若手時代に学んだこと〜他者と働く〜
はじめに
はじめまして、アカツキ福岡CXの石川です。
僕は今年アカツキ福岡に仲間入りしたので、初のCXアドベントカレンダーの執筆となります!
まだCX業務について多くを語れるわけではないので、今回は社会人になってから学んだことを中心に現在の業務に通ずる点をお話しできればと思います。
また、主題についてはずっと悩み続けていたことだったのですが、8月に近内悠太さんにお会いしたことで一気にモヤモヤが晴れました。そんな素晴らしい2023年の変化もあわせてお伝えしていきます。
▼近内悠太さんの著書『世界は贈与でできている――資本主義の「すきま」を埋める倫理学』
他者と分かり合えないとまで思った過去
前職では上場企業様の各ステークホルダーに向けたコーポレートコミュニケーションのご支援をしていました。
具体的には、従業員向けの社内報制作支援や求職者向けの採用サイト制作支援、消費者向けのCM制作支援など、様々な目的に応じて紙・Web・動画を選択し、コミュニケーションをデザインする仕事でした。
僕自身の職域は、お客様の元に訪問して問題や課題を抽出し、解決策を提案する営業・コンサルティング業務と制作メンバーに依頼する編集・ディレクション業務で、お客様に成果物をお届けするまでに、社内外でたくさんの方を巻き込む必要がありました。
そんな社会人になって最も苦しんだことがあります。
それは、みんながお客様に喜んでもらうことを思って仕事をしているはずなのに、その素晴らしい外向きのエネルギーが次第に内向きのエネルギーに変わり、成果物を出すころにはチームの関係性が悪化している現象です。
日々お客様と対面で接している僕が言っていた当時の最悪の口癖はこれです。
「俺はこんなにもお客様に喜んで欲しいと思ってやっているのに、なんでなんだ。本当に〇〇さん(社内のデザイナーさん)とは分かり合えないかもしれない」
今振り返ると「お客様のために」という言葉の本質を捉えず、自己中心的な働き方をしていただけです。
真の喜びを生むためには、チームメンバーに力を最大限まで発揮してもらい、最適なアウトプットをお客様に選択肢をもちながら自信をもって選んでもらうこと、が大切だと知る由もありませんでした。
前工程はお客様、後工程は神様
このような僕に、上司がかけてくれた言葉があります。
「前工程はお客様、後工程は神様」です。
目の前にいるのはお客様で、もちろん大切にする。だけど、お客様に価値を一緒に届けるライターやデザイナー、エンジニアといった後工程の方々を神様だと思ってより丁寧に接するような意識をもちなさい。
一人で出せる価値なんてたかが知れている、一緒にやってくれるメンバーを大切にしていたら自分では想像しえないような到達点にいけるときが絶対にくる。
このように何度も何度も伝えてくれました。
それ以降、メンバーにお客様の声や想いを鮮度高く伝えられるように即時共有を徹底したり、朝出勤しているメンバーと少し雑談してから外出したり、自分の仕事の状況を素直に伝えてスケジュール調整を早めにお願いしたりと行動を大きく変えました。
今思えば当たり前のことですが、この変化によってメンバーと話す回数が格段に増え、提案のクオリティも精度も上昇しました。またそれだけでなく、お客様にもチームの一体感が伝わり、「制作メンバーの方に直接お礼を言わせてください」と何度も言われるくらい、変貌を遂げました。
いかに後工程のメンバーが気持ちよく働くことができるのか、本来の仕事にかける想いに最大限注力ができるかを考え、自らの行動を変えることで想像の先に辿り着くことができたのです。
“俺とは違う”
「前工程はお客様、後工程は神様」という言葉が仕事観を180度変えてくれて、多くの仕事で成果がでるようになりました。
しかし、そんな中でもどうしても対人関係でうまくいかないメンバーがいました。
明確な価値観や仕事観を持っているからこそ、お互いの価値観や仕事観がぶつかり、お客様へのアプローチを打ち合わせしても幾度となく折り合いがつかないことがありました。
「こうでしょ」と言っていただいたことが、6割くらい理解できるのですが、具体でお客様を想像するとずれていそうな感覚を抱き、首を縦に触れない、といった状態です。
