CHA-LA HEAD-CHA-LAと叫けぶと俺も冒険に出られた
「アアー……、ブロリーの映画、みたいなー」
アクズメはyoutubeで最新のドラゴンボール映画のPVを観て呟いた。日本在住の読者諸君は「だったら見ればいいじゃない?」と思うだろう。だが思い出してほしい、彼が住んでいる場所が日本列島との距離は、地球からナメック星までくらいがある(誇張な表現)。それに二ヶ月前に日本から帰ったばかりだ。旅行資金が枯渇しているため、今の彼にとって日本へ飛び立つことは、ヤムチャでセルに勝つほど困難なのだ。
「ハァー……コンビニで貯まったポイントでコーヒー交換しよう……んん?こ、これはっ!?」
コンビニのサービス端末に、「ドラゴンボールシンフォニックアドベンチャー」の広告がよぎった。これはもしや……ブロリーが観れない俺への何らかの啓示では?彼はそう思い、チケット予約のページを進めた。あった。ドラゴンボールシンフォニックアドベンチャー、略してDBSA。1/4に、ナショナルコンサートホールで開演だって?来週じゃん!こりゃ買ったぜ!だが価額を目にした途端、彼は端末の前で凍り付いた。今残しているチケットは、安くしても締めて一万ゼニである。
「た、高い……高すぎる……!」
彼は貧困な訳ではないが、一気に大金を払う事に躊躇しがちで、払ったあとも罪悪が覚える、いわば貧乏性の男だ。
「クッソ、完全なめていた。ここDBSAを我慢して金をほかに使うべきか……いやでも、もしこのチャンスを逃したら……」
彼は数年前の悲劇を思い出した。あの頃、クイーンが彼が住む町でライブをするのだった。ファンのアクズメは当然チケットをチェックしたが、そこそこの位置でも、締めて二万ゼニがかかる。当時新人サラリマンの彼だったが、その気があれば買えたんだろう。しかし買わなかった。彼は現実に妥協し、Have a good timeのチャンスを逃した。脳内でフレディが俺にYou big disgraceと言っている。
「クゥーンヌヌ……俺は一体、どうすればいいのだ?」
その時、後ろに並んでいる髪型がキツツキみたいな筋肉ムキムキの中年は広い額に血管が浮かび、苛立たしげに言い放った。
「なぁにモタモタしていやがる!買う買わないか、五秒で決めろ!でないとオレがぶっ殺してやる!」
「うっ、うわあああああ!!!」
後ろから凄まじい気に圧倒され、アクズメはボタンを押し、チケットを購入した。
◆🥗◆
2019/1/4、夜。
仕事が終え、ナショナルコンサートホールに辿りづいた。もうここの来るの何年ぶりか。そとでは相当の人数が大階段に座っている。なかにはドラゴンボールのキャラTや亀仙流道着をモチーフしたTシャツとパーカーを着ている者が見れた。悟空のコスプレしているガチ勢すら二人ぐらい確認した。子供も居るがやはり20~30代の割合が圧倒的に多い。あの携帯電話おろか、ネットすら不自由だった時代、放課後、テレビで無限ループ放送されるドラゴンボールのアニメが、数少ない娯楽だった。共同の記憶だ。あっ、あそこに人の目を気にせずかめはめ波を撃っている男の子がいるぞ。いいね、若い世代にもドラゴンボールが通じているようだ。
開演までまだ半時間だが、もう入場ができるそうだ。エントランスに入り、今日の曲目リストを発見した。
うーむ、正直把握できたのは数曲しかないな。そして真のドラゴンボールファンなら、もう気付いただろう。今回のBDSAには、スペシャルゲストとして、ドラゴンボールの第一テーマソング「摩訶不思議アドベンチャー」を歌った高橋洋樹さんが来て、何曲を歌ってくれるそうだ。なんかワクワクしてきたぞ。トイレを済ませ、席に就いた。
悟のマークが付いた太鼓
解像度は酷いが太鼓を叩く悟空です
