図鑑に刻まれた永遠の愛…最終週『らんまん』
江戸時代末期、土佐の裕福な商家に生まれた、後の天才植物学者・槙野万太郎(森優理斗さん→小林優仁さん→神木隆之介さん)。東京帝大植物学教室の助手として研究に没頭。理不尽な目に合うも、夢のために情熱を失わず突き進んでいく、朝ドラ『らんまん』の最終週「スエコザサ」。
万太郎と寿恵子(浜辺美波さん)の晩年。万太郎の夢を守るため、東京郊外に広大な土地を購入した寿恵子が、「万太郎さん、私やり遂げました」と語った月曜日。
OP後、時代は二人がこの世を去った昭和33年へ。個性を出さずに、裏方に徹していたナレーションの宮﨑あおいさんが藤平紀子役で登場。この最終週のために、わざと気配を消していたんですね。
これまた槙野家の三女・千鶴役で松坂慶子さんが再登場。宮﨑さんと松坂さんと言えば、大河ドラマ『篤姫』における篤姫と幾島の名コンビ。万太郎の遺品の標本整理を千鶴から依頼された紀子。
その膨大な仕事量に圧倒され、一度は断る紀子でしたが、震災や戦災を乗り越えて、標本を守り抜いてきた万太郎と槙野家の強い想いに気が付き、自身の体験を重ね合わせて引き受けることに。
紀子が標本整理に手を付け始めた火曜日。残されたヒントから地名特定する紀子に、千鶴は「名探偵、明智小五郎ね!」と。万太郎と寿恵子の念願だった植物図鑑も完成形が登場。視聴者としても感慨深く。
時代は再び遡り、有名になった万太郎を訪ねてきた子供たちに、お茶を出そうとした寿恵子が急須を落として割ってしまい…以前にもあったようで、病院に連れて行くという万太郎。
そんな二人を訪ねてきたのが、東大植物学教室時代からの盟友である波多野(前原滉さん)と藤丸(前原瑞樹さん)。波多野は万太郎に、理学博士にならないかと打診。
万太郎が理学博士の話を一旦は断った水曜日。しかし、波多野の説得や、寿恵子の「(理学博士という肩書を得て)植物図鑑を出すとなったら、売れに売れて、売り切れ御免の大増刷ですよ」との言葉に後押しされ、推薦してもらうことに。
理学博士号の授与と記念スピーチという、小学校中退の万太郎にとって、一世一代の晴れ舞台。万太郎を推薦してくれた一人でもある徳永名誉教授(田中哲司さん)もスピーチ会場に現れ、「最後まで世話が焼ける」と微笑みました。そして、万太郎による感動のスピーチ。寿恵子も涙。
不治の病とわかった寿恵子のために、急ピッチで植物図鑑づくりがすすめられた木曜日。助っ人として、野宮(亀田佳明さん)・虎鉄(濱田龍臣さん)・藤丸・波多野・佑一郎(中村蒼さん)に加え、植物採集仲間の小畠役でムロツヨシさんがサプライズ登場。
また、かつて十徳長屋に住んでいた丈之助(山脇辰哉さん)がシェークスピア全集をもって現れ、演劇博物館の夢を語るという展開も。モデルは早稲田大内に「坪内博士記念演劇博物館」があることから坪内逍遙で確定のようです。
綾(佐久間由衣さん)と竹雄(志尊淳さん)が酒造を再興し、新酒「輝峰」を万太郎の元に届けた金曜日。廃業した「峰屋」の看板酒だった「峰乃月」の「峰」が使われているのも泣けますし、放送後の公式写真には「醸造元綾乃竹酒造」の文字。綾と竹雄の文字からとった、美術さんのこだわり。
そしてついに植物図鑑が完成。そこには、仲違いすることになった田邊(要潤さん)や徳永、藤丸、波多野、野宮など、万太郎がこれまで出会い、教えを請い、交友し、影響を受けた人たちと家族への謝意が書かれていて。
ページをめくりながら、寿恵子と語らう万太郎。図鑑は「3206種。万ちゃん、らんまんですね」と二度目のタイトル回収。最後に、図鑑の最後に描かれた新種の「スエコザサ」を見た寿恵子は、「万ちゃんと永久に一緒にいれるんですね」と涙。
まもなく先立つ寿恵子は「私がいなくなったら、いつまでも泣いてたらダメですからね」と愛あるダメ出し。万太郎は「愛しちゅう。寿恵ちゃん、わしらずっと一緒じゃ」と抱きしめました。史実を少し変え、直接的に寿恵子の死を描かないやり方でしたが、いい最終回でした。