります。
今回も記事を書くことで課題を整理することができました。「現状を認識して、自己の課題を明確化し、課題解決に向けて行動をする」ことを今後も継続します。
コメントを頂ければ助かります。