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花相の読書紀行№.76『漂砂のうたう』

第144回直木賞受賞作品、明治10年の遊郭

【漂砂のうたう】/木内昇
<あらすじ>
江戸から明治に変わり十年。御家人の次男坊だった定九郎は、御一新によってすべてを失い、根津遊廓の美仙楼に流れ着いた。立番(客引)として働くものの、仕事に身を入れず、決まった住処すら持たず、根無し草のように漂うだけの日々。
ある時、賭場への使いを言いつかった定九郎は、かつて深川遊廓でともに妓夫台に座っていた吉次と再会する。吉次は美仙楼で最も人気の花魁、小野菊に執心している様子だった。時を同じくして、人気噺家・三遊亭圓朝の弟子で、これまでも根津界隈に出没してきたポン太が、なぜか定九郎にまとわりつき始める。
吉次の狙いは何なのか。ポン太の意図はどこにあるのか。そして、変わりゆく時代の波に翻弄されるばかりだった定九郎は、何を選びとり、何処へ向かうのか――。
 
★感想
明治10年の遊郭が舞台。
時代に取り残されていく元武士の定九郎を中心に、様々な思いを抱えて生きる登場人物達を描いた作品です。
濃厚な小説、読み始めはなかなか大変だったけど、読み進むうちにこの本の魅力にどっぷりつかってしまいました。
ミステリではないのにミステリっぽさがあったり、怪談っぽさが有ったり・・・その内容は、多岐にわたっている面白い作品です。

とにかく暗い主人公の卑屈さに「おい、おい、それ違うんじゃない!?」と思いながらも、そんな主人公の気持ちも何となく分かる気がします。
ちょっと考えさせられるラストは、その情景が目に浮かぶほど素敵なものだったので、気持ちよく本を閉じました。

私って、こんな文学小説も読めるようになったんだー、と自分を褒めてあげたい!!( *´艸`)

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