花相の読書紀行No.25『ストリート・チルドレン』
ある血族の300年を描いた物語
【ストリート・チルドレン】/盛田隆二
<あらすじ>
「新宿」を舞台に、三百年にわたる「生」と「性」の軌跡を描いた、盛田隆二の衝撃的デビュー作。一六九九年、十九歳の青年が下諏訪から「内藤新宿」に出奔する。彼を一代目として流れ出た血の宿縁は、男色者、遊民、歌舞伎子、詐欺師、家出娘など、ことごとく路上の民で彩られながらも、一九九八年、出稼ぎフィリピーナとの間に子をなす十三代目の青年まで危うく一筋に流れる…。
★感想
“新宿”を舞台に、一人の男から始まる一族の300年を254頁で書き上げた作品なので、ボーっと読んではいけない作品です。かく言う私も、途中で人物の区別がつかなくなって、再度戻って確認しました(笑)
疾風のように過ぎる中でも、それぞれの人物像がしっかり描かれていることに、作者の作品に対する思いが伝わりいます。
衝撃的な描写には、どんな状況においても生きぬく人間の強さを感じながらも、その愚かさに苦虫を嚙む思いにさせられる。
逃亡者の三次から始まる一族の荒んだ人生の一つ一つが、縁ように受け継がれていくお話に、何処かで”血脈”を断ち切り、まったく違う生き方をしていく人物が出てきて欲しいと、切に願った作品でも有りました。