納得いかないものをお客様に出すことは不誠実だと考えていたので、納期間際になんとかお願いして、僕案とその方の案を両方仕上げてもらい出すこともありました。押し切ることが必ずしも正解だとも思わなかったからです。
本来であれば、チームとしてしっかりと合意してから自信をもって提案するのがよい仕事の進め方だと思うのですが、当時の僕は本質的な解決に糸口が全く見えなかったので、そこに労力を割くことを諦めてしまいました。
「俺とは違う」と割り切ってその中でどのようにベストパフォーマンスを出すか、という手法の工夫で乗り越えようとしていたのです。
様々な先輩方に相談した際にも、違うということを認めてどうするかを決めるという選択をする人が多かったです。
それでいいのか、と納得していた部分もありますが、モヤモヤは消えませんでした。
解決のヒントは突然やってきた
そのモヤモヤを解消することなく、転職してきました。
入社した直後は、他職種の方と関わることもほとんどなく、むしろ価値観が近い方がまわりにたくさんいたので、「違い」を感じる場面はありませんでした。
そんなある日、チームメンバーから近内悠太さんのワークショップに参加しないかと声をかけもらいました。同時に「この本を書いた人だから」と薦められたので、『世界は贈与でできている――資本主義の「すきま」を埋める倫理学』を読み進めました。
すると、「第5章 僕らは言語ゲームを生きている」で雷に打たれたような衝撃をうけました。「違う」と諦める以前に「知る」ことができていなかったと気付かされたのです。
この本では、コミュニケーションにおいて会話を成立させているルールのようなものがあり、逆に言えば、相手とルールが異なれば、会話は成立しない。このように、ルールに基づいたゲームをプレーするようにコミュニケーションを捉える概念を「言語ゲーム」としていました。
僕たちはよく、他者の心の内側や頭の中を覗き見ることはできず、だから、相手が言葉の意味を本当に理解しているか否かを知ることはできないと、つい思ってしまいます。
しかし、コミュニケーションがうまくいかないのは、他者の心の内側が分からないからではなく、その他者が営んでいる言語ゲームに一緒に参加できていないからであり、その人の言語ゲームが見えないから。
さらには、無理やり自分がすでに知っている手持ちの言語ゲームをその人に当てはめようとして憤慨しているのだと。
「俺とは違う」としていたメンバーの仕事観がどのように形成されてきたのか、どんな成功体験が誇れるものなのか、今目指していることはなにか、など全く知らなかったことに気づいたのです。
家族構成や年齢や趣味などは知っていたのですが、そのような日常会話ではなく、どんな言語ゲームをもとに働いているのかに迫り、理解すべきだったととても反省しました。
言語ゲームを理解しようとする、これが他者と働く上での最高のヒントでした。
さいごに
「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」
ありきたりかもしれませんが、とても好きなことわざです。
たった一度きりの人生、僕はみんなと遠くに行きたい。
だからこそ、他者と働くということを諦めたくない。
しかも、全員が遠慮などせずに本気で生きる世界でです!
若手時代にもがき苦しんだ経験から、ようやく2つの大きな壁を乗り越えました。
そしてスタートラインにたったと感じています。
CX業務において、プランナーやデザイナー、QAの方など様々な職種の方と仕事することがこれから多くなります。
「前工程はお客様、後工程は神様」を徹底し、それぞれが外向きのエネルギーで仕事ができるようにすること、加えて、「言語ゲーム」の理解に努めることで関係性を構築し、みんなで大きな成果を辿りつく組織をつくること、を実現し、貢献していきたいと思います。
さいごに、ここまで書いてみて、自分ってとても不器用なんだなと自覚しました。
振り切って失敗しないと気づかないなぁと。
これまで様々な機会や気づきを与えてくださった方、とても感謝しています。
そして、今一緒に働いている方々、これから出会う方、よろしくお願いします。