開演までの間に、読者諸君にBDSAとはいかなるものか説明しよう。ドラゴンボール・シンフォニック・アドベンチャーとは、その名の通り、アニメドラゴンボールとドラゴンボールZの主題歌、挿入曲を、シンフォニックバンドで演奏する。特徴としては演奏と同時に、中央のスクリーンに編集したドラゴンボールアニメーション(公式MADみたいなものだ)が流れることと、観客は歌うことが許されるところか。お上品なオーケストラと言うよりは、みんなでわいわい盛り上げるお祭りみたいな感じだ。
開演前のアナウンス終わり、観客席のライトが消され、楽手たちが入場した。最後に一人の白人男性(厳密に言うと通訳もいるが)が舞台の前に出た。
「こんばんは。ドラゴンボールシンフォニックアドベンチャーのプロヂューサー兼主催者ダミアンです」
と訛った英語で言った。俺はまず、このイベントの運営は日本側ではないことに驚いた。
「台北フィラモニック・オーケストラの助力を得て、こうして我々がこの国でアドベンチャーできて、大変うれしく思います」
なるほど、開催される場所に応じて当地の楽団にオファーして演出するのか。
「今夜の曲目は2パートに分かれます。前半はドラゴンボールで、後半はドラゴンボールZで盛り上げていきます」
そうか、Zまでか。別にGTや超を入れてもいいと思うけどな。
「それじゃあ話もそこそこにして……皆さんはサプライズゲストが好きな?」
「「「「「イェェェェーッス!!!」」」」」
「オーケー!では彼を迎えましょう!Mr.タカハシ!」
「「「「「「ワオオオオオオーー!!!」」」」」
歓声と共に、もう一人が舞台に上がった。アジア人だ。高橋洋樹である。彼は小さくお辞儀し、マイクを持った
「アー、ユー、レディー」
「「「「「イェェェェーッス!!!」」」」」
スゴイ歓声だ。
「そんじゃ行きますよ!かーめーはーめー……」
おっとこれはもしかして最後に観客と一緒に「はぁーっ!」と決めて、一体感を高めるやつか?良いだろう、普段はこんな恥ずかしいこと絶対しないが、せっかくのアドベンチャーだ。叫ばせてもらうぜ!耐えろよ、腹筋!
「「「「「「はぁーーーーっ!!!」」」」」
◆🐉◆ ◆〇◆
高橋さんが歌う「摩訶不思議アドベンチャー」で幕を開け、空から落ちてきたしっぽが生えた赤ん坊が年老いた武術家の孫悟飯に拾われるシーンから始まった。幼少期の悟空はすでにパオズ山において敵なしだった。そんな彼はある日、バイクを跨る少女ブルマと出会い、七つのドラゴンボールを探す旅に出かけた。
ドラゴンボール(無印)のアニメ、観てはいたが、記憶があまりない。レビューにはちょうどいい機会だ。スクリーンに映った内容は放送当時の内容を編集し、仕上げたもので、つまり、ドラゴンボールのアニメがよく咎められる、「露骨な尺稼ぎ」「テンポの悪さ」が完全に排除され、音楽と共に、我々は気分よく悟空の旅を体験できるわけだ。そして「めざせ天下一」の軽快なイントロと共に、高橋さんが再登場。しかし観客の反応はいまいちである。無理もない、日本人すら知る者が少ないであろう。ジャッキー・チュンって誰だったか思い出すにはちょっと時間かかった。
最後は成長して青年になった悟空が天下一武道会でマジュニアと出会い、それを退けて、はじめての優勝を手にし、チチとの結婚式で、物語が終わりを告げた。「ドラゴンボール伝説」、この曲を聴くのは今日初めてだよ。反応はいまいちだ。ごめんよ、この国のドラゴンボールファンの平均戦闘力は多分20ぐらいですから。
◆休憩◆
◆再開◆
◆Z◆
シュッパーン!なん百回聞いてきたイントロだ。会場が沸きたった。もはやドラゴンボールの代名詞となったこの曲、今晩は生で聞ける!俺わくわくしてきたぞ!
「光る 雲を突き抜け Fly away!」と高橋さんはマイクの観客席に突き出した。わかったぞ!こうですね!
「「「「「Fly away!」」」」」
「からだ中に、ひろがるパロラマ~ 顔を 蹴られた地球が怒って~!」
「「「「「おこって~!」」」」」
「火山を 爆発させる~~~! 溶けたこおりのなーかでー 恐竜がいたら 玉乗り仕込みたいねぇー」
再び突き出さるマイク、みんな、いくぞ!
