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花相の読書紀行№40『未見坂』

静かな筆致で描かれた日常

【未見坂】/堀江敏幸
<あらすじ>
山肌に沿い立ち並ぶ鉄塔の列、かつて移動スーパーだった裏庭のボンネットバス、ゆるやかに見え実は急な未見坂の長い道路……。時の流れのなか、小さな便利と老いの寂しさをともに受けいれながら、尾名川流域で同じ風景を眺めて暮らす住民たちのそれぞれの日常。そこに、肉親との不意の離別に揺れる少年や女性の心情を重ねて映し出す、名作『雪沼とその周辺』に連なる短編小説集。
・滑走路へ
・苦い手
・なつめ球
・方向指示
・プリン
・戸の池一丁目
・消毒液
・未見坂
・トンネルのおじさん

★感想
先般読んだ『雪沼とその周辺』を同じくした作風の短編集です。
尾名川流域にある田舎町を舞台に、人々の日常の一部を切り取ったようなお話は、そこで暮らす人々の心情を細やかに描いたノスタルジックな作品たちです。
ラストの“トンネルのおじさん”が良かったです。
寡黙なおじさん、温厚なおばさん、そして一人田舎で過ごすことになった少年の、お互いを思いながら流れていく時間がとても優しくて、乾いた私の心に一滴の水を与えてくれたよう感じました。


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