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意義ある敗訴…今週の『虎に翼』

日本初の女性弁護士で、後に裁判官となった女性・猪爪寅子(伊藤沙莉さん)とその仲間たちが、困難な時代に道なき道を切り開き、迷える子供や追い詰められた女性たちを救っていくリーガルエンターテイメント、朝ドラ『虎に翼』の第23週「始めは処女の如く、後は脱兎の如し?」。

「始めは処女の如く、後は脱兎の如し?」とは、「初めはおとなしく弱々しく見せて敵を油断させ、のちには見違えるほどすばやく動いて敵に防御する暇を与えないという兵法のたとえ」の意(コトバンクから引用)。

原爆裁判の4年に渡る準備手続きが終了した月曜日。直明(三山凌輝さん)に子供が産まれたり、朋一(井上祐貴さん)が長崎地裁で判事補になったりと、子供世代が成長・活躍する中、百合(余貴美子さん)は物忘れ、寅子は体の不調など老いが進み、雲野六郎(塚地武雅さん)は「おにぎり死」。

雲野の死を知らされた寅子でしたが、裁判への影響を考え、葬儀には出ず。1960年(昭和35年)、原爆裁判の第1回口頭弁論。なぜか傍聴人が一人もいない中(演出)、法廷に現れたのは、老いた姿の竹中(高橋努さん)でした。

竹中が、雲野から裁判を記事にして欲しいと依頼されていたことが判明した火曜日。航一(岡田将生さん)は気になったいたことを図書館で調べ、寅子の体調不良は更年期障害、百合の物忘れは老年性痴呆(現在の認知症)ではないかと推測。

1年半後の1961年(昭和36年)、百合の症状はさらに進み、のどか(尾碕真花さん)は銀行に就職。原爆裁判では、嘉納隆義教授(小松利昌さん)と保田敏明教授(加藤満さん)の国際法解釈が真っ二つに分かれる中、よね(土居志央梨さん)は嘉納教授に、冷静かつ想いを込めた反対尋問。

竹中の記事の反響で、傍聴人が一気に増えた水曜日。世論への影響を恐れ、桂場(松山ケンイチさん)へも権力側から圧力がかかっている模様。更年期障害の寅子へ向けた、梅子(平岩紙さん)の「こちら側へようこそ!」が連帯感があって良かったです。

一方、百合と一緒にいる時間が多い優未(毎田暖乃さん)にも疲れの表情。そんな時、百合のことをやり過ごしているのどかを発見。これまでの不満を口にしながら、自己正当化する姿に優未は「バカ!」と切れ、中段回し蹴り。家を飛び出したのでした。

優未とのどかのトラブルの一報が入り、寅子がどうすべきか思い悩む中、「イマジナリー猪爪家」が総出演した木曜日。優未は山田轟法律事務所を訪れていて、轟(戸塚純貴さん)の恋人・遠藤時雄(和田正人さん)に諭され帰宅すると、のどかとあっさり仲直り。

原爆裁判の当事者尋問のために上京してきた被爆者の吉田ミキ(入山法子さん)でしたが、よねは彼女の心境を察し「声を上げた女に、この社会は容赦なく石を投げてくる」と、中止をすすめ、裁判では代読という形が取られました。

桂場のアンコ審査に合格し、梅子が「竹もと」を任されることになった金曜日。ちょうどそのタイミングで、道男(和田庵さん)が「笹寿司」継承の件で寅子に相談。それを聞いた梅子が助け船を出し、一緒にやらないかと提案。道男も応じたため、お寿司と甘味が味わえる斬新な「笹竹」爆誕!

そして、原爆裁判の判決。主文を後回しにし、判決理由を先に読み上げるという当時としては異例の展開。原爆投下の非人道性を認めると共に、被爆者への国の責任と政治の貧困を厳しく追及する内容。しかし、判決は原告敗訴。とはいえ、「負けて勝つ」意義ある裁判でした。

余談:2015年放送の『民王』の続編、『民王R』の追加キャストとして、なにわ男子の大橋和也さん、「あの」さん、山時聡真さんが発表されました。高齢者向けのイメージが強いテレビ朝日も、若者のコア視聴率が欲しいんだろうなと推測されるキャスティング。

前作『民王』は遠藤憲一さん演じる総理大臣の秘書を演じた高橋一生さんの大ブレイク作品であり、遠藤さんとW主演だった菅田将暉さんの出世作。ジャンル分けが難しいものの、最高に面白い傑作でした。

続編に菅田さんと高橋さんが出演しないのは、今のポジションからいって当然だろうなとは思っていましたが、菅田さんと同じ事務所「トップコート」の山時聡真さんが入るあたりに、業界の根回し文化を感じます。あっ、山時さん自身は『君たちはどう生きるか』に主演している実力派若手俳優です。

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