恩讐の穂高逝く…今週の『虎に翼』
日本初の女性弁護士で、後に裁判官となった女性・猪爪寅子(伊藤沙莉さん)とその仲間たちが、困難な時代に道なき道を切り開き、迷える子供や追い詰められた女性たちを救っていくリーガルエンターテイメント、朝ドラ『虎に翼』の第14週「女房百日 馬二十日?」。
「女房百日 馬二十日」とは「どんなものも、はじめのうちは珍しがられるが、すぐに飽きられてしまうというたとえ。妻は百日、馬は二十日もすれば飽きてしまう』との意から(ことわざ辞典から引用)。
茨田りつ子(菊地凛子さん)の一言で、寅子が日本一有名な裁判官となり、多忙を極めていた月曜日。「出る杭は打たれる」は世の常で、「分をわきまえる」と無縁の寅子ならばなおさら。少年部や家事部からも苦情を受けることに。
そんな中、桂場(松山ケンイチさん)と久藤(沢村一樹さん)から、最高裁長官・星朋彦(平田満さん)の本の改稿作業の手伝いを依頼された寅子。星の息子で判事の航一(岡田将生さん)と顔合わせするのですが、初見は本音が読めない、どうにも「やりづらい」男でした。
寅子が『日常生活と民法』の改稿作業に追われていた火曜日。娘・優未(竹澤咲子さん)は寂しげで、いずれ何か起こりそうな時限爆弾。家事部と少年部の不満を和らげようと、寅子が提案した昼食会には誰も現れず。妄想で現れた小橋(名村辰さん)は、寅子に睨まれるもらい事故(笑)。
あとは長官の序文のみというところで、「竹もと」で航一から表紙を見せられた寅子は、「佐田寅子補修」の文字に感激。その後、長官が現れ、序文を朗読。店内の皆が拍手する名シーン。しかし、長官は本の出版前に死去。短い出番でしたが、平田さん良かったなあ。
寅子が日本人男性の梶山裕司(菟田高城さん)と、フランス人女性の梶山ルイーズ(太田緑ロランスさん)の離婚調停を担当することになった水曜日。2人はたびたび窃盗事件を起こしている息子の梶山栄二(中本ユリスさん)の親権を押し付け合い。
寅子が新設された生理休暇も取れないほど多忙な中、優未は思わず直明(三山凌輝さん)に愚痴。そんな中、最高裁での「尊属殺の規定」に関する判決において、15人の判事の中で穂高(小林薫さん)含め、二人だけが反対意見を述べたことが判明。
アンジェラ・アキ似の太田緑ロランスさんですが、朝ドラ『半分、青い。』ではユーコ(清野菜名さん)の担当編集者役、『ハゲタカ』では鷲津(綾野剛さん)の部下役、『グランメゾン東京』では相沢(及川光博さん)の妻を演じていました。
桂場から穂高の退任祝賀会の手伝いを頼まれ、寅子が渋々引き受けた木曜日。寅子は穂高のスピーチの内容に切れ、花束贈呈係を放棄し退出。さすがの桂場も「ガキ!」と叱責します。
出てきた穂高へも、感謝を口にしながら「許さない」とまで言い切る寅子。法曹界へ導いてくれたことや、父の弁護を引き受けてくれたことなど、寅子個人にとってのみならず、法曹界全体に果たした穂高の功績は大きく、晴れの場で、まさかこんな大恥をかかされるとは(驚)。
寅子と穂高のこじれてきたこれまでの経緯はあるにせよ、あれだけ強い言葉を吐くのは、むしろ肉親に近い感情というか、穂高にこうあって欲しい、というような寅子の理想が、反転して怒りになったのかな。
あれだけの啖呵を切ったものの、寅子が激しく後悔していた金曜日。突然、穂高が訪ねて来て、先に謝罪すると共に、自分とは違う資質を持っている寅子を持ち上げ、誇りに思うと。気を良くした寅子も、穂高の教え子であったことを誇りに思うと、二人は和解。
本来、寅子が自分に恩愛の情にも似たものを感じてくれていると知っていた穂高は、怒りが収まったタイミングで職場に乗り込み、気勢を制して寅子に有無を言わせず、最後は笑顔で終わらせました。思慮深い人格者でもありつつ、一芝居打つこともできたというわけですね。
英二の件は、両親以外のアプローチで解決。そして、穂高が亡くなり、「竹もと」で寅子ら関係の深い者たちが献杯していると、桂場酔っぱらい「穂高イズム」を叫び、皿をバリバリ食べはじめ(笑)。
穂高が違憲だと反対意見を述べた尊属殺裁判。その時は大多数が合憲としましたが、約20年後にある事件を巡って、最高裁は「尊属殺の重罰規定は、法の下の平等に反するとして無効」としました。
その時の裁判長は石田和外という方で、桂場のモデルの人物。「穂高イズム」は、時を超えて確かに引き継がれたのでした。恐らくは、今後ドラマでも描かれる胸熱展開。
余談:朝ドラは一週間をまとめるスタイルをとっています。毎日、コツコツ感想を下書きしながら、今週のタイトルを考えます。脚本家・制作側の週サブタイトルはもちろんあるわけですが、自分が感じたその週のエッセンスを、言葉にできたらといつも思います。