ドラマ日記『海のはじまり』(最終回)
大学時代、同級生の南雲水季(古川琴音さん)と付き合い、別れた月岡夏(目黒蓮さん)。7年後、水季が亡くなり、海(泉谷星奈さん)という娘がいたことを知り、さらにその父親が自分だと聞かされて…親子の愛を通して描かれる家族の物語『海のはじまり』の最終回。
ベッドではなく床に敷いた布団で目を覚ます夏。海のランドセルやぬいぐるみが視界に入るが、海の姿はない。「…海ちゃん」と呼びかけるが、返事はなく、部屋は静まり返っている。
北野武監督に『あの夏、いちばん静かな海。』という作品がありますが、そんな映画タイトルを思い出させるように、静かに終わった最終回。様々な登場人物たちの感情がぶつかり合い、ネット上でも賛否が分かれた作品ではありましたが、予想通りの軟着陸エンド。
夏が海に歩み寄り、二人生活を再開。夏に急な仕事が入ると、一人で留守番の海のために、津野(池松壮亮さん)・弥生(有村架純さん)・大和(木戸大聖さん)にアパートに来てもらうなど、他人に甘えることも覚え。水季の手紙にあった言葉が、本作の核だったのかな。
「人は二人の人から生まれてきます。一人で生きてくなんて無理なんだよ。夏くんも誰かと生きてね。海を幸せにしながら、自分も幸せになってね。」
第5話の感想で、本作は近年の「疑似家族」ドラマ流行へのカウンター作品ではないかと評しましたが、「疑似家族」+「血縁家族」のハイブリットものでした。
血の繋がりでもいいし、他人の繋がりでもいいから、周囲の人に頼る。子供を幸せにするのもいいけれど、それは自分を犠牲にすることが前提ではなく、自分自身の幸せも追求する、そんな家族像。
まあ、水季が余命を知った段階で、夏に海のことを告白し、話し合っていれば、様々なトラブルは避けられたとは思いますが、朝ドラ『虎に翼』の美佐江(片岡凜さん)に比べれば、海に愛情を注いでいた分、ずいぶん違います。
天の視点を与えられた視聴者からすると、水季に対してあれこれ言いたくなりますが、人間なんて大抵の場合は一貫性のないブレブレの存在で、その時その時の感情で動いたり、判断を誤ったり。そんな自分の人生を承知の上で、死に際し、海にとって最善と思える手紙を水季は残したのでしょう。
結局、夏と弥生の復縁はありませんでしたし、その気配も感じられませんでしたが、むしろ弥生と大和の線はあるのかなと、スピンオフドラマ『兄とのはじまり』の頃から感じていました。たしか、父・和哉(林泰文さん)が「手を出しちゃダメだぞ」みたいなツッコミを入れていて。
夏ドラマの中でも、最後までリアルタイム&等倍視聴だったのは、この作品と『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった(#かぞかぞ)』だけ。記憶に残る一本となりました。
余談:Youtubeで配信されている、映画『ラストマイル』プレミアムトーク〈Episode.3 『アンナチュラル編』〉を見ました。司会は引き続き満島ひかりさんで、ゲストは石原さとみさん・井浦新さん・市川実日子さん。裏話も色々あって楽しかったです。