一分で心を鷲掴みにされた本
つい先日のことであるが、「こ、、これは!!」と、一ページ目からぐっと心をわしづかみにされ、「すぅ・・・すごい・・・!!こんなの初めて・・」と思わず喘ぎ声が出てしまうほどの素晴らしい本に巡り合ってしまった。これは断トツで上半期一位。
上半期総括
令和に気を取られ忘れていたが、2019年は早くも半年が過ぎようとしているのだ。
あれ、半年間私何してた?っていうくらい一瞬で過ぎ去ったような気がして空しくなるが、今年から始めた「読書メーカー」というアプリ(おすすめ!読書家のためのSNS。感想等共有できる。)の記録を見ては、着実に読み終えた本が積みあがっていることにほくそえみ、私が過去半年ちゃんと生きてきたという唯一の証明となっている。
今年に入ってから今日まで約40冊の本を読み終えた。
平均すると一か月に6.6冊。このままだと一年で80冊ほどしか読めない計算になる。今年は分厚い読み応えのある本(ex.「ベルリンは晴れているか」長かった~~(-_-;))をチョイスしてきたから仕方がないのではあるが、昨年は100冊読んだのでぜひ下半期はペースアップを狙っていきたいと意気込んでいる。
上半期、多くの良書に出会えた。「FACTFULNES」(ハンス・ロスリング )なんかは今までの価値観が覆されるようなインパクトのある良書であったし(本当にみんな読むべき本だと思う。)、「ぼくたちにもうモノは必要ない」(佐々木典士)ではミニマリストの考え方に強く惹かれ、人の価値は所有物では測れないということを知り、モノに頼らなくても確固たる自信を持った自分なりたいと思った。また、佐村河内さんのドキュメンタリー映画「FAKE」を監督した森達也さんの著書にはまり、メディアの在り方や、安倍政権、天皇制などこれまで興味がなかった分野にもアンテナを張るようになった。
絶対おすすめの一冊
さて、本題である。
私が開始一分で心を鷲掴みにされた本、それは
ブレイディみかこ著
「ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー」
だ。
ブレイディみかこさんは、イギリス在住のコラムニストだ。
故に著書は主にイギリスでの生活、イギリス社会についてである。
イギリスの政治や階級社会、労働者階級の生活などに焦点をあて、イギリスのリアルな生活の雰囲気を伝えてくれる。
本書は、彼女と、中学校に入学した息子の一年半の記録である。
彼らが暮らしているのは「荒れている」と評判の、いわゆる"底辺"の人々が多く住む地域。
人気のあるカトリックの小学校に通っていた息子("僕")が、家の近くという理由から底辺中学校に通い始めるところから物語は始まる。
この中学校、入学式がない。(というかイギリスにはそもそもそういう慣習がないようだが。)その代わり、なんと演劇発表会のオーディションが初日にあるという。”僕”はすごくまじめで、演劇のセリフをしっかりと覚えて初日に臨んだわけだが、実はそんなまじめな生徒は他におらず、演劇の主役級の役割を割り振られてしまうーー
そんな、とてもユニークな中学校での個性的で刺激的な日々が描かれている。
底辺中学校だから、様々な子供が通っているわけだ。
移民、貧民、レイシスト、いじめっ子。
そんな雑多な環境で"僕"は様々なことを経験する。
学校に、ものすごく人種差別発言をする生徒がいた。
「あいつはレイシストだ!」
と激する"僕"へ"母ちゃん"は言う。
「無知なんだよ。誰かがそう言っているのを聞いて、大人はそういうことを言うんだと思ってまねしているだけ。」
「つまりバカなの?」と忌々しそうな"僕"。
そこへ"母ちゃん"のこの一言。
「頭が悪いってことと無知ってことは違うから。知らないことは知るときが来ればその人は無知でなくなる。」
それから"僕"はこのレイシスト少年を嫌いになるでも避けるでもなく、「教えてあげることがいっぱいあるんだ!」とまさかの友達になってしまうのだ。
この無垢で純粋な"僕"の行動や発言、さらには"母ちゃん"の芯の通った息子への助言、素敵な言葉の数々に心を打たれない人がいるだろうか!?
ブレイディさんの文章からは、外国に外国人として暮らし、息子を育てる女性としての力強さ、芯の通った姿勢が感じられるし、一方で「Always 3丁目の夕日」かのような古き良き日本を感じられもする(観たことないけど。)から不思議だ。昭和の肝っ玉母ちゃんってこんな感じ?と想像してしまうのだ。
私はもともとイギリス文化や英語に興味があるのでブレイディさんの著書はすべて楽しく拝読しているが、本書はイギリスに興味がない人でも楽しめる内容であると思う。
非常に心温まる一冊だ。