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地上波映画の「消極的」視聴の効用

メディアの発達のお陰で、今では書籍もドラマも音楽も見放題・聴き放題(無料有料あり)。しかも、自分の好きな時間に、好きな場所で。

「他者との共有」が前提だった音楽が、ウォークマンの登場により「個」のモノになった時の衝撃以上の事態が、現在では静かに進行しています。

映画も現在ではさまざまな動画配信サイトに溢れていますが、かつては地上波テレビで見るのが主流。民放各局がゴールデンタイムに看板映画番組を持ち、名物解説者が新旧さまざまな名画を紹介し、放送していました。

当時はまだテレビとは家族全体で見るもので、音楽番組もドラマも、そして映画も大人から子供まで一緒に見ていたものです。現在の基準から言えば、子供には理解できない、あるいは子供には不向きな作品もありましたが、それでも「消極的」に見ていました。

そして、今にして思えば「消極的」にでも、さまざまな映画に接することが、多くの人たちの映画素養の基礎となっていた気がしますし、幅広い映画文化の基盤にもなっていたように思います。

見たいものだけを見る、聴きたいものだけを聴く、その時点の嗜好だけで作品を「積極的」に選んでいたら、無限にある可能性を潰してしまうのかも知れません。そういう意味で、「消極的」にでも見る機会であった地上波映画は貴重であったなと。

現在、ゴールデンタイムで放送されている映画番組は、日本テレビの『金曜ロードSHOW!』のみ。かつてはジブリ映画や『コナン』シリーズなど、視聴率が取れそうな作品が目立ちましたが、最近は名作映画のリクエスト特集もやっていて、嬉しい限り。

どうしても録画されがちで、リアルタイム視聴率が取りにくい地上波映画ではありますが、他局でも復活してくれたら嬉しいです。

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