「「「「「CHA-LA! HEAD-CHA-LA!!」」」」」
おお……なんという……これが現場、これがコンサート、これがPOWER。この時、場内二千人の心が一つになった気がした。CHA-LA HEAD-CHA-LAという言葉によって!
さすがはドラゴンボールの黄金時代というべきか。ドラゴンボールZパートの盛り上がりは尋常ではなかった。音楽、画面、粋な演出、これはオーケストラであり、映画であり、そして冒険(アドベンチャー)でもある!悟空が初めて超サイヤ人に変身したシーンの演出が神がかっていた。
◆ENCORE◆
ドラゴンボールZは非常にポピュラーの作品のため、内容についての省略したおこう。魔人ブウを倒し、地球に再び平和が訪れた。年月が立ち、悟空は天下一武道会でウーブという少年と出会い、師匠になり稽古つけてやると誘い、ウーブを背中に乗せどこへ飛んで行った。Zの物語がここで終わを告げた。盛大な拍手の中で、ダミアンが再び舞台に出た。
「皆さん、今夜ご来場いただき、ありがとうございました。はドラゴンボールシンフォニックアドベンチャーを、楽しんでいただけたでしょうか?」
「「「「「イェェェェーッス!!!」」」」」
「もっと見たいと、思っている方が、この中にいますか?」
「「「「「イェェェェーッス!!!」」」」」
「わかりました。来年、私たちは新しいショーを持ってきます。その名はー」
(テレレテーレレ、テレレテーレレ、ダン!ダン!)
突如に会場を響き渡るペカサス幻想!これはまさか!?
そのまさかだスクリーンは今、手を流水のように滑らかに動かす星矢が映っている。
「「「「「「ワオオオオオオーー!!!」」」」」
会場が再び沸き立ったが、アクズメの反応は微妙!彼はセント・セイヤに関しては疎い!
SAINT SEIYA SYMPGONIC ADVENTURE EUROPEAN TOUR 2020
ダミンアさん、相当のオタクと見た。
「そして最後に彼を呼ばないと話しになれませんよね?ウェルカムMr.タカハシ!」
「「「「ワオオオオオオーー!!」」」「「「ぎゃあああーー!!」」」「「ヒューッ!ヒューッ!」」
完成を浴びながら高橋さんが登場した。
「皆さ、楽しんだかぁー!?」
「「「「「はーい!」」」」」
「私ね、この摩訶不思議アドベンチャーを初めて歌ってから、もう今年が33年が経ちまして……」
33年。つまり俺が生まれるまえにすでにドラコンボールのアニメが放送されたのか。俺は歴史的感慨を覚えた。
「そして最後に、皆さんと一緒に楽しみたいので、日本ではライブで摩訶不思議アドベンチャーをやる時。もっと楽しめる方法を教えます。例えば『掴もうぜ!』のあとはみんなが『ヘイ!』と言って、『ドラコンボール!』のあと『フッフゥー!』と言います。あとは説明しなくていいですよね?じゃあ行きますよ!」
(デロデン、タッ!デロデロデロデロデン、タッ!デン!デン!デン!)
走るベースの音!会場が再び熱気に包まれた。
本当に来てよかった。30歳にもなって、初めてのコンサートを体験できた。しかも大好きのドラゴンボールの楽曲とこんなにハイクオリティな場所で、ハイクオリティの演出が観れるんなんて、DBSAに関わるすべての方々に、感謝申し上げます。DBSAは文字通りの、アドベンチャーであった。
ひとつの冒険が終わったが、その余波は波紋となり、アクズメの心を揺さぶった。俺はもう迷わない、これからはもっとイベントに参加し、未知なる冒険に挑むと決めた(誇張の表現)。
おまけ:
数多くの楽手の中に、非常に目立っていた者がいた。みんなが厳めしい黒い正装をきめた中で、その白人のトラマ―だけが黒いTシャツを着ている。白人とTシャツだけでもうかなり浮いてるが、その者はなんと、髪の毛を銀色に染め上げている。もしかして身勝手の極意を極めている?楽譜や指揮者を見なくても体は自動的にリズムに乗ってトラミング的な?ってつい思っちゃうよね。あの銀髪は絶対わざとでしょう!いいぞ!
あと摩訶不思議アドベンチャーのあともう一つアンコール曲があったが、文字化するには困難なほど尊かったので割愛します。
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